第3章 血濡れの十字架(2)
昼の十二時をまわったころ凛さんおすすめのレストランに到着した。料理もおいしいが、何よりデザートのパンケーキがたまらなくおいしいらしい。噂通り人気のようで平日にも関わらず行列ができていた。列に並んで待つ間、凛さんにずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの、凛さんってどんな研究してるんですか?」
やっぱり時間の定義が、とかそういう関係なのだろうか。
「異能力研究だ。一応これでも日本におけるこの分野では最先端だぞ。十字架と能力、次元の関係を発見したのもこの私だ」
想像を上回る答えだった。異能力―。そんなものが本当に存在するのだろうか。
「なんだ、信じていないような顔だな。私の予想が正しければ、この街だけでも何人もの能力者がいるぞ」
そんな多いとは思わなかった。でもなぜ今まで気付かなかったのだろう。
「そうなんですか。でも、だとしたらなんで今まで気付かなかったのでしょう」
「気付かないのも無理はない。能力者は隠しているからな。自分がそういう力を持っていることを」
「何故ですか?もっと公に使えば災害とかに役立つのでは?」
「まぁ、そういう考えもごもっともだが、そう簡単な話でもない。能力の強さには個人差があるとはいえ、強力なものともなれば役立つどころではない。大勢を虐殺したり国を乗っ取ったりできるレベルだ。そんな輩を世の中がほっておくはずがない。それに、科学者なんかに目をつけられれば人生は終わりだ。一生モルモットとして生きていくことになるだろうな」
言われてみればそうだ。もし仮にそんな能力が本当に存在するならば、研究者が放っておくはずがない。でも本当に存在するのだろうか。いまいち信じきれていない私をみて、凛さんは家に戻ったら面白いモノを見せてやるといった。
レストランの中はしゃれた音楽も流れとても華やかな雰囲気だった。客層も全体的に若い女性が多く、パンケーキというイメージにはぴったりだ。さっそくメニューを手に取るとおいしそうな品々が並んでいた。
私はあれこれ迷った結果、「トマトたっぷりモッツァレラチーズピザ」というのを頼むことにした。凛さんも私の指さすメニューを見て、ピザも言いなとつぶやいた。どうやら凛さんは「マルゲリータ」を頼んだようだ。しばらくしてピザが届いた。焼きたてでチーズも程よく溶けておりとてもおいしい。
うっかりデザートのパンケーキを注文し忘れるところだった。凛さんもすっかりパンケーキのことを忘れていたようで店員に、デザートはいかがですかと聞かれ慌てて注文していた。
昼を食べ終え、再び街に出たところで凛さんは何かを思いついたかのように立ち止まった。
「そう言えばお前、携帯を持っていないんだよな」
正直なところ携帯がないと今後もいろいろ困ることになる。
困った顔をしていた私を連れ、凛さんは携帯ショップへと足を運んだ。そこには、様々な種類の携帯が並んでいた。凛さんはそこへ着くと、しばらくの間契約してやるといった。申し訳ない気持ちもあったが、せっかく親切にしてくれるのだから、ここはありがたく契約してもらうことにした。しばらく迷った末、水色のスマートフォンを買ってもらうことにした。これで連絡に困ることはない。凛さんには後で何かお礼をしなくてはと思った。
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