第26話 卒業


1月20日

誰もが劇的に去れる訳ではない

何事もなく仕事が終わり、遅番スタッフで恭介の送別会がてら飲みに出た


相澤は「なんで辞めるの?」とやたら聞いてきたが


冬木や藤原もいたため「お金も貯まったし、やりたい事やるよ」

とかわしていた


恭介は

木咲が職場から消えた時に退職願いを書いていた


堀田や花崎と続いた時に、次は自分かもしれないと思ったからだ


だが、実際に職場から去ったのは木咲だった

話す事もなく、居なくなってしまった人達が、何を思い去ったのかはもう解ることはない


ただ


今日あるものが、当たり前に明日あるなんてことはない


彼女達にしても、望まぬ結果だったかもしれない


なぜ?を考えなくなったら、あのどうしようもない時期を支えてくれた人達にもらいっぱなしになってしまうと恭介は思った


けど


あの会社にいたら


無駄な事と切り捨てるようになる


会社の人達の色に染まるのを恭介は嫌った


退職を決めた理由はそれだった


タイミングは決めてなかった


城崎が社員になると言った時点でも良かった


結果は


感情に身を任すようなタイミングだった


だが、大きく動く時にはそれなりのエネルギーが必要だ。怒りや憎しみはそれを後押しする事もある


「やりたい事って、何かあるの?」


「まだ決めてないけど、どっか専門学校にでも行こうかなと思ってる」


「それもいいよね〜、私も今更学校行きたくなってるもん」


飲みの帰り、駅に向かう途中でそんな話になった


「では、今日は、というか今までありがとうございました」


と挨拶して恭介はその場を離れた


次があるかはともかく、皆一様に「また」と言って手を振る


卒業式が出来なかった事もあり、どこか気持ちがふわふわしたままだったのかもしれない


この時はじめて


恭介は自分で区切りを付けれた気がした



後日談だが


その後相澤から恭介に連絡があった


「私もナタデココで社員になる〜」


だと


マジか?笑




                またね

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なぜ彼女はバイト先から消えたのか 左 ネコ助 @tokiwanekosuke

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