④
* * *
「ごきげんよう。みなさま」
唇に微笑みをたたえて、
「レティーツィアさまよ」
「ああ、今日もお美しい……!」
「本当に素敵な方……。
六聖エテルネ学園は、身分によって制服が違う。
女子生徒だと、庶民・中流階級は
そして選ばれし者は、純白に国の色のポイントが入った、ロングワンピースだ。
もちろん、レティーツィアが
色のついた制服を纏う生徒たちの
歩く姿は
(き、昨日まで、この手放しの
昨日までと同じように振る
いったいどういうメンタルをしていたのだろう。自分で自分が信じられない。
(ひぃ、
できることならば、誰の目も届かないところに、今すぐ隠れてしまいたい。
そんな自分を必死に押し
レティーツィアはハッと身を震わせて、
「ッ……!」
ドキンと心臓が大きく
視線の先で、純白のマントが
リヒトの姿そのものが、まさに
六元素は光を司る国の第一皇子に相応しい、絶対的なカリスマ。
(ああ、なんて神作画! 今日も一分の
心の中でサイリウムをぶんぶん振り回していると、リヒトがレティーツィアに気づいて足を止める。
レティーツィアは片手を胸に当て、もう片方の手でスカートを軽く持ち上げた。
「レティーツィアか」
「ご
リヒトは表情を一切変えることなく、小さく
「教室までご
「好きにしたらいい」
「ありがとうございます」
レティーツィアは再度頭を下げて、それからリヒトにピッタリと付き従っている忠実な
「ごきげんよう。イザーク」
「ご機嫌麗しく存じます。レティーツィアさま」
シュトラール皇国第一皇子リヒト・ジュリアス・シュトラール殿下の従者、イザーク・リード。ふわふわと軽いライトブラウンの髪に同じ色の穏やかな
(ただ、柔らかいのは外見とイメージだけだけれど……)
実はごく近しい者しか知らないが、彼は
(まぁ、皇子の側近はそれぐらいのほうが
しかし、だからこそ――実際レティーツィアを
彼はヒロインに恋をした
「…………」
破滅を回避するためには、この男は一番
(気をつけなくては……)
再び歩き出したリヒトの後ろを、一礼してイザークとともについてゆく。
「まぁ、ごらんになって。シュトラールの御方よ」
「リヒト殿下……なんて麗しい……」
遠巻きに、女子生徒たちの黄色い声が聞こえる。
それが自分のことのように
(っ……! そうよね! わかる! わかるよ!)
全力で同意しながら、その後ろ姿を見つめる。
(あまりに罪深い顔のよさ! 本当に麗し過ぎて
美しいだけではない。立ち居振る舞いすべてが、皇子たる
将来、国を、民を背負う者としての自覚がそうさせているのだと思うと、胸が熱くなる。
レティーツィアへの返事はそっけなかったけれど、またそれがいい。
王ともなれば、直答を許されるのは一部の限られた者だけになる。それほど、君主たる者の声や言葉は尊いものなのだ。皇子の今でも、
(動いて話す『推し』! 待って、無理! それだけで尊いっ……!)
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