卒業

 ちらほらと合格発表が始まった。


 最初はヒトミ、次はミサキ、最後にカナデの合否がわかった。


 お祝いは3人の合否がわかってからすることにしていた。

 誰かが不合格でも誰かが合格すれば3人で祝う約束だ。


 3人はカナデの家に集合し、黙々とお祝いの準備を進めた。


 テーブルを囲み、乾杯の準備をする。


 ヒトミは感極まってすでに泣いていた。


 ミサキとカエデは必死え堪えていた。


 ミサキが言う。

「ヒトミ、先走りすぎ」


 ヒトミが言う。

「うん……ごめん。OK」


 ミサキが言う。

「じゃ、3人無事に合格したことを祝って、乾杯」


「「乾杯」」


 そのあと、みんなで泣きながら抱き合った。


 ミサキが言う。

「ようやく、思いっきり泣ける。この時を待ってたよ」


 カナデが言う。

「うん。よかった、本当によかった」


 ヒトミが言う。

「うれしいよ、ほんとに嬉しい」


 みんなで泣きべそをかきなから、嬉しそうにおしゃべりをする。

 

 ミサキが言う。

「卒業旅行の計画立てよ?

 3人だけの思い出つくろ?」


 ヒトミが言う。

「もちろんだよ。温泉行こうよ」


 カナデが言う。

「うん。私も3人の思い出作りたい。温泉か、いいな」


 ミサキが言う。

「いくつか見繕っておいたんだ」


 ミサキがタブレットを出して、みんなに見せる。

 みんなでおしゃべりを楽しみながら話し合う。


 ミサキが言う。

「じゃ、ここで決まりね。

 手続き済ませちゃうよ?」


「「よろしく」」


 ヒトミが言う。

「ねぇ、年に一度、都合つけて3人で旅行しない?」


 カナデが言う。

「いいねそれ」


 ミサキが言う。

「あ、それ私も考えてた。是非やろうよ」


 ヒトミが言う。

「カナデが転入してこなかったら、ミサキともこんなに仲良くなってなかったしな。

 前の女子グループにいたら親友なんてできなかったと思う。

 今の大学、合格してたかも怪しいし、友達とも卒業したらそれっきりな感じがしてた。

 本当、二人ともありがとね」


 ミサキが言う。

「私もそうかも。今までで、ここまで仲良くなれる友達いなかったよ。

 二人とも大好きだよ」


 カナデが言う。

「二人には感謝しかない。

 ありがとね。これからもよろしくね」


 カナデが泣きだす。

 ミサキが泣きながら抱きしめる。

 ヒトミも抱きついて泣きだす。


 カナデが言う。

「なんか、卒業式もたくさん泣いちゃいそうで怖いよ。

 女子になって涙もろくなったな、私」


 ミサキが言う。

「卒業式でもいっぱい泣こうね?」


 ヒトミが言う。

「私が一番泣くと思う。自信ある」


 

 数日後、卒業式が行われ、3人は女子高を巣立った。

 すぐにヒトミの新居探しが始まり、その後、温泉へ卒業旅行にいった。


 

 3人は旅行から戻ると、新生活の準備を始めていた。


 今日は、ミサキはヒカルと一緒だったので、ヒトミとカナデが二人きりだった。


 カナデは、ヒトミのノートパソコンのセットアップをしていた。


 カナデがヒトミに言う。

「あと1時間以上かかるからゆっくりして言ってね」


 ヒトミは、カナデのノートパソコンでゲームを楽しみながらいう。

「うん。ありがとね。愛してる」


「私もだよ」


「最近さ、トモ先輩が、カナデにこだわる理由がなんとなくわかってきたよ。

 トモ先輩がいなかったら自分の彼女にしたいもの」


「あはは、ヒトミの彼女か。楽しそうだね。

 私もヒトミ好きだしな」


「結構、本気なんだよ?」


「そうなの?」


「いつもはミサキいるから自重してるけどね。

 年末ぐらいからずっと気になってた。

 アタシそっちの気があるのかな?」


「試してみる?」


「いいの?」


「キスくらいならいいよ」


「じゃ、試してみる」


 ヒトミはカナデの隣に座ると、カナデに優しくキスをした。


「しちゃった。超ドキドキした。

 もうちょっと、させて」


 ヒトミはカナデに甘く深いキスをする、お互いに酔いしれた。


 カナデが言う。

「かなり相性がいいかも。

 でも、トモちゃんいるからこれ以上はやめとくね。

 なんか、戻れなくなりそう」


「わかった、私もそんな気がした。

 ありがと。愛してる。

 でも、すごく気持ちよかった。

 カナデ可愛いな、トモ先輩ずるいな。

 独り占めにして」


「私もヒトミのこと愛してるからね」


「うれしい。

 でもどうしよう、彼女欲しくなってきた。

 だれかの彼女するより、向いてる気がしてきた」


「アツシくんとはうまくいってないの?」


「うまくいってるよ。

 キスもよかった。

 でも、カナデのほうが一緒にいて楽だし、

 キスもすごく気持ちよかった。

 アタシってバイってやつかな?」


「本番はまだ?」


「うん、でも本番してから別れるのは嫌だな……。

 トモ先輩とはどうやって愛し合ってるの?」


「恥ずかしすぎて言えないけど、同棲始めたら、道具使って一緒に散らすことになってる」


「あー、ディルドってやつか」


「うん」


「感想聞かせて」


「わかった。

 もし女の子の方がいいようなら一人で抱え込まないでね。

 トモちゃんの紹介でそういう知り合いが少なからずいるから、

 相談に乗ってもらえるから」


「うん。もちろんだよ。心強いね」


 カナデは、机の引き出しから、特殊なカードを3枚取り出す。

「ちなみに、このカード、左から順番に何色に見える?」


「グレー、緑、青。

 何かの診断?」


「うん、そんなところ。

 私はグレー、淡いピンク、赤に見えるんだ」


「どう違うの?」


「左のカード方は性別が一致してることの確認グレーなら一致で、

 残りは男性に対する性的指向と女性に対する性的指向」


「そんなのがあるんだ……。

 私の性的指向ってどうなの?」


「相手は男女どっちでも大丈夫だけど、

 よりあってるのはリードされるよりリードする側だとおもう。

 男性に対してはリードするかイーブンで対応した方があってる感じ。

 女性に対しては完全にリードするタイプ」


「やっぱりそうなんだ。

 カナデは?」


「私は、愛される側の思考が強いの。女性はかなりOKで、男性は若干OK」


「納得。

 アタシ、どうすればいいのかな?」


「んー……イオリさん紹介しておくね」


「イオリさん? カナデのギルドの?」


「うん。そっち関係は、すごく頼りになるから」



 カナデは、イオリに連絡と取ると、VXRのプライベートルームに招待して、ボイスチャット機能を有効にした。


<どうしたの? カナデ>


「例のカード、親友のヒトミに見せたんですけど、

 グレー、緑、青でした。

 いま同じ部屋でボイスチャット聞いてます」


<そっかー。んー……緑って、男子が緑? 女子が青?>


「ええそうです」


<彼女を作る方をお勧めする>


 ヒトミが言う。

「ええ? そうなんですか?」


<うちのギルドの子にも何人かいるけどね、男子に対して青とか緑の傾向が強く出てる子は、彼氏とトラブルが起きやすいんだよね……。成功例って聞いたことがないのよ。最初は良くても、お互いに慣れてきたときに、喧嘩別れしやすいの。もし夫婦になったら喧嘩ばっかりになると思うよ>


「ショックです……」


<ヒトミってL大だったよね?>


「はい」


<R大とかP大に、知り合いがいるから、紹介しておくね。

 面倒見てもらうといいよ。

 もしかしたら、いい相手を紹介してもらえるかもだし。

 カナデ、ヒトミにカードあげちゃってくれる?

 あとでカナデには新しいのあげるから>


「わかりました」


 カナデは、カードをヒトミに渡す。


<3枚目のカードが赤とかピンクの子が理想だよ。黄色でも大丈夫>


「ありがとう、ございます。

 これからも相談に乗ってください」


<まかせて。そうだ、うちのギルドおいで。

 うちは、その手のギルドだから、大歓迎だよ>



……



 ヒトミが言う。

「まさか、そっちの世界に身を投じるとは思わなかった。

 でもそれなりに自覚はあったんだよね。

 小・中学時代、男子って思い通りにならないから、

 ちょっと苦手意識があったのよ。

 それで頑張って女子高に進んだんだよね……。

 気になる子はカナデしか会ったことないけどね。

 アツシくん、今は大人しいけど、慣れたらリードしたがるだろうしね」


「確かに私が知る限り、受動的な男子ではないね。

 むしろ能動的な感じだね」


「だよね……カナデ、付き合ってくれない?」


「トモちゃんいるからダメだよ」


「相手が悪すぎるな。

 大学で友達作ってカード占いするか」


「応援してる」


「ねぇ、ちょっとだけキスしない?」


「え? ちょっとだけだよ?」


「ありがと、愛してる」


 ヒトミはカナデと甘く深いキスを楽しんだ。


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