後夜祭?

 秋も過ぎ去り、冬服に衣替えした。


 カナデの勉強も順調だった。

 模試はA判定を維持し、学年では3位をキープした。


 文化祭はカフェをして、カナデはウェイトレスをした。

 トモがスケジュールの都合をつけて、一泊二日の日程で駆けつけてくれた。

 年末から年始にかけて、仕事が繁忙期にはいるため、帰省をずらしたのだ。

 トモは文化祭の終了まで校内で待ち、カナデと一緒に帰路についた。


「嬉しいな、トモちゃんと一緒に下校してる」


「私も嬉しいよ。すっかり女の子になったカナと手を繋いで歩いてる。

 生身のカナは最高に可愛い。このまま連れて帰りたい」


「仕事頑張りすぎてない?」


「大丈夫。無理はしてないからね。

 学者目指してるから、

 早く経済的に自立したくてね。

 寂しい思いさせてごめんね?」


「大丈夫だよ。

 春になれば一緒になれるんだし」


「待ち遠しいね」


「うん。楽しみ」


「今夜は徹底的に可愛がってあげるからね」


「……ありがとう、うれしい」


「でも本番は卒業してからね」


「うん、我慢する」


「春に一緒に散らそうね?

 本当にカナは可愛いな」



……



 トモとカナデは一晩中愛し合った。

 トモは朝一番の電車で帰って行った。



 カナデは、トモを駅で見送った後、早朝の街を歩いて帰った。


 自宅の近くまで来た時、ヒカルの家から出てきたミサキと鉢合わせた。


 ミサキは真っ赤な顔押して、カナデに詰めよる。


「おねがい、だまってて」


「うん」


 カナデは、自宅へ帰ろうとする。

 ミサキが引き止める。


「いあ、やっぱり、聞いて」


「どっちなの?

 うち寄ってく?」


「うん」


 ミサキはシャワーを浴びたばかりなのか、シャンプーの香りを漂わせていた。


 カナデの部屋に着くと、カナデはミサキにコーヒーを入れてあげた。


「なんでも聞くから、話してみて」


「文化祭の後、ヒカルくんが待っててくれて、家まで送ってくれることになったの」


「どっちの家?」


「私」


「ほほぅ」


「話をしてたら、ヒカルくんの家、両親が旅行中らしくてさ、翌日学校休みだし、ヒトミの家に泊まることにして、ヒカルくんの家に夕食を作りに行ったの」


「泊まること前提なんだ」


「……うん、門限あるしね。

 で、いろいろ致しました」


「痛かった?」


「いあいあいあ、本番はしてない。

 卒業するまではってお互い我慢した感じ。

 でも、それ以外はいろいろしちゃった。

 もうお嫁にもらってもらうしかない。

 好きで好きでたまらなくなった。

 がんばって勉強して同じ大学行く」


「ごちそうさま」


「終わりじゃないよ」


「まだあるの?」


「あたりまえじゃん。

 これからが本番だよ?」


「わかった」


 カナデは、ミサキの惚気話をたくさん聞かされた。

 ミサキは、一頻り話した後、喋り疲れたのか、カナデのベッドで寝てしまった。

 カナデも眠かったので、ベッドに潜り込んで一緒に寝た。


 3時間ほど寝た後、カナデはミサキに起こされた。


「カナデ、ちょっと起きて」


「どうしたの?」


「VXRってゲームやらせてよ」


 カナデは時計を見る、まだ午前中だった。


「じゃ、アカウントとキャラ作成からやってみる?」


「うん。私のパソコンに引き継げるの?」


「うん。引き継げる。

 ただそれなりの性能のパソコンが必要だよ?」


「どんなかんじ?」


「ヒカルくんのでギリギリかな」


「多分、似た感じだと思う。CPUとメモリとグラボだっけ?

 それ一緒らしいよ。SSDってのも一緒」


「なら大丈夫か」


 カナデは一通り説明してあげた。

 ミサキはキャラメイクを始める。


「ヒカルくんのキャラってどんなの?」


 カナデは、タブレットを起動して、運営サイトにあるヒカルのキャラクターのWebページを表示した。そこにはヒカルのキャラが表示されていた。


「かっこいいな。ヒカルくんのイメージにあってる。

 私もエルフにしよ。

 どうせなら魔法使いたい。初心者でも大丈夫?」


「うん。攻撃するタイプがおすすめ」


「わかった」


 二人はお喋りしながら、試行錯誤して外見を決めた。

 

「これならヒカルくんの彼女っぽく見えるかな?」


「かなりの美人さんだね。似合ってると思うよ」


「名前はミサキでいいや。

 チュートリアルが始まった。

 カナデ、時間大丈夫?」


「私は大丈夫。今日は遊ぶ日にしてるから」


「ならよかった。このまま進めちゃうね」


「うん。チュートリアル終わったら、メインストーリー進めると良いよ」


「わかった」


 カナデは、ヒカルに電話する。

 すぐにヒカルが出た。

 スピーカーモードにする。


<カナちゃん? どうしたの?>


「ミサキが遊びにきててね。VXRはじめたの。

 お嫁さんにもらってあげてくれる?」


「カナデ、ちょっと、なにいってるの?

 お嫁さんとか早すぎでしょ?」


「ゲームの話だよ。結婚機能があるの。いろいろ便利なの」


<あはは、僕は問題ないよ。準備できたら教会にきてね。

 ちょっと、顔洗ってくる。またね> 


 電話が切れる。


「ゲームか、いきなり何言ってるのかと思った。

 ナイスアシストにもほどがあるよ?

 でも、カナデの言う通り、1日1時間程度でも普通に楽しめそうだね?」


「うん、レベル調整機能がついてるから、やり込んでる人とも協調しやすいよ」


「そうなんだ。じゃ、ヒカルくんともすぐ遊べる感じ?」


「うん。フレンド一覧の画面開いてくれる?」


「これ?」


「うん、そこでヒカルってキャラ検索して」


「した。どれだろう?」


「このキャラ。フレンド申請して」


「したよ。

 あ、受理された。

 あれ? なんかヒカルくんからメッセージが来てる」


「早速、婚約指輪を送ってくれたのかな?」


「え? 本当に?

 あ、本当に来てる。

 どうやれば良いの?」


 カナデはやり方を説明する。


「うわ、ウェディングドレスまでついてる、デザイン可愛い。

 一気に華やかになった」


「先日実装された新デザインのやつだ。

 可愛いね。よかったね」


「うん。ゲームでも嬉しい。

 あ、ヒカルくんが来た。

 やっぱかっこいいな」


「あとはヒカルくんについて行って、司祭の前で、結婚登録するだけだよ」


「わかった。チャット打つのなれてないから大変」


「すぐ慣れるよ。ヒカルくんも始めたばかりの時はそんな感じだった」


「そうなんだ。パソコンの勉強にもなるね」


「あはは、やりすぎは注意だけどね」


「うん。

 おお、結婚しちゃった。

 え? キス申請? Yes選べば良いの?」


「……好きにして」


「じゃ、Yes。

 すご、ちゃんとキスしてる。

 うれしい」


「結婚おめでとう」


 カナデは、スクリーンショット機能のキーを押す。


「何したの?」


「記念撮影」


「そんなことできるんだ」


「まぁ、ヒカルくんがしてくれてると思うけどね。

 私のパソコンに保存されちゃうから、あとで、メールで送っておくね」


「うん、ありがと。

 てか、ヒカルくん、言動がいつもよりさらにイケメンすぎて、

 私、テンション上がりまくりなんだけど……」


「お昼どうする? 作るけど?」


「あ、そんな時間か。家で食べる。

 家からゲームつなげてみるね。

 わからないところ教えてね」


「わかった」


 ミサキは、そそくさと帰って行った。






 

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