修羅場

 夏の半ば。

 トモとカナデが休日の日。


 トモとカナデの家の食卓が、修羅場になっていた。


 ヒトミ、シオリ、そして帰省していたシオリの彼氏のカエデが、話し合いをしていたのだ。


 カナデには手に負えなかったので、トモが仲裁をしてくれた。

 同じマンションの一室に住む、イオリとアキナも駆けつけてくれた。

 すぐに、シズクも部屋に駆けつけた。


 きっかけは、ヒトミがシオリと図書館で勉強しているとき、たまたま近くまで来たトモとカナデが二人と合流した時だった。


 シオリのスマホの位置情報を辿って、カエデが図書館に現れたのだ。 


 大騒ぎになりそうだったので、トモが、皆を自宅へ案内したのだった。


 カナデは全員にお茶を振る舞った。


 シズクが言う。

「そろそろ決着をつけた方がいい時期だと思ったんだ。

 ちょうどいいじゃん。

 シオリ、結論を出しなよ」


 シオリがカエデの顔色を伺う。


 シズクが続ける。

「ダメだよシオリ、自分の気持ちを大切にしなよ」


 シオリが言う。

「カエデ、そろそろ終わりにしたいって思ってるんだ」


「なんでそうなるの?

 シオリには、私しかいないの。

 私にも、シオリしかいないの」


「聞いてよ。私は、もうカエデのモノでいるのは嫌なの。

 それに、ヒトミのことが好きで好きでたまらないの」


「私と愛し合ってるじゃない?」


「今思うと洗脳に近い愛されかただった。

 もう、そういうのは嫌なの」


「もう、そういうのはやめるから、私から離れないでよ」


「ごめん。もう終わりにしたい。

 悪いけど、別れてほしい」


「絶対に嫌。別……」


 イオリが口を挟む。

「カエデちゃん。

 貴女に拒否権はないよ。

 シオリちゃんに何をやってきたか一通り聞いている。

 今まで続いていたのが不思議なくらいだよ。

 自分がやった過ちを認めて、身を引くべき。

 取り返しのつかないことをやってきたんだよ?

 理解できないの?

 シオリちゃんは一人の人間なんだよ?」


「だから、これからはあらためるって言ってるじゃないですか」


 シズクが言う。

「それ何度目?

 信用できるわけないじゃん。

 シオリは私の親友なの。

 もう辛い思いはさせたくないの。

 カエデは、キッパリ別れて、

 シオリに償う方法を考えるべきだよ。

 もう、我慢の限界。

 ウエノさんに、真実を話すから」


「それはやめてよ、せっかくアキトくんとうまく行ってるのに。

 全部ダメになっちゃうじゃない」


「だめ、私は許さないから。

 約束を破って、シオリに辛い思いを強いてきたのだから、もうダメだよ」


「私はみんなが幸せになれる選択をしただけなの。

 何も悪くない。アユミには黙ってればいいだけなの」


 シズクが、カエデにスマホを向ける。


 スマホから女性の声が聞こえる。

<カエデ、もういいよ。

 話は、イチジョウさんから聞いたよ。

 高校時代、シオリとアキトくんを入れ替えたんだってね?

 私に告白したのって中身はシオリだったんだね……。

 私バカだよね。

 中身がシオリなのにアキトくんだと信じ込んでたんだもの。

 ごめんね、本物のアキトくん。辛い思いさせちゃったね。

 取り返しのつかないことさせちゃったね。

 カエデ、みんなの言う通り、今のシオリからは手を引きなよ。

 償おう? もうそれしかないよ?

 カエデのこと、親友だと思ってる。私はそばにいるつもり。

 親友だからね。

 お願いだから、本物のアキトくんを解放してあげてよ>


 カエデは、泣き崩れた。



 ……



 しばらくして、アユミがやってきた。

 アユミの彼氏であるアキトが車で送ってきたのだ。


 アユミは泣きながらシオリを抱きしめて、謝り続けた。

 そして、みんなにお辞儀をして、カエデをつれて、アキトと一緒に帰って行った。


 イオリとアキナも自分の部屋に帰って行った。


 カナデは、少し遅めの夕食を皆に振る舞う。

 徐々に明るい雰囲気が戻り始めた。


 トモが言う。

「遅くなっちゃったし、

 2人とも今日は泊まって行きなよ。

 カナの部屋を使うといい」


 シオリとシズクは、自宅に連絡を入れる。


 シズクが言う。

「ありがとうございます。お世話になります。

 今日は本当に助かりました」


 ヒトミが言う。

「よくわからなかったけど、

 アタシってシオリを救った感じになるの?」


 シオリが言う。

「うん。ありがと。ヒトミ。

 これからもよろしくね」


「もちろん。じゃ、正式に私の彼女になってくれるの?」


「もちろんだよ。大好きだよ、ヒトミ」


「おお、超嬉しい。私も愛してる、シオリ。

 素敵な彼女ができちゃった」


 トモが言う。

「おめでと、ヒトミ。

 諦めないでよかったね」


 カナデが言う。

「おめでとう。

 ようやく安心できるよ」


「みんな、ありがと。

 幸せになるからね」



 

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