なぜ彼女はバイト先から消えたのか
左 ネコ助
第1話 恭介の被災
その年は日本を大きく揺るがす年だった。3月に起きた震災は、様々な形で僕等から色々な物を奪っていった
東京でも多くの影響が出た。コンビニからは物がなくなり、停電によって光が消えた
恭介の家も例外ではなかった。
カップラーメンにお湯を注いだ直後に大きな揺れが起きた。揺れがおさまり、携帯がなかなか繋がらない事を確認した後で
「今日は長くなる」
と思い、伸びきったラーメンを食べきった
恭介は4月から就職予定であった。そんなに大きくない会社で、パチンコ店などを数店舗経営している。
4月からはそう遠くないが、店舗近くの社宅に移り住み、研修の後会社が決めた店舗に配属予定だった。
大学の卒業式を控えていた。恭介は別に卒業式自体に出たい訳ではなかったが、4年間を過ごした仲間達と思いっきり遊べる最後の日として楽しみにしていた。
しかし、その日は来なかった
卒業式を予定していた会場は被災によって住む所を失った人達の避難所として使われるようになった
恭介の想定よりも、恭介の家の電気は回復した
それと同時にTVにより流れ込んできた情報は、卒業式がなくなると考えるには十分なものだった
町を海が飲み込んでいく
恭介は言葉を失っていた
命をなくした人がいる 家を、車をなくした人がいる
卒業式が出来ない位致し方ない
恭介自身そう考えていた
しかし気持ちまでそうなれるほどシンプルな人間ではなかった
自分の中で決めていた卒業という区切りが出来なかった恭介は
とても中途半端な気持ちのまま
4月を迎えることになる
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