③
ティーカップを口に運びながら、必死に頭の中を整理する。
乙女ゲーム『六恋』は、世界を揺るがす恋をするという異世界・学園ファンタジー。
この世界には六つの国があり、それぞれが世界を構成する六元素――光・
六つの国を簡単な地図に書くと
それは六つのどこの国にも属さない――しかし、この世界のために設けられているもの。
選ばれし者――六つの国の君主となるべき者はもちろんのこと、政治にかかわってゆく者や
学園には、厳しい試験を
つまり選ばれし者たちは、将来国を治めるために、三年間――学園という社会の縮図の中で、他国を背負うべき者たちと交流を深めながら、世界の仕組みを学ぶのだ。
そこで、一年間を過ごす中で、六つの国の皇子やその側近たちと素敵な恋をするという内容になっている。
主人公の行動
そして、攻略対象は六名。続編は、十名になるという話だった。
ほかの乙女ゲームと違うところは、攻略対象が六つの国の皇子や側近たちということで、相手によって生活習慣から何から何まで違うからか、
レティーツィアは、シュトラール皇国第一皇子・リヒト・ジュリアス・シュトラールの攻略ルートで登場する。リヒト殿下の
つまり、ゆくゆくはシュトラール皇国の皇后となる――まごうことなき選ばれし者。
ゲームの印象で言うと、外見は悪役令嬢の様式美と言ってもいい縦ロールだが、性格はいわゆる悪役令嬢といった、
そのあたりの
(だから、悪役かと言われると……どうかなぁという感じなんだけれど……)
レティーツィア自身に、誰かを
過去を思い出しても、気に入らないことに対して
堅苦しいところは、たしかにあるだろう。ものごころついた時には、公爵令嬢として、リヒト皇子殿下の婚約者候補として、常に『
(そう……。
婚約者の座を勝ち取るため、とにかく自分を
両親の期待に応えるため、国王両陛下とリヒト殿下に認めてもらうために。
それを、
「…………」
そうやって、自分を客観視できるようになったのは、前世の記憶が
今の自分は、前世の『私』――漫画・ライトノベル・アニメ・乙女ゲームが大好きで、日々同人活動に
それだけ違えば当然、ものごとの
そんな――前世の記憶が戻る前の自分とはまったく異なる視点とゲームにかんする記憶、とりわけシナリオについての知識が得られたのは、不幸中の幸いと言えるだろう。
そして、記憶が戻ったタイミングもよかったように思う。これ以上はないというほど。
ゲームのシナリオどおりにいけば、
リヒト皇子のルートにおいてレティーツィアは、ヒロインを何度も
そして、その場で婚約
「……っ……」
レティーツィアは
(今は二年の春、新学期がはじまったところ。ゲームでは開始直後――まだ物語
すべての運命が決まるのは三月――リヒトの卒業の時。ほぼまるっと一年の時間がある。
それはやっぱり、とてつもなく大きい。
(このアドバンテージをうまく
この先に待ち受けている――破滅を。
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