ロボット・コンプリート!

「いったぁぁぁ!?」


 自分でやれと命令しておきながら、その成功に驚く。

 モニターから視線をずらすと、アカナはまだ少し呆然とした様子で、コントローラーにも画面にも目は向けていなかった。

 しかし、確かにコマンドを入力した形跡がある。

 画面の向こうのグランダーも動いている。

 動いて、シュラフに強力な反撃を見舞っている。

 俺の声に合わせて、無意識に操作をしていた。


「あっ、あ!」


 アカナは戸惑いながらも、よろめいたシュラフを画面越しに確認する。

 そこからは一瞬だった。

 再び最初のように素早くコントローラーを操り、グランダーは華麗な動きで、格ゲーさながらに流れるようなコンボを決める。

 アカナは既にまっすぐに前を向き、その目は画面から逸らされることはない。

 シュラフも反撃を繰り出すべく拳を突き出すが、不安定な体勢からの打撃は軽く捌かれ、おざなりな足元を救われて尻もちをつく。

 いやー、街への被害も甚大だ。


「よっしゃ見たかぁっ!!」


 よほど嬉しかったのか、アカナもキャラが変わっている。

 いや、しかし。

 あまりにも調子が良すぎるような……。

 いつもこういう時にどこかで躓いて来た。

 なんとなーく嫌な予感がするんだよな。

 最大限注意を払い続ける必要はあるか。


 ダウンしたまま転がって距離を取るシュラフ。

 冷静さを取り戻したアカナは、深追いせずに様子を見ているが。

 ヒーローは立ち上がり、ポーズを決める。

 と、その瞬間巨体が光に包まれる。


「んなっ!?」

「なんですか、それ!?」


 まるでこの前のクサビの様に。

 瞬間的に金の装甲を纏った巨人。


「強化形態かよ!?」

「そ、そんなの聞いてねぇぇぇぇーー!!」


 パイロットはまたしても冷静さを失い、絶叫する。

 興奮するとキャラが変わるな、コイツ。

 暴言を吐くゲーマーみたいなやつだ。


 しかし俺も冷静ではいられない。

 注意するったって、流石にそんなのは想定外だ!


 一方のシュラフは、淀みない動作で腕を突き出し、光を放つ。

 文字通り光速の矢は迫りながらどんどんと肥大化し、何一つ反応を許さないままにグランダーの全身を包んだ。

 モニターは真っ白。

 ついでに部屋の窓にも、遠方からの光が届く。

 街の人々は大丈夫だろうか、と筋違いな思考。

 光が消え、いつの間にか止まっていた呼吸を再開する頃には、グランダーは全く制御が効かないままに地面に倒れ伏した。


「……やっぱりね、遠隔操縦じゃなくて搭乗型にしとけばよかったんですよ。遠隔だと操作にラグがね」

「地球の技術と違って遠隔操作でもほとんどラグは発生しません、って言ったのはお前だ」

「くぬぅ……」


 回線のせいにするな。

 しかしまあ、それにしてもシュラフの強化形態は想定外だった。

 想定よりも早くグランダーが撃沈してしまったが。

 さて、クサビの方はどうなったろうか。

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