第5章 君の目に映るモノ(2)
――とその時、ある少年の名前が目に入った。二年三組三十七番、山岡浩二。いた。これがさっき言っていた浩二君ではないのか。なぜ誰も気づかないのだろう。不思議に思い凛さんに話しかける。
「あの、その二年三組の山岡君の名前って浩二じゃありません?」
それを聞いてしばらく凛さんは三組の出席簿を見つめるが首を傾げた。私は、ほら、と言いつつ山岡君の名前をトントンと叩いた。
「見えた」
凛さんが静かに言った。私は少し得意げになる。しかしその後凛さんは鬼の形相になり私につかみかかってきた。
「お前、なぜ見えた?ほかにおかしいと思う点はないか。あったらひとつ残らず言え。今すぐにだ」
怖い。何があったのか。今はしたがうしかない。おかしな点。きっと「死体は存在している」ことなどがまさにそれだろう。そう思い凛さんに伝えることにした。
「あの、死体、見えます。十字架の中央に倒れてます」
「まさか、な」
凛さんはそういうと私から手を放した。トオルは少し離れたところで何やら考え事をしている。凛さんは深呼吸をしてからこう告げた。
「おそらくだが、お前も能力者だ」
背筋が凍った。今まで殺されてきた人を見て、能力者の話を聞いて、他人ごとだと思っていた。どこか遠い話だと思っていた。それが私も能力者だなんて。いや、まだ断定されたわけではない。
「まだ、そうって決まったわけじゃないですよね。それに根拠だって」
そうだ。まだ決まったわけじゃない。
「それはそうだ。だがきわめてその可能性が高い。なぜならお前は浩二とやらの能力に干渉されなかったのだから」
そういうことだったのか。ということは他の人には死体は見えていない。だから処理もされなかったわけか。ようやく納得がいった。だが、恐怖はより一層高まって私を襲ってくる。怖い。どうして私が能力者なのだろう。失った過去に何があったのだろう。
私はふと思いだした。そしてその思いにすがることにした。これは夢だ。
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