八太郎館物語

愚息の一文

プロローグ

車窓から一気に視界が開け海が見えた。

宇宙空間が広がるように遠くの島々が水平線から昇る惑星のように見えた。


ここは僕の家から何万光年も離れたところだ。


河口を渡り小さなお城をいただく惑星が遠くに見えた時、僕はこんなにも美しい星に迎えられることに気を失いそうになった。遠い地であると知っていたがこんなにも想像を超えることに思いも及ばなかった。


ここには、きっと星の王子さまがいる。



入学説明会でもママはスマホばかり見ている。きっと仕事が忙しいのかもしれない。僕は、駅で出迎えた赤鬼や来る途中に見上げたお城と水平線に浮かぶ島々、砂浜や松林が遠くまで続くこの絵本のような星をすっかり気に入った。


学校をでてから向かう道は、遠くに山々が連なり石垣や白壁が続く。ママに浜辺に行きたいと言うと松林の小路から砂浜へ出た。大きな帽子の形をした島が見えた。西風が吹き始めると遠くに多くのヨットが帆走している。その先には汽笛をあげる大型客船も見える。そのまま浜辺の路を歩きながら時折吹き寄せる冷たい風が心地よかった。


入学してから過ごす海辺の生徒寮「八太郎館」は、全校生徒の過半数になる500名近くが暮らす四階建ての大きな建物だ。道路を渡り広い玄関に入るとここの王様が出迎えてくれた。広々とした食堂に入ると数十組の親子がいた。


ここに星の王子さまと一緒に僕がいるような気がした。

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