④
「あ、あなた! お名前は!?」
「えっ!? ええと、エリザベート……エリザベート・アルディと、も、申します……」
その勢いに
「お国はどちら? エメロードかしら? それとも……」
「は、はい。エメロードです。ち、父は……貿易商を営んでおります……」
六元素は地を司る国、エメロード。一年中緑が萌え、花が
ちなみに攻略対象は第二王子のリアム・フランソワ・ド・エメロード。ふわふわと軽いピンクがかった
側近のルーファスも優しくて穏やかな優等生タイプのお兄さんで、エメロードの主従は、尊き方々の中でも
(なるほど。貿易商……!)
それなら納得もいく。
レティーツィアは、彼女――エリザベートの手を取ると、両手でしっかりと包み込んだ。
「エリザベートさん。少しお話を
「え? え? わ、私の……話……ですか?」
「ええ!」
エリザベートをまっすぐ見つめて、力強く首を縦に振る。
そしてそっとエリザベートに身を寄せると、彼女だけに聞こえるようにひっそり
「違っていたらごめんなさい。そのブレスレット、アフェーラのユエ殿下をイメージしたものではないかしら?」
瞬間、とんぼ眼鏡の奥の目が大きく見開かれる。
「えっ!? わ、わかるんですか……!?」
「――もちろん。もしかして、ほかの尊き方々のものもあるのではなくて?」
エリザベートがレティーツィアを見つめる。
両手で包み込んだ彼女の手にグッと力がこもった。
「お、お話、させていただきたいです……!」
「っ……! 本当!?」
レティーツィアはぱぁっと顔を輝かせて、彼女の手を強く
そのまるで
「よろしければわたくしのタウンハウスに来ていただけないかしら? ご
「っ……! わ、私のようなものが、いいんですか!?」
「もちろんよ!
「れ、レティーツィアさまさえよろしければ……ぜひ……!」
「~~~~っ! ありがとう! 最高のおもてなしをさせていただくわ!」
顔を赤らめてエリザベートの手を開放すると、彼女もまた少し
「あ、ありがとう……。お願いいたしますわ」
コホンと
「では、みなさま。お騒がせして申し訳ありませんでした」
胸に手を当てて優雅に一礼して、身を
(私の目に間違いはない! 絶対に、この子は
『推し』や『性癖』が
(だって、あれは、尊き方々の外見と国のカラーを組み合わせて作ったなんていうレベルじゃないもの……!)
間違いなく、本人の性格や
でも、彼女は新興富裕層階級の子だ。尊き方々とふれあう機会など、そうそうない。
つまり、近しい立場のレティーツィアならばともかく、彼女は
(ってことは、調べたのよ。彼女にできる方法で)
容易にふれあえる身分ではないからこそ、手を尽くして調べて、調べて、深く知って、そのイメージを形にして、身に着ける。
『推し』に少しでも近づきたくて。
『推し』といつでも一緒にいたくて。
それはもう立派なヲタクだ。異論は認めない。
(確実に萌え語りはできる子だ! やった……!)
まずは一人目の同志さま、GET!
レティーツィアは内心ガッツポーズをしながら、先を行くエリザベートを見つめた。
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