第五話 星の王子さま

初めての中間試験で成績上位者の名前がはりだされた。気にして見に行くやつや気にもとめないやつもいる。特に女子が殆どを占めていることに男子生徒はやっぱりか~といった様子だった。上位の女子はしっかりとしていて心遣いも細やかで悔しいけど大人だ。授業でもクラスをリードする発言や行動に圧倒される。その分男子のおばかが目立ってしまうし寮でも問題を起こすのはだいたい男子だった。


ほどなく成績上位者が部活動や学校行事でも積極的に活躍することが目立ってきた。そんななか放課後の校庭で風を切るように走る女子を同室のやつと一緒に見た。




-同級生の走る姿を見たんだ。潮風を受けてもすっごく速い!風のように走るん

 だ。


くたびれた星の王子さまの本をいつも眺めているやつが携帯電話でそう親に話しているようだった。なにかうんうんと相槌を打ち始めたので四人部屋をでてラウンジに向かった。やつの成績は下から数えた方がはやいのに大丈夫なのかよ。


阪神とソフトバンクの試合をみたあと自習室に行くとやつが指導の寮先生と小声で話す様子が見えた。


-同級生のことをそんなふうに自慢して言えるなんてとてもいいことだと思うよ。


-うん、本当にすごいんだ。僕なんか本当にだめなんだけど。


-そんなことはないさ。なにかすごいと思ったことに素直に共感できることは、

 とても大切な能力なんだよ。


-・・・・・でも・・・・・先生・・・・僕・・・・・本当に、泣き虫なんだ・・・・・・帰国生だし・・・・・・・

 小学校でいじめられてたんだ、大好きな本やランドセルがゴミ捨て場にあったり

 ・・・・・・・だから・・・・・逃げてきたんだ。


-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、そうか・・・・・そんなことがあったんだ・・・・・・

 でも、・・・・・きっと、・・・・・逃げることも勇気がいることだと思うよ・・・・・


 ・・・・・なんでもいいから、何かに夢中になるような自分をイメージしてごらん・・・・・

 ・・・・・いつでも応援するからね。


ふ~んと思いながら暫くしてからトイレに行くと個別学習室で数人と楽しそうに寮先生の指導を受けているやつがいた。


自習室に戻りふ~んと思いながら今度星の王子さまを読ませてもらおうかなと思った。

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