第20話 ケンカと旅立ち
医者の診断によれば、恭介の腹痛の原因は胃腸からくるもので
疲れにより免疫力が下がった事やストレスによるものが原因との事
症状としては、胃が正常とは言えない働きをしてしまっているから、痛みや、普段通りの排出機能を保持出来なくなっているとの事
恭介は説明を聞いて理解したとは言いにくいが
「やっと休める」
そう思った事だけは確かだった
処方してもらった薬は胃の動きを止める薬
胃が暴走しないようにしてくれるが、薬が効いてるうちは食事は取れない
「なんだか大袈裟な薬だな…ははっ」
よく解っているんだかどうなんだか
そのまま恭介はナタデココへ向かった
なんとなく、電話では伝えれないと思ったのか
いや、気持ちはどこかケンカしに行くような高揚感もあった
ナタデココに着いた恭介は事務所に行き
「胃の動きを止める薬をもらいました、胃がおかしくなっているようです、しばらくお休みを頂けませんか?」
それを見た藤原は普段見せない表情で「酷い顔色してるな」とつぶやいた
鏑木は「明日休みだったな?とりあえず今日は帰って、明日まで休んだ後で様子見て」
と言われ恭介は「解りました」とだけ言って事務所を出た
そのまま休憩室に向かうと、丁度遅番のスタッフが出勤し始めており
「こういう状態だから、今日はとにかく帰るね」
と伝えた
「いや、まず電話でしょ、来なくてもいいのに」
と言ってきたのは城崎だ
まあそうなんだけどね
帰ろうとする恭介を城崎はちょっと引き止めた
「俺、社員受かったみたい。少しここで働いたら11月には九州に行くことになったよ」
「そうか…あとちょっとだな…行く前には戻ってくるよ」
「解った、とにかくお大事に」
あ
山本はどうなったのだろう?
まあいいや
そのうち聴けるだろう
普段の休日とは少し違う
どことなく後ろめたいが、とりあえず仕事を考えなくていい時間
だけど
それだけ
この体調ではろくに遊べもしない
何のために働いているのか本当に解らない
なんて
思いながらベッドに入った恭介は
睡眠負債を回収するかのように寝続けた
2日間ほぼ寝続けたのではないだろうか
それでも
体調が戻る事もなかった
出勤の日になり重い体を引きずりナタデココに着く
早番の吉岡さんに「顔色凄い、ストレス性ですか?そうですよね」
と言われたが「多分そうですね」位しか話せなかった
その日のホール仕事はあまり記憶になかった
後で安河さんに言われたのは
インカムでホールの全員が「冴島さん」と呼んでいたが
何かが遠くで聞こえるような
意識があるようないような
そんな様子で恭介はただホールを歩いていたらしい
何度目かのインカムで応答してそれ以降は普通だったが
誰も声をかけられなかったらしい
その話を聞いた恭介は、とにかく目の前にいる安河に
「ごめん」
と謝った
「いや、ごめんとかは誰も求めてないというか、そんなことよりも大丈夫なの?」
「…大丈夫ではないかもね」
強がる事ももう恭介には無意味に思えた
そんな中、城崎最後の出勤日が来た
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