第六話 カラヤン

夏休みが近づき八太郎館での生活が落ち着いてきたころ誰からともなく「カラヤン事件」が噂され中入生を恐怖のどん底に陥れた。誰かが駅近くの高架下でカラヤンに脅され〇千円を召し上げられたというのだ。それも白昼でのできごとだった。


噂ではどうも深夜になると駅近くで大きな炎をあげながら集団で生贄を捧げるダンスを踊ったり金銀の見たこともない髪形をした部族が山からやってきて処刑される大人達もいるという。


こんなとんでもないところに行かされたことに憤りを感じながら不安な日々をすごした。寮生の何人かは、こんなところにこれ以上いたくはないというし、夏休みに家に帰ったらもう二度と戻らないと宣言する友人もいた。




しかし、夏休みが終わると誰もが寮に戻ってきていた。きっと戻らないだろうと思ったやつも久しぶりの再会に胸を躍らながら嬉しそうにしてる。そして体育祭文化祭をあわせた学園祭の準備に向けて忙しい毎日が始まるなかで誰もが夏休みの出来事を楽しげに話すのだった。


誰かが両親にカラヤンて知ってるときいたことを話し始めた。


ベルリンフィルの名指揮者で自家用ジェットで世界を飛び回っているだって。そんなすごいひとだったなんてビックリだよ。

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