見捨てられた世界を気配遮断で生き延びた俺は神に助けられこの世界を解放する旅に出る

しょた丼

〜第一章 気配遮断の少年ジンと神との出会い編〜

第1話 黒き霧と少年ジン

酷く臭い匂いがする....

 悪臭だ。

 この世のものとは思えないような匂い。辺りにはネズミ、犬、猫、それだけならまだしも人の死体も転がっている。


 血臭、死臭それにすえた匂い....


 実は今俺は何人(何匹)かの死体の下に身を潜め目の前にいる圧倒的な捕食者に見つからないように必死で息を潜めていた。


 奴らは命を喰らう。そうまさに命だけを喰らうのだ。

 毎晩日が沈んでからしばらくの間奴らは現れるのだ。


 奴らは食ったモノを元に形を形成する。木を喰らえば、その場で木のようなモノとなり、鹿を喰らえば鹿のようなモノに。ネズミを喰らえば、ネズミのようなモノにといった風に。


 何故モノという表現なのか。それは奴らがモヤがかかった様な霧状の存在であり、喰らったモノの形を模倣するだけなのである。


 元は霧の塊であるが故に空中を浮遊しているが、喰らうモノが地を歩くモノならば地を移動する。飛ぶ鳥や虫であれば空を飛ぶ。モグラやミミズであれば地面にだって潜るのだ。


 そしてそれは人であっても同じであり喰らえば人型となる...


 何より不都合なことに奴らは命のみを喰らうのだ。そう命のみを。

 奴らは標的を定めると取り憑き、食事を始める。そして対象となった命は生命活動のみを止め、その場に横たわる。


 そして捕食されたあとは死体のみがその場に残るのだ...


 目の前で捕食が始まる。


 今、目の前にいる奴は、どうやらハイエナを標的にした様だ。これだけ死体があれば当然ハイエナやハゲタカの類も集まってくるわけで。


 死体を漁っているうちに霧に覆われ、数分のうちに黒い霧状のハイエナのようなモノが生まれ、そして元のハイエナは崩れ落ちる。


 もし自分がと思うと身の毛もよだつ光景であり、そうはなりたくないと必死で身を隠すのだ。


 そして新たな体を得た奴は走り去る。

 何処に行くかだって?

 それは誰にも分からない。でもひとつだけ分かることといえば、奴が何かを喰らった後は他の生物には手を出さないってことだ。


 とはいえ、あの霧が現れてまだ1年ほどしか経ってないから完全にそうだとは言えない。


 ここで、俺の自己紹介をしようと思う。


 俺はジン。18歳。苗字は無い。


 この世界では、権力者が認めれば名乗ることが許される。まあ俺の様な凡人は、勿論そんなモノ持っていないわけだ。


 さて、俺の知ってるこの世界を軽く説明しよう。


 俺は、2年ほど前までは平和に暮らしていた。それこそ俺の家は特に貧乏というわけではなく、衣食住には困った事はなかった。


 可愛らしい妹がいて、両親もいて。祖父母は俺が生まれる前に亡くなってしまっていたらしいけど、この世界では大体50歳くらいが寿命らしいからそう珍しいことではなかった。


 俺が17歳を迎えた時、この世界を揺るがす大事件が起こる。巨大黒雲飛来事件だ。当時の大陸都であったガイゼルの街を覆い隠し、一晩にしてそこに住む人々は壊滅したそうだ。


 そのあと3ヶ月程はこの世界は混乱した。そして、この世界の覇権を......大陸都の座を争って各地の街街で戦争が起こった。


 勿論俺も参加した。俺の住む街が所属する都市軍として。だが、半年後、俺の所属する都市を含む全ての都市が降伏することになる。どこからともなく現れる奴らと、圧倒的な力を持つゲチスの手によって。


 そうして戦争の勝者となった都市ゲチスの長が世界布告として、【人類の選別】を行った。

 この間待っているかのように奴らは現れず、選別は行われていった。


 選別されたのは、世界の中でゲチスを支持した有力者達。そして世界の中で有能な技能を持った者達200万人。この世界の人口が1000万人ほどって言われてるから、大体2割ほどが、ゲチスの民となった。


 そして200万人のゲチスの民は戦争で荒廃していない土地へと移り住み、有能な技能を持った人達で新たに作った都市を障壁で覆った。その都市の名は、【新生都市ゲチス】として、この世界の大陸都として布告されることになった。


 俺が住んでいた街は、戦争の爪痕と、街にいた有力者が引き抜かれた影響で生活にはかなり苦労した。例えば、大工、学校の先生、ステータスの高い人......皆選別によって引き抜かれたのだから。


 そうして1か月ほど経ち、やっと抜けた人の穴が埋まるわけでは無いが、なんとか生活が成り立ち始めた時、奴らは現れる。


 それからというもの、今まで街の運営や守備等有能な者は引き抜かれたためおらず、戦争で荒廃した地に住む俺達はなす術なく奴らに蹂躙され、人手が足りないから死体は片づけられず、死臭の漂う街でこうして日々死の恐怖と向き合うことになったわけだ。


 さっき、ステータスって言葉を話したと思うが....

 この世界にはステータスウィンドゥというものが存在する。


 この世界の政策で、妊娠が分かった母親は特殊な鉱物をひとつ食べることが義務付けられていて、その鉱物はどういう経路を通ってか知らないが、赤ん坊に浸透して一つの技能を授けるんだ。それと同時に生まれた時からステータスウインドゥも見えるわけ。


 俺の妹は今ゲチスにいる。妹は魔力回復の技能と、膨大な魔力量のおかげでゲチスに連れ去られてしまった。その時のことはもう思い出したくもない。


 そんなわけで妹はここにはいない。今は辛うじてこの環境を生き延びている両親と共に暮らしている。


 さて、湿っぽい話はここまでにして、ステータスウィンドゥはこんな風に表示される。基本的には自分が許可を出すか、特殊な技能でもない限り、相手から勝手に見られることはない。


 名前:ジン lv:18 年齢:18

 身長162cm 体重45kg

 称号:無し

 技能:気配遮断 技能lv:7

 状態:悪し


 ステータス(評価)

 力:15(F)

 魔力:5(G)

 耐久力:20(F)

 敏捷力:40(E)

 精神力:120(C)

 体力:20/50(G)

 総合:250(E)


 ステータスは環境や努力にによって伸びるのはわかっていて、レベルが上がったからと言って伸びるわけでは無いようだ。こんな環境にいる俺や今生きてる人達は皆精神力がC〜Bほどまで伸びている。


 ただ、俺はこの一年の生活で十分な食事が取れていないのもあって力が20も落ちてしまった。


 ちなみにステータスの基準として、低い方から、G、F、E・・・・B、A、S・・・と続く。S以上が存在するってのを本で読んだこともあるが、俺はそこまで高いステータスの存在は信じていない。


 ステータスは、通常Eが平均で、Gは日常生活に影響が出る、Fで問題なく生活出来る程度。Cもあればエリート。ちなみに俺の妹は生まれながらにして魔力がBだった。


 さてステータスの話も終わってそろそろ夜が明けるね。無事に今日も生き延びられたようだ。


(朝の生存確認の時間がくるな....。俺の両親や幼なじみがやられていなければいいが....。)


 俺は、朝日を見て、奴らが消えたのを確認してする。

 そして俺の親しい人の無事を祈りながらも街の中央広場へと向かうのだった。

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