第十三話 星の王子さま3
夏休みが終わり帰寮するといつのまにか同級生の何人かがいなくなっていた。
誰かがあいつらはやらかしちゃったんだという。ルールを破ったんだというやつもいる。クラスが違ってたので気がつかなかったやつもいたがいつか寮先生がみんなに言っていた。
-よい集団には必ず約束事がある。マナーやルールを守ることだ。ルールを守ると
いう社会常識が自分たちを守ってくれる。ルールがあることで君たちや家族の生
活が守られていることを忘れないようにして欲しい。
マナーやルールは大事かもしれないがそれがどうしたことだろう。ここでの生活はそんなルールとは程遠い。大人たちは誰もがやらかすことを誰かひとりに引き受けさせるんだ。誰かの行動が悪かったとしてもその一人にすべての責任を負わせられるものではないはずだ。
そんな釈然としない気持ちで過ごしていた時、同室のやつから星の王子さまの本を借りた。小雨の降る日に考査前のためか誰もいない寮の図書室で読み耽った。読みながらいつかやつが言っていたことを思い出した。
-新しい友だちができたと話しても、ママはいちばん大切なことを聞かないんだ。
どんなときに笑うの?どんな本が好き?その子のことが大好きなの?なんてこと
はぜったいに聞かない。その代わり勉強はできるの?先生の言うことをちゃんと
守る子なの?お母様にご挨拶をしなければならないかしらなどと聞くんだ。
その時は、過保護で幼稚なやつだと思ったが読み続けるとこんなことが書いてあった。
「悲しい気持ちがやわらいだら、君は、ぼくと知り合ってよかったと思うよ。
君はずっとぼくの友だちなんだ。これからもぼくといっしょに笑いたくなるよ。
だから、ときどき窓を開けていっしょに笑って、楽しいって思ってね・・・」
なぜだか心がとても安らかになった。そして借りるときにやつが嬉しそうに読み終わったら星の王子さまのことをどう思ったか教えてくださいと言っていたことを思い出した。
おまえがいつも話していた大切なことがここに書いてあった。いなくなったやつらは残念だけど、でも、おまえと友達になれてよかったと言おう。
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