大晦日

 大晦日。


 カナデの家に、ミサキとヒトミがお泊まりにきた。

 年明けの早朝に、ヒカルとアツシと合流し初詣にゆくことになっている。


 交代でお風呂に入ってから、パジャマ姿で、おしゃべりをした。


 ヒトミが言う

「A判定がでてよかったよ。

 アツシくんのおかげだな……」


 ミサキが言う

「これでみんなAだね?

 この調子で行けるといいね」


 カナデが言う、

「だねー」


 ヒトミが言う。

「カナデ、ノートパソコンに向かって何やってるの?」


「え? ゲームの知り合いに挨拶。

 今年は、お世話になった人が結構いるからね」


 ミサキが言う。

「あ、デスクトップパソコン借りていい?

 私も挨拶しておく」


「どうぞ」


 ヒトミが言う。

「そんなに面白いの?」


 ミサキが言う。

「うん。離れてても近くにいる感じがする。

 通信アプリをさらに強化した感じかな。

 一緒に遊んだりできるしね」


「卒業しても続ける感じ?」


「うん。ヒカルくんもやってるからね」


 カナデが言う。

「私も続けるよ」


「チャットだけとかもできるの?」


「基本無料だからできるよ」


「合格したらノートパソコン買ってもらえるんだけど、どんなの選べばそのゲームできるの?」


「今だと……こんな感じが最低、ここまでくれば十分レベルかな」

 カナデはヒトミにノートバソコンの見積もりをいくつか見せる。


「へー、十分レベルでも思ったより安いんだね」


「電気屋行っておまかせで買うよりはかなり安く高性能なやつが買えるよ」


「そうなんだ。じゃ、買うとき相談にのってよ」


「いいよ。

 そうだ、キャラだけ作っておく?」


 ミサキが言う。

「そうしておきなよ。

 私もカナデのパソコンでアカウントとキャラ作ったけど、

 データも問題なく引き継げたよ」


 ヒトミが言う。

「じゃ、やってみようかな、教えて」


 みんなで、机のパソコンの前に座って、お喋りしながら、

 ヒトミのキャラ作成を行った。


 ミサキが言う。

「エルフのアサシンか。

 大人の女って感じだね」


「エロかっこいい感じを狙ってみた。

 操作は意外とシンプルなんだね。

 メインストーリーもよくできてる。

 映画見てるみたい。

 イケメンキャラもたくさん出てくるね。

 声も素敵すぎる。

 これは確かにハマるかも」


 ミサキが言う。

「カナデのノートパソコンかして?」


 ミサキがテーブルにあるノートパソコンに向かう。


「どうぞ」


 ヒトミが言う。

「なんか、申請がきた」


「私がフレンド申請したの」


「じゃ、OKっと。

 てか、ミサキ、チャットの入力早くない?」


「ゲームで鍛えた。

 1日1時間程度しかしてないけどね。

 なんかすぐ慣れたよ」


「置いていかれた気分。

 でも面白いね。やり込みもできる感じだけど、

 勉強の息抜き程度でも十分楽しめるレベルじゃん」


「私もカナデもそんな感じでやってるよ。

 社会人の人とかもそんな感じかな」


「たしかに、一緒にいる感じがするね。

 電話とはまた違った感じ」


「ボイスチャットもあるから、普通に会話もできるしね」


「そうなんだ。一人暮らしだったら、それも便利だね。

 なんかミサキの服可愛いね。

 課金した奴?」


「これ? 違うよ。

 ゲーム内のマーケットで買ったやつを染色して作ったの。

 生地の質感とかも自由に変更できる。

 見た目だけだから装備関係なく着られる」


「マーケットってどれ?」


「こっち、ついてきて。

 そこクリック」


「あー、出てきた。

 試着できるんだ。

 へー、いろんなのあって楽しいね」


「そんなに高くないから、ゴールドあげるよ。

 買ってみ?」


「いいの? ありがと。

 じゃ、これ買うか。

 染料はこっちで買えるのか。

 お、いい感じになった。

 いろんな服あるから目移りしちゃうね」


「うん。それだけでも楽しい。しかも低価格だしね。

 服の種類もどんどん増えてゆくから飽きないんだ。

 さらに、いくつかのアパレルメーカーと提携してて、

 実際に同じ質感と色とデザインにしてリアルで注文できるの。

 受注生産だから市販の服よりは、きもーち、高めだけどね。

 でも、受注生産にしてはかなり安めだとは思う」


「へぇー、そうなんだ。

 日常でも着られそうな服が多いね」


「だよね。ただエルフと人間だと、スタイルに差がありすぎるから、

 実際は似合わないことも多々あるみたいだね。

 そこは注意しないとだよ。

 一応、カメラで自分を映しながら、

 服を合わせることもできるから、確認はできる」


「まさか、ネトゲで服を買えるとは思わなかった……」


「それでね、お気に入りのコーデをここにいくつも保存できるの。

 自分でタグとか点数もつけられるから、管理も楽なんだ。

 あとね、これ、他のプレイヤーからも見ることができて、

 他人のコーデにイイネとかつけられるの」


「本格的だね」


「うん。

 実はさ、いくつか作って登録しておいたらさ。

 ヒカルくんがクリスマスにプレゼントしてくれたんだよね……」


「まじで? 一式全部?」


「……うん」


「なにそのイケメン。

 サイズはどうだった?

 質感とか造りは?」


「ぴったりだよ。質感もすごいよくて、造りもしっかりしてる。

 実は、今日着てきた服がそれなんだよね……」


「え? ちょっと見せて。

 なんかやけに可愛いなって思ってたけど、そういう服だったのか。

 羨ましいな。しかもお洒落で、似合ってるし。

 ほんとだ、仕立てがしっかりしてる。

 これなら実用レベルだね。てか、市販のよりしっかりしてるよね。

 このコーデ、時間かかったでしょ?」


「うん、かなり時間をかけたよ。

 イイネもたくさんもらって、週刊ランキングで上位に入ったやつなの。

 しかも実際にこの服を購入した人がそこそこいるんだよね。

 そのインセンティブで、課金のコインをもらえたの。

 私、このゲームで全く課金してないんだよ。

 インセンティブでもらったコインを使ってるだけなんだよね。

 もはやコーディネート・オンラインといっても過言ではないね。

 運営のWebサイトでもコーデできるから、

 勉強の合間に、ずっとそれやってた。

 まさか本当に手に入るとは思わなかったけど」


「すごいね。

 何種類も登録してるじゃん。

 しかも評価が高いのばっかり。

 センスあるなぁ……。

 この服はヒカルくんがえらんだの?

 それともミサキが指定したの?」


「ヒカルくんが選んでサプライズで買ってくれたの。

 絶対似合うからって」


「イケメンすぎる……。

 流石、元女子。女子の好みがわかってるね」


「うん、普通の男子には真似できないなって思った。

 他の服と合わせずらかったり、似合わなかったり、

 好みじゃないの買われても困るしね。

 個別にばらして、私のもってる他の服にも合わせやすいんだ。

 ランキング狙いした特殊なやつはスルーして、

 普段、着回しができるやつ選んでくれたの」


「……いい彼氏もったね」


「うん。

 絶対に手放せない彼氏だよ」


「カナデは、服選びってどうしてるの?

 センスいいのきてるよね?」


「私は、トモちゃんのお下がりか、

 トモちゃんに選んでもらってる」


「トモ先輩か……最強すぎるね」


「うん。

 私は、トモちゃん好みに染まるだけで幸せだからね。

 もはや考えるのをやめてるよ」


「あはは。カナデは、面白いね」



 3人はおしゃべりを楽しみながら年の瀬を過ごした。


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