第6話

 隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。


 最近、お昼休みも一緒に過ごすようになった。

 毎日ではないけれど、徳大寺さんはお弁当を作ってきてくれる。酸っぱくないものを。


 今日は、鶏肉と米を使ったタイ料理?を持ってきてくれた。

 でも僕は歯が痛くて、口に入れた瞬間、少し顔をしかめてしまった。


「お、美味しくなかった?」

「あ、違うんだ。虫歯があるみたいで。今日は部活を休んで、歯医者に行くんだ」 

「ミュータンス菌が悪さをしているのね」

「ミュータンス菌?」

「虫歯の原因菌よ。ミュータンス・タートルズ!……なんちゃって」

「え?タートル?」


 僕は、徳大寺さんが何を言ったのかよく分からなかった。


「……ごめんなさい、なんでもないの」

「あ、ごめん、僕が無知だから」

「ち、違うの。私が完全に世代を間違えてしまったの」

「えっと……このタオパイパイ、美味しいね」


 徳大寺さんがとても恥ずかしそうなので、僕は話題を変えた。


「カオマンガイよ、謙介くん」


 やっぱり、隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。

 でも、僕の知らないことをたくさん知っている。

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