第7章 決意(1)
気が付くとすでに日は傾き始めていた。自分が能力者だと告げられてからしばらくこの部屋にこもったままだ。いろいろな考えが頭をぐるぐると回る。自分も殺されてしまうのだろうか。何度も凛さんに自分が能力者であると告げられる瞬間を思い出す。
あの後家について車を降りると、私は凛さんに連れられモニターの部屋へ向かった。そしてあの十字架をかざしながらパソコンを操作し始めた。なにやら数値とグラフが表示されている。しばらくその作業を続けたあと、凛さんはため息をついてこういった。
「残念だがお前は能力者だ。それもかなり強力な、な」
私はその場にがっくり膝をついた。凛さんの話し声もよく聞こえない。後で聞いたことだが、その時私の能力を解説していたらしい。自分以外の能力に干渉されなくなる力だとか。それ故に浩二君の名前を視認することができたようだ。だが私はそんな能力を願った覚えなんてなかった。
扉をノックする音が聞こえて、私は我に返った。おそらくは凛さんだろう。
「おい、そろそろ出てこい。能力者だってわかったからって殺されると決まったわけじゃない」
そのくらい分かっている。だがそう思ったところで不安が消えるわけじゃない。それに、もし仮に犯人が見つかったとして、だ。この先永遠に自分が誰なのかもよく分からずに能力を隠しながら生きていかなければならないのだ。悪夢と呼ぶにふさわしいと思った。返事のない私に向かって凛さんはこう言った。
「お前は危険を冒してでも自分の過去を知りたいと思うか?」
危険を冒せば過去を手に入れられる確証はあるのか。そんなはずはない。分かっている。だが、今の私にはそれでも生きる目的が欲しかった。危険だって構わない。
「もし、それでも知りたいっていったらどうするんです?」
私は問いかける。凛さんもただ聞いてみただけなんてことはあるまい。おそらく何か考えがあるのだ。
「渡辺から少しばかり面白い情報を手に入れた。それは私自身、前から目をつけていたことでね。能力者であるお前を連れていくとなると危険は伴うが、研究者の住処へ調査に行きたいと思う」
研究者。私はその単語を聞いて寒気がした。捕まったら一生モルモット。怖い。でもそれと同時に興味もわいてくる。
「正直私もお前を連れていくべきか迷っている。最悪の場合、お前を犠牲にしてしまう。だから私は強制しない。お前が行きたいというなら、声をかけてれ。行くなら明後日だ。それまでじっくり考えるといい」
凛さんはそう言うと階段を下りっていった。
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