第5話 到達者ジン
俺は諦めるつもりは無かった。
だが、もうどう足掻いても指一本動かず、頼みの綱であった気配遮断も発動しない。
「まだ昼?夜?あれ?時間感覚もなくなってきた。それにしてもひどく眠いなあ。」
このまま眠っては不味いのは本能的にも理解できた。だが、傷つき限界まで酷使された体は抵抗虚しく生命活動を終えようとしていた。
そうして彼はふと思った。
そういえばもう半年以上ステータスウインドゥの存在を忘れてたな...
これまで生きるのに必死でステータスウインドゥの存在なんて今の今まで記憶の片隅にすらいなかった。
「最期を迎える前に見てみるのも悪くない...か」
俺はステータスウインドゥを開くよう頭でイメージする。
「ブゥゥン」
ステータスウインドゥが開く音がする。
その瞬間、頭の中で今まで聞いたことのないでも自分の中に確かに存在すると確信できるような声が響く。
レベルが51になりました。システムが解放されます。
「称号【友の想いを継ぎし者(小)】を獲得。体力が+50されます。」
「称号【無念をその身に受けし者(極)】を獲得。精神力が+100されます。」
「称号【気配遮断の達人】を獲得。技能 気配遮断のlvが+5され、技能 気配遮断による魔力値消費が半減されます」
「称号【その者は数多の命を背負う者なり。如何なる苦しみに襲われようと死ぬことは許されない】を獲得。技能 不死身を習得します。」
「称号【到達者1】を獲得。レベル上限が解放され、新たな技能枠が解放されます。」
「技能 自動回復lv1を習得しました。」
「称号 【魔力の覚醒者(小)】を獲得。魔力が+100されます。」
名前:ジン lv:18→51 年齢:19
身長159cm 体重37kg
称号:無し(新たに設定できます)
技能1:気配遮断 技能lv:10+5
技能2:自動回復 技能lv:1
技能3:不死身 技能lv:ー
状態:瀕死
ステータス(評価)
力:15→15(F)
魔力:0/5→20+100(C)
耐久力:20→80(D)
敏捷力:40→140(A)
精神力:120→150+100(S)
体力:3/50→180+50(S)
総合:250→835(C)
獲得した称号(設定すると効果が2倍になります)
【友の想いを継ぎし者(小)】
(友の想いを受け継ぐと得られる称号。効果:体力+50)
【無念をその身に受けし者(極)】
(数多の無念をその身に受けると得られる称号。効果:精神力+100)
【気配遮断の達人】
(気配遮断のレベルが10に達し、その使用が1000時間を超えた者に贈られる称号。効果:技能 気配遮断lv+5、使用魔力1/2)
【その者は数多の命を背負う者なり。如何なる苦しみに襲われようと死ぬことは許されない】
(幾万の悲しみ、絶望、無念、恨みをその身に宿す精神力の持ち主に贈られる称号。効果:技能 不死身の獲得*称号設定不可)
【到達者1】
(レベル50を突破する条件を満たした者が得られる称号。効果:レベル上限解放(100)、技能枠2の追加、新たな技能の習得)
【魔力の覚醒者(小)】
(累計消費魔力が1000を超えた者が得られる称号。効果:魔力+100)
「.......は?」
俺は目を疑った。
「いや待て待て待て待て。」
謎の声は詰まることなく称号を告げる。
「ストップ!ストップ!コラコラコラコラ!」
俺は死の間際の筈が呆気に取られ、取り乱していた。
そしてステータスが表示された瞬間
「え....俺縮んでんじゃん。」
俺は深い衝撃を受けると同時に絶望の淵に突き落とされたような精神的ダメージを受けた。
ただでさえ低かった身長が更に低くなっていたのだ。
いや、まあ確かにまともな栄養なんてここ一年取れてなかったけど、これは酷い仕打ちだよ。
「誰だよ。こんなこと仕組んだ奴は!俺より身長の高いやつからにしろよ!カイトも、役場のおじさんも両親も俺よりも背が高いだろうが!」
内心動揺しすぎていた。
口から出た言葉でもう彼らはこの世界には居ないことを心の底から痛感する。
気付けば血濡れた顔に大粒の水滴が流れ始めていた。
「痛っつ。」
顔にあるいつ付いたのか分からない傷に水滴が触れる。
「泣いてばかりもいられないね。」
俺はそうして縮んだ身長のショックから持ち直し、ステータスの続きを確認してゆく。
色々とツッコミたくなる気持ちを抑えて一つ一つ確認してゆく。
「体重が減っているな...これは仕方ない。この一年殆ど食えてなかったもんな。」
「レベル51って一体何があったんだよ...今まで年齢と同じだけしか上がって無かっただろう?」
「主は、この一年の経験において、レベル50到達に必要な経験値を得られました。更に主はこの数日間の過度な精神的葛藤、筋断裂で動けない程の限界を超えた過度な負荷により、レベル50を突破するに値すると認められました。故にレベル51です」
先程の声が俺の疑問に答えるかのように頭に響く。
「お前は一体誰なんだ?」
俺はクリアになった頭で尋ねる。
「システムです。」
「しすてむ?ステータスウインドゥの声ってことか?」
俺は続けて尋ねる。
「その認識で概ね間違いありません。」
「概ね?なら一体何処が違うんだ?」
「答えることができません。」
なるほどね。システムだかなんだか知らないが、肝心な部分に関しては答えられないってことか。
今は聞いても答えられないことを考えるよりも状況の把握に努めないとね。
それから、システムに対し、様々なことを聞いているうちにステータスに関して、理解ができてきた。他の称号の獲得条件は教えてくれなかったね。まあ仕方ない。
俺は最後の疑問を尋ねる。
「それはそれとして、どうして俺の周りにはレベル50を超えている人がいなかったしその情報を知る人がいないんだ?」
「それは、レベル50とはすなわち、寿命なのです。そこでレベル上限を超えられない者は等しく死を迎えることとなるのです。更に到達者に関するの情報は到達者以外には聞き取ることができません。ステータスウインドゥの表示も他人から見ればレベル1に戻る訳なのです。」
それを聞いた俺は空いた口が塞がらない。
おいおいおいおいおい!ここに来てそんな重要なことをペラペラペラペラと。到達者になれない者は死んで、到達者の情報は到達者以外には聞き取れず、ステータスウインドゥはレベル1から表示だと...!
それを話して、システムが何なのかを話せない。
意味がわからん。それ以上の秘密だとでもいうのかな?ここはそういうものだと思っておくしかないか。
「さて、最後に称号の設定か...とりあえず無難に【友の想いを継ぎし者(小)】にしておくか。他の称号だとステータスウインドゥ見せた時に一々騒がれるのは面倒だし。あ、俺以外誰もいないのか。考えると寂しくなって来たね...やめだ。やめ!湿っぽいのは無し!」
そうして自身を鼓舞し直した俺は体から痛みが引いていることに気づく。血塗れなのは変わらないがどうやら立てるくらいには回復したようだ。
自動回復様々だね。
そうして俺は何処にいるかも分からないもやのかかったサルマイア山脈の中を1人進んでゆくのだった。
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