第十二話 夏祭り2

    うち海の潮の蒼さをうつした頬に

    月の光がしづかにゆらぎ

    貝がらのかたい心によせる

    おもひをひとは知らなかった


    ひとりぽつねんとこの手すりに凭れ

    ひそひそという水音に貝がらの耳をあてよう

    あこがれはまたさながらに戻ってきて

    うたかたにおもい泣いている


    あの松林をわたった風のいぶきも

    走っていった少年の姿も

    港を出て行く通ひ汽船のさびしい汽笛も

    ひそかなおもひと水面に消えていく


    もう祭りの賑ひもありはしない

    はしけは砂に上げられている

    今はせめて遠い日のこととおもひ

    くだけた貝がらを夜光虫の海に捨てよう

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