新生活

 入学式の1週間前。


 ついに、カナデは、トモの部屋に引っ越してきた。


 カナデとの同居ため、トモは2DKのマンションに引っ越していた。

 トモと同居なので、最小限の荷物で済んだため、引っ越しはすぐに完了した。


 ひと段落したので、カナデはトモにハーブティーを入れた。


「ありがと、カナデ。

 ついに着てくれたね?

 ずっと待ってたよ」


「トモちゃん、私、嬉しいよ。

 これからはずっと一緒だからね?」


「わかってる。私も嬉しい。

 手放さないからね?」


「ありがと。

 今日、私の体験入店だよね?

 楽しみだよ」


「夜の仕事は大変だよ?」


「でも、ずっと練習してきたから、成果を確認したい」


「じゃ、そろそろ支度しよっか」


 二人はシャワーを浴び、身支度を整える。


 お化粧も練習の甲斐があって、手際良くすませた。

 手荷物に忘れ物がないことを確認し、出発する。

 

 二人は、ネイルサロンへ行き、手足の爪の手入れをしてもらう。

 そのあと、ヘアサロンへ行き、髪をセットしてもらった。


 お店で店長に挨拶してから、更衣室で、ドレスに着替える。


 アヤメとリナが同伴で店に入り、更衣室に着替えにやってきた。


 アヤメが言う。

「サクラ、今日からよろしくね?

 新人とはいえ、十分すぎるくらい練習してるから即戦力扱いだからね?

 指名もらえるように頑張りなよ?」

 

「はい、よろしくお願いします」


 リナが言う。

「緊張しないで、練習通りにやればいいからね?

 うちの黒服は優秀だから、安心して接客しなよ」


「はい、ありがとうございます」


 トモが言う。

「サクラ、大丈夫。アタシがいるからね」


「うん、ありがと。レンちゃん」


 お店が開店し、カナデの初仕事が始まった。



……



 深夜1時すぎ、トモとカナデは帰宅する。

 お化粧を落とし、一緒に入浴して、ヘアケアやスキンケアなどを徹底的に行う。

 ∀XLにログインして、加速世界で就寝し、心労を癒す。

 トモに起こされ、トモと心ゆくまで愛し合う。

 加速世界からログアウトして、VXRにログインする。



 ギルドのボイスチャットに接続する。


 カナデが言う。

「おはようございます」

 

 イオリが言う。

「おはよう、カナデ。

 昨日からこっち?」


「はい、初仕事してきました」


「つかれたでしょ?」


「ええ、練習とはまるで違うので疲れました」


「応援してるよ」


「ありがとうございます」


「トモは寝てるの?」


「はい、疲労がたまってるみたいです」


「可愛い奥さんとやっと同棲できたから気が緩んだかな?

 そういえば、ヒトミなんだけど、L大の新入生を紹介してもらえたみたいだよ」


「え? じゃあ」


「うん。さっそく意気投合して、付き合い始めたってさ。

 彼氏くんには可哀想なことしちゃったけどね」


「よかった。心配だったからほっとしました」


「カナデには未練たらたらだけどね」


「あはは。そうなんですか」


「そうだ、今日遊び行くから、キャンパス案内してあげるよ」



……



 半月後。


 カエデは、VXRのヒトミのプレイベートルームでボイスチャットを楽しんでいた。


「ヒトミ、彼女とはうまくいってる?」


「悪くはなかったけど、黄色の子だったせいか、アツシくんと同じ感じでちょっと物足りなくてさ、忘れられない子がいるからってアタシから別れを切り出したの」


「あらら……」


「カナデ以上の子が見つけられない……赤い子って競争率高いらしくて、自力で見つけるしなかないみたい。

 今は先輩の勧めで、男装カフェでバイトして彼女探ししてる」


「そうなんだ……」


「夏さ、そっちの男装カフェでバイトしようと思ってるの。

 カナデの部屋に泊めてくれない?

 トモ先輩の了解はとってるよ」


「トモちゃんがOKなら問題ないよ」


「やった。楽しみ」


「でも、彼女みつけても遠距離になるんじゃないの?」


「そんなに遠距離じゃないから大丈夫。電車で1時間程度だしね。

 それに時給がそっちの方が高いからありがたいの。

 流石に夜のバイトは敷居が高くて私には無理だから」


「お金貯めてるの?」


「うん。運転免許を取りたいし」


「運転免許て、大学在学中に親がお金出してくれるんじゃなかったの?」


「自動車はね。アタシが欲しいのは二輪免許なんだ。

 中型のバイクに乗りたいの。30分くらいでカナデに会いに行けるしね」


「なんか私に会うのが目的になってる気がするけど」


「一番はそれだから。

 最近はカナデのことばっかり考えてる」


「なら、教習所代は私がプレゼントするよ。

 そこまで言われちゃうと、協力したいから」


「ほんと? 助かる、ありがと、愛してる。

 バイクはヒカルくんのお下がりを安く譲ってもらえることになってるんだ」


「私、トモちゃんと行くとこまで行ってるからね?」


「知ってるよ。だから私にOKしてくれたしね」


「そういうことか」


「アタシ達、相性良すぎると思うんだよね……」


「確かに怖いくらい相性いいけどね。

 トモちゃんはそれ以上だからね。

 覚悟しておいてね」


「強敵なのは知ってる。

 いい子が見つかるまでそばに居させてもらえればいいの。

 あと、初めてはカエデがいい」


「わかったよ」

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