宇宙のテクノロジーを知ろう

「じゃあお前らは宇宙人基準でも美形ってことか?」

「びっ……い、いえ、そういう訳でもありません。私などは可愛げがないとずっと言われていましたし……」


 アカナが照れたように目線を下に逸らす。

 宇宙人の擬態もなかなか面白い技術が使われているらしい。


「この擬態装置は私たちの本来の姿を地球人に置き換えるものです。この置換の基準は美醜のような価値観ではなく、純粋なパーツのバランスによりま

 す」

「M78星雲人の中で目が大きい方、とか鼻が高い方、みたいなことか?」

「はい、それズバリ」

「ズバリ……」

「暖人さんは未知のものへの理解が早いので助かります」

「恐縮です」

「他にも輪郭や肌の色、体型なども含まれますね。まあ地球人とは体の作りが違いすぎるので、置換しきれずに補完されているような部分も多々ありますが」


 なるほど、面白いシステムだ。


「内蔵の作りなんかも違うはずだろ。生命活動はどうなるんだ」

「内蔵や筋肉は大まかに地球人の物に作り替えられます。擬態時間が長いほど機能が地球人に寄っていきますね」


 内蔵が大まかに作り替えられる、というのがどういうことなのかよく分からなかったが、響きが怖いので触れないことにする。

 それに、俺の興味はもっと別の部分にある。


「お前らが地球の食べ物しか食べなかったのはそのせいか?」

「ええ。まあそもそも、擬態しなくても地球の食品で我々の毒になるものはあまりありません」


 この辺りは俺と出会う前に地球を調査していた時の知見か。

 ひょっとしたら擬態の状態で街を歩いていたのかもしれない。

 街中に人間の皮を被った宇宙人がいる、なんてオカルトマニアの妄想みたいなことが現実にあったとは。

 しかしクサビのジャージ好きはどこからの影響なのだろうか。


「あ、でも辛味は基本的にダメですね。粘膜に直接刺激物を塗りつけるなんて生物として理解し難い文化です」

「安心しろ。地球人も辛いものは受け付けない」

「しかし辛いものが好きな人間もかなりの数いるようでしたが……」

「奴らは人間ではないと俺は考えている。まともな人間なら辛味は受け付けん」

「……そうですか」


 まともな人間、の部分でアカナの目が怪訝に歪められたが、全く気にしない。


「ただいま」


 窓から声が聞こえ、振り向くとそこには茶髪の宇宙人・ジキがいた。


「クサビはどうした?」

「疲れたから向こうで休んでる」

「そうか。首尾はどうだ?」

「完璧」


 この部屋で怪獣を作る訳には行かないので、ジキとクサビは宇宙船に戻って作業をしている。


「ということは」

「うん、完成した」


 完成した怪獣は、宇宙船から街中に降り立つ予定だ。


 侵略作戦開始の時は、近い。

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