第三話 孤独と自立

学校から戻ると同室の寮生は、喜び勇んで帰省していった。ゴールデンウィークだ。迎えにきた母親や両親と一緒に寮をでていくものが大半だった。寮に残るのは、受験に向けた高三生や部活の練習に励む生徒たちだったが中入生の何人かが最初の休みを寮で過ごすことが分かった。


夕食のときに誰かれともなく食堂の片隅に集まった。誰かが帰省するとお金がかかるから夏休みまで帰らないんだと言った。親が海外にいるので夏休みになったらそこにいくというやつもいる。ただ一人が家には帰れないんで夏休みもどうしようかなというやつがいた。皆でどうしてなのかと尋ねるとあまり話をしたくない様子だった。


-お母さんが再婚したんだ。

 僕...お母さんから結婚相手にここにくることをお願いしたんだ。

 だから約束なんだ。



皆どういうわけか食事が喉を通らなくなった。誰かが洟をすすり始めると一人が泣き始めた。どうしてなのかわからない。母親から携帯に毎日連絡があるのが大半なのだ。


その時、その場に居合わせた僕たちはいままで知ることのなかった深い絆というものがあることを初めて理解した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る