第10話 ジン背が縮む!!???
遠くから騒ぎ声が聞こえる。
どうやらもう俺がいないことがバレたらしい。
つまり、俺を片付ける用意がこの短時間でできていたということであり中々の手際の良さだ。
とはいえこっちに追って来ないことからも気配遮断は俺に関わるモノ全ての気配に作用するらしい。
今追って来られないのはとても助かる。
そう考えるとあの大佐物凄い実力者だったんだね...
自分の気配遮断は実力者には見抜かれる。これが分かっただけでも収穫だったよね。
今俺は、先程逃げ出した街から少し離れたところを走っている。勿論、気配遮断を使ってだ。自動回復が発動しているおかげで少しずつ速く走れるようにはなってきてはいる。
そして、走ること一時間ほど。まだ体は痛むが、普段と殆ど変わらないほどの速度で走れるようになり、背後の喧騒も聞こえなくなってしばらく経った頃、
街道に沿って走っていると10数人の小隊を組んだゲチス軍が哨戒しているのが見えた。
俺は黒いモヤで侵食された街道脇の木々に身を隠す。
気配遮断も触れられたら解かれてしまうからね。
気配遮断を使って音もなく敵を殺せるんじゃ無いかって?それは無理だ。今の俺には武器が無いし、こんな力では相手に傷すら与えられない。
そんなわけで、俺は身を隠し、近付いてくる兵士達の会話に耳を傾ける。
「しっかしどうしてこんな所を見て回る必要があるんだ?謎の生命反応とやらはあのサルマイア山脈から出ていないんだろう?」
「いや、俺が少佐から聞いた話によると、もう下山はしてるって話だ。ただ、その後の生命反応はなく今何処にいるのかは分からないらしい。山の外側に張りめぐられたマーキングの罠が作動していない以上、まだあの山に居るんだろう。」
なるほどな。俺が既に山から出た情報はまだ伝わっていないらしい。そうは言っても、マーキングの罠か...
完全に俺の天敵のような罠じゃないか。気配遮断でごまかせるかもしれないが、街を迂回していたら引っかかっていたな...
かといって大佐クラスと戦うようなサプライズはもう本ッッ当に要らないからね。あんなこと何回もやってたら命が幾つあったとしてもいずれ捕まっちゃうだろうし。
そうして彼らから情報を得た後、俺はまた街道をひた走る。先程の戦闘から4時間ほど経ったこともあり、傷はほとんど完治していた。
俺は少し休憩する。
「ふぅー。とりあえず追手は来ていないな。とにかく今のうちに情報と現状を整理しないとね。」
そうして街道から少し逸れて、もやのかかった植物のない地面に腰を下ろす。ここ2ヶ月程手入れしておらず、伸びに伸びた爪を地面に刺し、文字を書いてゆく。
「季節は秋から冬」
「気配遮断は保って後4〜5日」
「気配遮断を解けば何らかの方法で俺の位置が感知される」
「何処へ行こうとも、ゲチス軍が居る可能性大」
「山を包囲していたゲチス軍さえも俺の捜索へ回る」
「時間が経てば経つほど俺は不利に」
「大佐クラスにもなれば俺の気配遮断は無効化される」
書けば書くほど、絶望しかなかった。
とりあえず俺はステータスウィンドゥを開く。
称号を変更するためだ。
「レベルが52になりました。」
「レベルが53になりました。」
「レベルが54になりました。」
お....おお。
さっきの戦闘で上がったということか....
しかし一体どういう条件で上がっていくんだろうね?
今はこのステータスってやつにも知らないことが多すぎる。基本システムの奴は何も教えてくれないしね。
そしてレベルアップアナウンスを聞き終えた俺は、ステータスを見る。
名前:ジン lv:54 年齢:19
身長157cm 体重35kg
称号:友の想いを継ぎし者(小)
技能1:気配遮断 技能lv:10+5
技能2:自動回復 技能lv:1
技能3:不死身 技能lv:ー
状態:良し
ステータス(評価)
力:15(F)
魔力:58/20+100(C)
耐久力:80(D)
敏捷力:140(A)
精神力:150→160+100(S)
体力:280/180→190+100(S)
総合:905(C)
俺は思った。力伸びてないじゃん!
つまり、レベルアップでステータスが伸びるってわけでもないのか...?
とりあえず、もしこの現状がなんとかなれば筋トレでもしてみるかな....
ジンはこんな風に思っているが、実際にはここ1ヶ月ほど食事をしていない以上、力が伸びるはずもないのだが。
そして、レベルが上がったが故にステータスが気になってしまった俺であったが、ふと気付く....
「あれ?俺また縮んでね?」
ジンは気付いてしまった。食事を取らず、不死身を発動させることの代償に。徐々に背が縮んでいたのだ...!
ジンは焦る。まさか不死身の代償がこんなことになるとは...
今まで原因はただの栄養失調だと思っていた。
だが、不死身が発動した後に急に背が縮んでいたことを考えればそう思わざるを得ない。
普通の人であれば。数cm程度背が低くなっただけで、致命傷を耐えるのであれば、それは喜ぶべきことであろう。しかし、ジンは背が低いことに軽いコンプレックスを持っていた。そうしてジンは焦る。今置かれている状況を整理した時よりも遥かに強く。
「やばい!やばいぞ!これは一刻も早くここから逃げ出すか、それとも食料を得ないと!!今まで不死身で食わなくても生きられたから後回しにしていたが、身体が縮むのなら話は別だ!」
しばらく声を荒げて色々と言葉を繰り返した後、ようやく落ち着いてきたので称号を変えることにする。
今日戦ってみてわかったことではあるが、現在の称号に設定している体力ボーナス+100の効果は気配遮断を封じ込める程の力の持ち主相手だと殆ど無力であると思い知らされた。
更に今は出来る限り長くこの身を隠さなければならない以上、無難な称号よりも有用な称号の方が良いだろう。
そうして俺は変更する。
名前:ジン lv:51 年齢:19
身長157cm 体重35kg
称号:気配遮断の達人
技能1:気配遮断 技能lv:10+10
技能2:自動回復 技能lv:1
技能3:不死身 技能lv:ー
状態:瀕死
ステータス(評価)
力:15(F)
魔力:58/20+100(C)
耐久力:80(D)
敏捷力:140(A)
精神力:160+100(S)
体力:25/190+50(S)
総合:855(C)
すると、気配遮断の今までの感覚に変化があるのが分かった。何と、自分の周辺の自分が動くことによって生じる僅かな空気の揺れが分かるようになったのだ。
つまり、それを消すことが出来る様になったということである。
ただ、自分の周囲にまで気配遮断をかけると魔力がかなりの勢いで吸われることがわかった。
とりあえず、道中を進む場合は今までのままでいいかな。設定する称号は【魔力の覚醒者(小)】と迷ったけど、【気配遮断の達人】の方が気配遮断しか魔力を使うものがない以上、効果が高かったのだ。
とりあえず気配遮断の実質的な効果時間が伸びたお陰で、俺の行動可能な時間が増えたわけで。
俺はどうやってゲチスの勢力圏から逃れるか。改めて考え始めたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます