②
淡くも
「……う、そ……」
そこには、見たこともない華やかな美人が映っていた。いや――見たことは、ある。
「レティーツィア・フォン・アーレンスマイヤー……」
大人気
「ど、どうして……」
鏡の中の美女が、白い指で
「わ、私……私は……」
レティーツィアは、両手で顔を
「っ……わたくしは……」
スーツや制服姿の人がギュウギュウ詰めになった満員電車。スタイリッシュな高層ビル群が空を
同じ音に満たされた八畳の見慣れた部屋。
(これ、は……?)
同時に、まったく違う
光の楽園と呼ばれるシュトラール王国。花と緑に
お母さまからいただいた
「わ、たくし……は……」
たくさんの同志さまでひしめき合う、同人イベント会場。アフターで呑むお酒の味。
はじめて王宮のお茶会に招かれた時の、
「私……わたくし……は……」
『六聖のFORELSKET~語れないほど幸福な恋に堕ちている~』、
リヒト皇子
ボーナスを手に、
十歳の誕生日に、お父さまからいただいた白毛の
近くのカフェのほうじ茶ラテは、仕事や
リヒト皇子殿下と同じ、六聖エテルネ学園の制服と金の紋章。
そして――
「ッ……!」
レティーツィアは思わず目を
(そうか……。きっと、『私』は死んだんだ……)
そして――
「……なるほど。理解したわ」
ゆっくりと目を開き、
ここは、乙女ゲームの世界。つまり、自分は異世界転生したということだ。
(これは、漫画でもラノベでもSNSでも同人誌でもめちゃくちゃ見た。『乙女ゲームの世界に転生』だ……!)
今の自分は『六恋』のキャラクター――レティーツィア・フォン・アーレンスマイヤー公爵令嬢。シュトラール皇国第一皇子リヒト・ジュリアス・シュトラールの
レティーツィアは大きく一つ深呼吸をすると、ゆっくりと立ち上がった。
そして、
「
「……そうでございましたか。もうお加減のほうはよろしいのですか?」
「悪くないわ。今朝のベッド・ティーは何かしら?」
ベッドへ戻ってふかふかのマットレスに
「今朝は、カルディナ社のダージリンをご用意しました」
淡い緑のスワッグ模様が美しいティーカップに、ケイトが見事な手つきで紅茶を注ぐ。
(落ち着いて……)
まだ手が細かく震えている。それを知られないよう気をつけながら、レティーツィアは紅茶を受け取った。
(
レティーツィアとして生きてきた記憶や
(
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