第八話 夏休み
はやく夏休みにならないかなと毎日思う。夏休みに家に帰れるのが待ち遠しい。ゴールデンウイークは、家に戻ってほっとするのもあっという間だった。寮に戻りたくなかったがママに無理やり飛行機に乗せられた。パパがいないから勉強の仕方もよくわからない。朝テストもほとんど放課後の居残りだ。
もう学校には戻りたくない。何人かの同級生は心配してくれるが運動部で忙しいから一緒にいることができる時間はほんの少しだった。
ある日、学校からの帰りに寮に戻りたくなくて駅の反対側の道を山あいに向けてとぼとぼと歩いた。随分と歩いたのか夕暮れ近くになると自転車に乗った高校生ぐらいのお兄さん二人が声をかけてきた。怖い恰好をしているうえにイノシシと聞こえたけど何を話しているのかわからず涙が滲んだ。
一緒に来るよう自転車の後ろに乗せられ駅の先の高架下に連れていかれると仲間らしい何人かがダンスの練習をしている。本当に怖かったが金髪のお姉さんが優しく話しかけてくれた。
-おまえの学校は知ってるよ・・・みんな東京から来てるんだよね。
東京でなく近県だといったが、卒業したら東京に行くから私も道に迷うかもしれないねと優しくほほ笑んだ。
寮に戻ると寮母さんが心配そうにどうして門限を過ぎたのかと言われた。駅の向こうで怖いお兄さんに声をかけられたというと警察に通報するからどんな様子だったか話しなさいと個室につれていかれた。寮先生も血相をかえて入ってきた。
どうしよう。
駅の向こうで道に迷ったと嘘をついた。誰かに連れていかれたのか聞かれたのでお兄さんが迷った僕を駅まで連れてきてくれて仲間のお姉さんが駅の反対側まで一緒に来てくれてこの裏道からまっすぐに行くと家につくよと言ってくれたことを泣きながら話した。
三人ともきょとんとしていた。
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