第3章 血濡れの十字架(1)
翌朝私が目を覚ますと、すでにトオルは起きた後だった。朝ごはんを作っているようだ。凛さんはまだ寝ている。というか、非常に寝相が悪い。あのきれいな容姿からは想像もつかない。思い切り私の腕は凛さんの胸に挟まっている。いやがらせかと思うほどだ。私にはこんな大きな胸はない。凛さんを起こさないよう注意を払いつつ布団からでた。
枕元にはおそらく凛さんのものであろう服が二着おいてあった。おそらく私の枕元に置いてある方を着ればよいのだろう。借り物のパジャマを脱いできれいにたたむ。意外と凛さんもかわいい服持ってるんだなと思いつつ服を手に取った。―と次の瞬間ガチャリと音がなった。いやな予感がする。
「うわああああああ。ごめんなさい。ごめんなさい。見てないです。なんっも見てないから」
そう言ってトオルは飛び出していった。あんなあからさまに見てないなんて言ったら見たのバレバレじゃん。こそこそ覗かれるのは気分悪いけど今回みたいに事故だったらまあ仕方ないか、と思う。でもやはり恥ずかしいものは恥ずかしい。次からはノックするように言っておかないと。
朝ごはんは焼き魚とみそ汁という一般的なものだった。トオルは先ほどからずっと謝り続けている。別にそこまで気にしてないと何度も言っているのに。
「ごめん。いつもは凛さん起きるの遅くて、僕が起こしてから着替えてたから…」
「大丈夫だって。そんな気にしてないから」
恥ずかしかったことは恥ずかしかったけど。
「なんだ、私が起きるのが遅いと文句が言いたかったのか?」
昨日から見てて思ったのだが、凛さんはトオルに対してとても厳しい。私より長く一緒に生活しているからなのだろうがいつから一緒に暮らしているのか気になる。
「あの、凛さんとトオルっていつからここで一緒に暮らしてるの?」
「確か……うわあああああ」
トオルが突然叫び声をあげたのでそちらを見にいってみる。そこには割れた茶碗とこぼれたごはん、茫然と立ちすくむトオルがいた。凛さんはため息をつきつつ片づけを始めた。
騒がしい朝も終わり、私と凛さんは服を買いに近くの商店街へやってきた。下着なども買う予定なのでトオルは留守番すると言って家に残った。別に私はついてきても構わなかったんだけど。いや、下着選びを見てほしいとかそういうわけじゃなくて、別行動してもいいかなと思ったわけだ。さらにトオルは自分は自炊するから二人はそとで昼食べてこいと言い出した。きっと気を使って女だけにしてくれたのだろう。
まずは凛さんのものではサイズが合わず苦労していた下着から買うことにした。研究者というだけにあまり服などにこだわりはないと思っていたがそんなことはなかった。凛さんはいろんな店を知っている。これまでにもう何店回ったことか。なんとなくトオルが避けたのがわかる気がする。男子にはこのノリはきついだろう。
「次は服だな。お前はどんな系統が好みだ?それによって選ぶ店も変わってくるからな」
「お手頃なところでいいです」
高価な服だと凛さんに悪い。下着に関してもすべて凛さんが払ってくれている。お金は気にするなと言われてはいるもののさすがにブランド品ばかりを買うのは気が引ける。その後も服や靴、小物まで買ってもらった。お金のない私にとっては非常にありがたかったが、凛さんには申し訳ない。
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