第15話

 隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。


 作ってきてくれる弁当の中身は、いつもバラエティに富んでいる。

 中にはどこの国のものか分からない料理もあるけれど、どれもとても美味しい。

 ただ、いつも作ってもらってばかりなのは悪いので、僕もお返しをすることにした。


 昼休み、作ってきたお菓子を渡すと、徳大寺さんはもともと大きい目をさらに見開いた。


「え、謙介くんが作ってくれたの……?」

「うん。いつも作ってもらってるから、何かお返ししなきゃと思って」

「自分のを作るついでだし、そんなに気にしなくていいのに。でも、嬉しい」


 徳大寺さんはお菓子が好きだから、いろいろと調べて、普段あまり食べなさそうなものを作ってみた。

 ポルボローネというスペイン発祥のお菓子で、口の中でホロホロと溶けていくような食感が特徴のクッキーだ。


「謙介くん、お菓子を作るの上手なのね。とっても美味しい。この……ボロボローネ?」

「ポルボローネだよ。良かった、口に合うか心配だったんだ」


 気に入ってくれたようで、ひとつ、またひとつと口の中に入れていく。


「すごく嬉しいわ。嬉しすぎて、涙がポロポローネ……なんちゃって」


 やっぱり、隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。

 そして、意外とオヤジギャグをよく言う。

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