侵略ロボット グランダー

ロボット・コンダクト

「どうだ、調子は?」

「ダメ」


 ダメだった。

 こんなにもつっけんどんなのも珍しいが、未だにジキのことは掴めない。

 クサビとアカナがそれぞれ出ていった午後のこと、宇宙船でロボットを作っていたはずのジキが、部屋に帰ってきた。

 だが別に休憩という訳でもないようで、リビングのテーブルでパーツをいじっいる。

 デスクを帰る感覚で宇宙船と地上を行き来しているのか、こいつは。


「どこで引っかかってる?」

「性能」

「どこか実現が難しい箇所でもあったか?」


 設計が俺なだけに、技術側からの苦情には対処せねばなるまい。

 しかし俺の懸念はどうやら的外れだったらしい。


「クリメラの性能を越えられない」


 ジキから意外な報告が上がった。


「クリメラは最高傑作。信じられないくらいいい出来」


 そんなふうに認識していたのか。

 なるほど、手抜きもなく心血を注いで作ったのだ。

 シュラフに呆気なく倒されるという結果には終わったが、それでもクリメラに何か欠点があったとも思わない。

 クリメラに対して少し過保護な様子を見せたのもそのせいだろう。


「自分との戦い」


 そして次こそはシュラフをも倒す性能で、か。

 技術的にクリメラが限界であると判断して、どちらかが倒されてもいいような作戦を立てた俺とは大違いだ。

 そして、二者を天秤にかけた時、ヒーローはより被害の大きくなる、巨大なロボットの方から倒そうとするだろうと、密かに考えている俺とは。


 前回はクサビがシュラフを撃退してくれたが、毎度上手くいくとは思えない。

 ヒーローがパワーアップするのは世の常だしな。


「あれは隣の銀河の技術」

「へ?」

「暖人とクサビから聞いた話だと、多分」


 作業する手元から一切目を離さずに発した言葉の意味が一瞬分からなかった。

 数秒ジキの横顔を見てから、遅れてその意味を理解する。

 やはりというかなんというか、やはりシュラフは地球の者ではなかったらしい。

 クサビは何も言っていなかったが、おそらく気づいていないんだろう。

 馬鹿だし。


「M78星雲の技術は負けない」


 こいつはこいつで母星の威信を背負っている訳だ。

 技術者の意地かな。

 俺には分からんような、でも少しくらいは分かるような。

 しかしまあ、無表情ではあるが辛そうな目をしている。

 そういう目には見覚えがある。

 それ以外、何にも縋る術が無い奴の目だ。


 まあ、俺は人を見る目がないからな。

 人との関わりも少ない。

 あの目も過去に一度見たことがあるだけだ。

 アテにはならない。

 地球人の基準を宇宙人に当てはめる訳にもいかない。


 だから今は余計なことを言わずに信じて任せることしか出来ない。

 まあでも、せめてそばで見守っているくらいはできるだろう。




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