邂逅P∅

 夏。


 ヒカルは、大学で知り合った友人と山にキャンプに来ていた。


 ナツキとマコト、いずれも彼女持ちだ。


 3人の父親は、元々知り合い同士で、ホビーラジコンカーを嗜む、遊び友達だった。


 偶然、息子達が友人になったことをきっかけに、いつもは父親達だけで楽しんでいた、キャンプ地にあるサーキット場での夏キャンプに、ヒカル達も彼女連れで参加することになったのだ。


 彼女であるミサキ、チヒロ、イオリ達女性陣は、最初は乗り気ではなかったが、彼氏の父親達の熱心な指導を受けて初めてみたら、その面白さに気付き、夢中になっていた。



 夜。

 女性陣のテントの中。


 ミサキが言う。

「え? ヒカルくんと同じで、ナツキくんとマコトくんも元女子だったの?

 しかもチヒロとイオリは元男子?」


 チヒロが言う。

「変化したきっかけは違うけどそうなるね。彼氏達、元女子同士だから引きあったんじゃない?」


 イオリが言う。

「そんな感じする。妙に通じあってるよね、彼ら。

 ミサキは元々女子なんだよね?」


「うん。女子だよ。でも親友が元男子だったね」


「そうんだ、私たちもなにか縁を感じるよ。

 みんな同じ大学だし、これからもよろしくね?」


「「こちらこそ」」


 ミサキが言う。

「でも、まさか、いかにも男子の趣味にハマるとは思ってなかったな」


 チヒロが言う。

「うん、奥が深いよね。本格的にやろうとするとお金かかりそうだから、たまに彼氏に付き合う程度でいい気もするけど」


「だねー。お父さん達ほんと好きだよね、ああいうの」


 イオリが言う。

「あれで息抜きして、仕事を頑張れてるみたいだね」


「確かに趣味は大事だよね」


 チヒロが言う、

「ミサキはさっきからタブレットで何やってるの?」


「服のコーデを考えてるの」


 イオリが言う。

「私にも見せて。

 可愛いじゃん、センスいいね」


「一応、賞金稼ぎだしね」


 チヒロが言う。

「何それ? 詳しく」


 ミサキはVXRのことを二人に説明する。


 チヒロが言う。

「へぇー、そうなんだ。

 受験終わって時間できたし、私も始めようかな、コーデ、楽しそう」


 イオリが言う。

「コーデ、楽しそうだよね。他にどんなの合わせたの?

 可愛いな、これ実際に買えちゃうんでしょ?

 ミサキ、センスいいね」


 乙女3人は、テントの中で夜更までおしゃべりを楽しんだ。



……



 晩夏。


 VXRのゲーム内。


 ミサキ、ヒトミ、カナデがプライベートルームでボイスチャットを楽しんでいた。

 


 ミサキが言う。

「身近に、性別が入れ替わった子が二組いて驚いたよ」


 ヒトミが言う。

「アタシの彼女、元男子だったよ。

 特殊な黒魔術で入れ替わったらしい。

 あと知り合いの彼女は、特殊な薬剤で入れ替わったんだって。

 どちらも戻れないし戻りたくないって聞いって驚いた」


 カナデが言う。

「私の知り合いも入れ替わりが一組。

 仕事場の先輩がそう。

 あと特殊な薬剤での性別交換が一組。

 イオリさんの彼女のアキナさんとユキトさん」


 ヒトミが言う。

「アキナさんとユキトさん、性別交換してたんだ……。

 全然違和感ないよね、あの二人も」


 カナデが言う。

「例のカードで、性別の一致の確認してもちゃんと同一化してたらしいね」


 ミサキが言う。

「不思議なことがたくさんありすぎて、大抵のことには驚かなくなってきた気がするよ。

 そういえば、ヒトミはバイクどうしたの?

 もう、ヒカルくんからは後払いで譲り受けたのでしょ?」


 ヒトミが言う。

「早速使ってるよ。

 シオリの家やカナデの家に行ったり、

 バイト先に行ったりで大活躍してる。

 ミサキがバイク向けのコーデしてくれた服も役に立ってる。

 すっかりバイク女子やってるよ。

 メンテナンスも自分でできるようになってきた。

 まさか、ここまでアクティブになるとは思わなかった」


 カナデが言う。

「ヒトミは急速にイケメン女子化したからね。

 大学が始まったらモテるんじゃない?」


「お店でモテモテな感じになってきたよ。

 時給あげてもらえた」


 ミサキが言う。

「本当にヒトミはかわったよね。

 昔は男子に声かけるのもとまどってたのに、

 街で女子を普通にナンパしちゃうのでしょ?」


「あれは運命の出会いだったんだって。

 ビビッときたら体が動いた感じ。

 相手は男子でなくてもいいんだってわかってから、

 自分の中で何かが変わった感じがしたんだよね」


「なるほどね、いまのヒトミ、すごく自由そうだもの」


「だねー、とても充実してる。

 一方で、カナデはすっかり夜の女になってるよね」


「そうなんだ、雰囲気かなり変わった?」


「うん。大人の女になった感じ。

 かなり置いていかれてる気分になる」


「やめてよ恥ずかしい」


「まぁ、カナデのお店のお姉さん達、かなり美人で超大人だしね。

 あの中にいたら、確かに子供っぽく感じちゃうのはしかたないけどね」


「あったことあるの?」


「うん。カナデの家に遊びにきてた時に会った。

 お店のナンバーワンの人とかキラキラしてた。

 まるで別世界の人だったよ」

 

 カナデが言う。

「専業の人には敵わないよ。

 労力とお金のかけかたが段違いだしね」



 3人は環境の変化がっても親友の絆が変わることはなかった。

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