第20話 世界の真実と破滅
俺は怒りで神への敬意は殆ど消え去っていた。
とはいえ、俺は怒っていても神が作ったであろうこの空間から抜け出すには、神に何とかしてもらわねばならぬ以上、続きを促した。
「わかった。話だけ聞く。」
それを聞くと神は安堵したように話始める。
「まず、この世界は我が作った。この世界、ウンディチシアにはお主の生まれた地、無の大陸を含めて11の大陸がある。」
俺は驚く。
「11だと....??俺はこの大陸が世界の全てだと学校では教わったし、ほかに大陸があるなんて聞いたことがないぞ?」
「それは仕方のないことなのかもしれないな。何せ大陸と大陸の間は少なくとも2500kmは離れるように作ったし、我が世界を作った時、同時に世界法も制定して、その大陸内部でも、一部の支配層のみにしかこの情報は届かないようになっている。大陸間で貿易や知識の共有なんてされたら、文明が発展するのが早くなりすぎて、逆に世界が滅ぶのが早くなってしまうからな。」
俺は意味の分からないほどスケールの大きな話に内心混乱する。それでも何とか理解しながら、神へと話を聞いていく。
「何故発展しすぎたら、文明が滅ぶってわかるんだ?それに世界法?一部の支配層のみにしか他大陸のことが分からない?そんな突拍子もないことができるなんて流石のあんたでも無理なんじゃないのか?」
神はその質問に薄らと笑みを浮かべながらも答える。
「可能だ。まず何故文明が発展しすぎたら滅ぶのか分かるのは、我は世界を作るのがこれで5度目だからだ。我々はこの現象を『世界崩壊ワールドエンド』と呼んでいる。文明が発展した世界は、より良い生活をするために、自分達以外の自然から利益のみを追求し、限りある資源を搾り取り、それが減ってくると、その資源を奪い合うため、戦争がおこる。そして最後には滅ぶのだ。」
「よく分からない部分はあるが、大筋は想像できた。だけど、我々?お前みたいな神が他にもいるっていうのか?」
「ああ、そうだ。我々は誰が最も長く栄える世界を作ることができるかを競って研究しているわけだ。まあ、それは今少年に話した所でどうしようもないだろうから無視するぞ。次の質問に答えていこう。」
俺は自分の知る世界の狭さに、急に知らされた真実の壮大さに頭がクラクラした。この世界は俺が知る世界は全ての世界の1/11...更に神は何人もいて、その神々は他にも多くの世界を作っていると...たしかに俺ではどうしようもない話だ。事実かどうかは知らないが、今の俺にはそれを確認する力が無い。
「世界法についてだが、この世界の大陸それぞれの法は、世界法に基づいて作られている。今回の世界に設した世界法はこのようなものだ。」
第一条・・・各大陸間の貿易並びに交流を禁止する。
第二条・・・他大陸への侵略、戦争を禁止する。
第三条・・・過度に文明を発展させることを禁止する。
第四条・・・禁止事項に違反した場合、神の制裁が与えられる。
「この4つをもとに、世界の権力者達は大陸の法を作り、神である私の制裁を受けぬよう、必死でやりくりするわけだ。そうやって、この世界は3458年もの間、繁栄してきたわけだ。この世界はかなりうまくいっていた。今までの4度はどれも、2000年前後で滅んでしまったのだからな。」
俺は理解した。つまり、この法のお陰で俺は他大陸のことを知ることが出来ない等、様々な真実に蓋をされていたというわけか。ん?じゃあ何で...
「それなら何故、世界法にはこの情報を知るべき者についての記載がないんだ?」
「それは、少年にも心当たりがあるのではないか?」
俺は首を傾げる。
「到達者とシステムだ。この情報はレベル200を超える到達者にのみ開示され、そしてこの事実を知り得たもののみがこの世界では大陸のトップに立てるわけだ。だから俺は知るべき者について世界法に加える必要はなかった。レベル200以上の者以外に漏れたりはせぬからな。」
「なるほど。つまり、情報を知ることができる者を到達者というシステムで絞ったということか。」
「そういうことだ。それに遺伝子にも組み込んだんだ。劣性の遺伝に到達者の素質をな...。だから、少なくはあるが、そうして長い間到達者の数と通常の者の数のバランスは保たれていた。ああ、遺伝子については、親の能力を受け継ぐ要因とでも思ってもらえればいい。親と子の顔や得意な事が似る事、また鹿の子は鹿、カエルの子はカエルというような当たり前の事を当たり前に行ってくれるのが遺伝子だ。劣性についてはごく稀に発生するとでも思ってくれれば良い。」
俺は遺伝子?についてはよく分からなかったがひとまず神の言いたかったことは今なお混乱してはいるが概ね理解した。
「だが、何故俺を選んだ。俺はまだレベル自体200の半分も無いし、精神力の条件なんて他の高レベルのやつの方がよっぽど上げやすかっただろう。この世界を作る力があるのなら、新たに都合の良いやつを作って送り出せば良かったじゃ無いか。」
俺はふと思ったことを聞く。
すると神はばつが悪そうな顔をして答えるのだった。
「できるかできないかで言われればできる。だが、そういう干渉は我々の間では法度となっているのだ。それをした時点で我の世界は価値を失う。だから我はこんな回りくどいことをして少年と接しているのだ。世界の破滅の兆候が生まれた時、可能であるならば1人までの人間となら接する事が出来るのでな。それに今この話を知るものは大抵がしがらみに囚われ、話を聞くこともせぬのでな。」
そう言ってから少し間を空け、神は俺に今までの雰囲気とは違う重い雰囲気を醸しながら言葉を発する。
「さて、ここからが本題である。この世界はこれから近いうちに無の大陸で起こる、『黒き黒雲の震撼ブラックミストダウン』によって少年を苦しめた黒き霧とゲチスの精鋭が混じり合い、その群勢によって世界は侵略され破滅を迎える。そうならぬよう少年には、世界各地の大陸を巡り、これから世界の破滅が近づいた時に現れる試練に挑んで貰いたい。破滅が近づいたこの世界、レベルの制限も解放されるように設計してある。ただし、到達者はこれ以上増えない。こんな情報をこれ以上世界に伝える訳にはいかんからな。ここから先は我にも分からないし、我の話を聞いた少年がどう動こうと自由だ。我を楽しませてくれることを期待する。」
そうして空間にヒビが入る。この空間から俺は漸く解放されるようだ。まだまだ聞きたいことは沢山あった。だが、俺は言葉を発する事が出来ずに壊れていく空間と、薄れゆく神を見ているしかなかった。
「忘れていた。お主確か『再生ヲ劉ス蛇』を飲んでおったな。餞別だ。特別に解除と、フウゲツとやらから逃がす手伝いをするとしよう。」
そうして俺の意識は深い深い、これからの俺の人生の苦難を現すかの如き漆黒の暗闇に吸い込まれてゆくのだった。
〜第一章気配遮断の少年ジンと神との出会い編〜
完.
見捨てられた世界を気配遮断で生き延びた俺は神に助けられこの世界を解放する旅に出る しょた丼 @shotadon
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