特攻作戦開始
「私たちの任務はクリメラの援護か」
「うむ。この前のように邪魔が入ることは大いに予想できるからな。まあクリメラの身が危なくなるまでは待機でいい」
「この鎧を使ってみたいんだけど」
「ならその鎧を着てお前にガソリンスタンドに突っ込んで貰えばよかったな。最初はそのつもりだったし」
「ちょお待てや」
作戦決行日。
俺とクサビは目標の県庁裏にある、五階建てマンションの屋上にいた。
理由は全体を俯瞰できるから。
それからクサビのたっての希望により。
馬鹿となんとかは高い所が好きなのだ。
「何をボソボソ言ってる?」
「なーんでーもないさー」
何キングだ、俺は。
ここから蹴り落とされたら死んでしまうので誤魔化し誤魔化し。
「作戦開始は?」
「あと二分」
時間を確認。クリメラは既に所定の場所で待機しているはずだ。
今度という今度こそは上手くいくはず。
前回の巨人が現れても、建物の中にいれば手出しはできない。
腕時計のデジタル表示を黙って見守る。
時が刻まれ、ゼロが四つ並んだ瞬間、轟音と衝撃が体を突き抜けた。
始まったか。
時間ピッタリじゃないか素晴らしい。
そういう奴と仕事をしたい。
建物が大きく揺れ、バランスを崩してその場に膝をつく。もう少し手前にいたらふらっと落ちるところだった。
大量の煙を吐き出す県庁舎を眺めながら、その威力に舌を巻く。
まるで地震だ。
規模は小さいが災害級の威力。
「いいぞ、全て焼き払え!!」
我ながら悪役のセリフだ。
前回が失敗に終わったこともあり、作戦の第一歩が成功したことに一安心して、つい笑みがこぼれる。
と、その瞬間。
県庁舎を光が包んだ。
「目が!! 目がッ!!」
クサビはやられた。
俺もすぐに瞼を下ろしたが、その閃光は薄皮一枚では防げない。
視界のあちこちに光がチラつかせながら、県庁舎がどうなっているかをかろうじて確認する。
絶句。
そこには、前回と全く同じ、忌々しい姿の巨人がいた。
「やはり出てきたな!! だが、その図体ではクリメラ以外の市民も巻き込んでしまうぞ!!」
「暖人、何がどうなってる? 目がチカチカして見えない!」
「……しばらく休んどけ」
気を取り直して。
「さあ、どうする巨人? 出てくるだけ出てきて、県庁舎が無惨にも倒れていくのを見守るだけか?」
巨人を見上げながら、挑発的に声をかける。
聞こえているかどうかは不明だが。
むしろ聞かせる気もなく、声も張っていないのだが。
しかしそんな俺の挑発を逆に鼻で笑うように。
巨人は一声上げ、両腕を広げると
「……は?」
人間とほぼ変わらない大きさにまで小さくなり、走って県庁舎の瓦礫の中に消えていった。
「なっ、おいっ、そりゃ確かに特撮ヒーローも小さくなるが。が、しかしお前、質量保存の法則はどうした!!」
「何? 何がどうしたんだ?」
「うるさい!」
俺はヒーローの背中を見送ることしか出来ない。
クリメラを心の中で応援しながら、かつて県庁舎だった瓦礫の山を見守っていると。
遥か彼方、上空に向かって吹っ飛んで行く、怪獣らしき物体を視認した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます