第24話 お前ら正気じゃねぇ
本社の人間が聞いてくる事なんてたかが知れていた
「退職の意思は本当か?」「何故なのか?」「考えは変わらないのか?」
のらりくらりと恭介はその言葉をかわした
遅番の手伝いを邪魔された事にもイラついていたが、最後の最後まで腰に関する話はされないままだった
「なんでうちに就職したの?」
名前も思い出せないが、入社する前面接を担当した人がそう聞いてきた
「なんで?生きる為です」
「うちを選んでくれた訳じゃん」
「今は就職氷河期です。その上震災もあった、僕には他に選択肢なんか無い、当時はそう思っていました」
恭介は続けた
「でも違いました。結局やりたい事をやりたいようにやるしかないんです。明日、生きてるかも解らないのに」
恭介は嘘はついていないが、本当の事は言わなかった
不用意に人を傷付ける必要はない、そう思っての事
まあなんにせよ傷つかないなんてことはないのだが
「ちょっと、ショックだな」
と言って本社の人間は帰っていった
ショック?散々無視して、こちらの都合関係なしに邪魔してきたくせに?
と思ったが、馬鹿らしいと思い恭介はすぐに忘れる事にした
上田が九州に行った代わりに時期に新しい主任がナタデココにくる
違うパチンコ店から転職してきた人で、前の会社では店長をしていたらしい
名を冬木というらしい
色々バタバタしてるとこに来て大変だろうが、冬木は基本ストレスを溜め込まないような性格で、周りにもどちらかと言えば柔和に接していたが
鏑木の事は「信用出来ない」と言っていたの印象的だ
時期は12月も後半
クリスマスは早番の業務を終えた後恭介は幸と過ごした
時間をちゃんと自分で使えてる気がしていた
どこも混んでいるけど、地元の安い居酒屋に、決して高くはないプレゼント
それでも、イベントを2人で楽しめる事がこんなに尊い事だったのかと噛み締めた
翌日
恭介の退職日が「1月20日」に決まったとお達しがきた
あと1ヶ月弱か
最近山本に対する役職の当たりが強い
育てようとしてるのだろうが相変わらずお門違いな事ばかりで困惑させてるだけのようにしか見えない
反面山本も、スタッフに対する接し方が変わった
横暴になった訳ではないが、自分のアイディアを押し付けるようになったらしく
遅番がカオスな状態になっているようだ
そろそろ皆に辞める事言わなきゃな
と恭介も思っていた
次に遅番に入る1月3日にでも言おうと考えていた
しかし
その直前
12月28日に出勤した恭介は
驚愕した
鏑木がいない
本日付で退職したとの話が本社から来ていた
「え?いきなりという事ですか?皆知ってたんですか?」
恭介は冬木に聞いた
「いや、前々から本社には言ってたみたいだけど、本社の人以外は知らなかったらしい、引き継ぎされてないんだよね」
「は?誰も知らなかったんですか?店長が正式に辞めるのに?本社の人も何も言わなかったという事ですか?」
「本社の人が言うには"個人の事だから周りには言わなかった"と言う事らしい」
「……はは。もう、解りました」
一店舗の店長が辞めれば当然、その店舗で働く人には多くの影響がある。
新しい店長は?シフトは?
しかも前々から言われてたのにこんな時期に?
それが個人の事?
恭介は疑問が絶えなかった
流石に呆れてしまった
ただまあ事実のようだ
辞めると決めて良かった
恭介はそう思っていた
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