第十一話 夏休み2
ママは、三者面談が散々だったことで終始不機嫌だ。ただでさえ仕事が忙しい様子なのにもうここには戻りたくないと言ったらきっと怒りだすに違いない。
久しぶりに家に帰ると本当に嬉しかった。さっそくゲームを始めようとするとママがいつのまにか課題リストを突きつけてきた。せっかくの夏休み初日のいきなりのことに僕はもう二度と寮には戻らないからといってしまった。
その週末にパパが少し歩こうかと言った。きっとこのことだから断固戻らないと言おうと心に誓った。30分ほど歩くと東京湾が見える公園だ。海のにおいや風の様子が寮や学校の浜辺と全然違っていることにびっくりした。
-本当に嫌だったらいつでも帰ってきてもいいんだ。まだ将来のこととかいろいろ分
からないかもしれないけど…
-………えっ
-寮のある学校に入れたのは前にも言ったかも知れないけれど逞しく育ってほしい
からなんだ。
-………………
-………パパなんだけど、会社で仕事をしていていろいろあって心が折れてしまった
ことがあったんだ
-……………………
-君が生まれたとき………嬉しかった以上に勇気をもらうことができたんだ。……
そして、…………………なんでも受け入れられるようになることができたんだ。
-…………………………
パパはその後も人間力とかリベラルアーツが大事なんだとかいろんな話をしてくれた。そしてどうしても友達ができなかったらいつでも戻ってきてもいいんだと言った。
夏休みを過ごすうちに僕は友達のことをいろいろ思い出した。兄弟がいないからかもしれないけれど皆と一緒にいて楽しいこともいろいろあった。そしていろんなことを教えてもらったことにも気がついた。
でも、人間力ってなんだろう。
つらいことや嫌なことも沢山あるけれどもう少し皆と一緒にいたいと思った。友達が懐かしくなってしょうがなかった。
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