第十四話 星たちの言葉

二学期も期末考査が終わりいよいよ12月になる。気取り屋の野球部と家なき子、泣いてばかりの王子さまにカラヤンや成績深海魚の僕にも一緒に迎える八太郎祭だ。

八か月たって寮生活にもすっかり慣れた僕たちは、X'masと正月をあわせたへんてこなイベントを楽しんだ。


そして、寮をでることになった王子さまとの最後のイベント。


当日は、息もすっかり白くなるなか準備を手伝ったあとに屋外での食事を楽しんだ。上級生たちがついたお餅はいままで食べたことがないほどおいしかった。皆で陣取ったテーブルで唐揚げに手をつけたとたん運動部の高校生のお兄さんたちがなだれ込んできてあっという間にテーブルの上が食べ散らかった。それでもお握りと豚汁を食べながらとなりのテーブルの中学の上級生がおかずを分けてくれたりして皆といろいろ話しながらあっという間に時間が過ぎた。



食堂で演奏会や映画の上映会があるがぜんざいを最後にすっかりお腹が一杯になった僕たちは西の浜まで出ることにした。松林を抜けるといつもの潮の香りがした。波打ち際まで行くと誰もが遠くまで続くさざ波を眺めた。


-今日まで長かった~。きっとこれからも永久に長いねんな~。

 そういえば、おまえはこれからどないすんねん。


-海外の祖父母のところに行くことにしたんだ。

 生まれ育ったところだけど……戻りたくなかった。

 日本にきてからの学校も嫌いだった………


 ここが初めてなんだ。……ここでの時間はいままでのどの時間よりず~と長い。

 みんなと友だちになれたから……わかったんだ。


 自分で決めなきゃって。



夕暮れが雲を紅く染め始めるとそこにいたみんなは星の王子さまの本に書かれていた言葉をそれぞれがおもいだした。そして親元を離れこれまで濃密な時間を過ごした仲間たちとの日々を誇りに思った。 



寮の食堂に戻ると吹奏楽有志のコンサートが始まっていてすっかり盛り上がっていた。差し入れをしてくれた地元の人も参加して演奏と手拍子が鳴り響いている。


その時いきなり真っ暗になった。一昨年まで停電ばかりを経験した僕たちは気にもとめなかったがざわめきのなか寮長がすぐに復旧しますからそのままでお待ちくださいと言った。


-し~っ、王子さまと星を見に外にでよう。

-あほかぁ。

-せからしか~。


外に出ると足元から冷気がたちのぼってくる。皆で街の灯が消えた夜空をみあげると満天の星空にいくつかの星が海の方に流れていった。


「人はみんな星を持っている。でも人によって違うものなんだ。自分の星を見つけることが大切なんだ。」


星たちがそう言って僕たちに降りそそいでくるように見えた。

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