概要
ゆき子があの物置に喜々として入る理由
聞きわけの良くない娘、ゆき子と人ならざる「手」の物語。
手と指で男女の契りを交わす世界、大人になることは手袋をすることだった。魔除けの刺青を入れることだった。
家と大人の決まり事を嫌うゆき子が最後に辿りつく場所は。
手と指で男女の契りを交わす世界、大人になることは手袋をすることだった。魔除けの刺青を入れることだった。
家と大人の決まり事を嫌うゆき子が最後に辿りつく場所は。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!耽美なる《手》と指の契り……あなたは魅入られずにいられますか
男女は手と指をもって契りをかわす。
故にひとびとは、子どもの頃から爪に魔除けのまじないを施して、性徴のしるしがもたらされると手袋をつけ、決してひとまえに素手を曝すことをしない。手は男女のことの象徴だった。
親に反抗した仕置きとして閉じこめられた物置のなかで、ゆき子は《それ》を見つける。壁から突きだした手。女とも男ともつかない、しいていうならばその手は、そのどちらの美しさも兼ね備えていた。玻璃の細工のような指に好意を懐いたゆき子……あるいは魅入られてしまったのか、彼女は次第にその手との距離を縮めていく。
時は経ち、望まぬ婚礼をひかえた娘は、遂にひとならざる手と一線を越える。
読みはじめて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!夏野式エログロサスペンス
文章のきめ細やかさはそのままで、それが強烈な手へのフェティシズムとともに不気味さを醸し出す。
それにしても、近三作のこの淡さ→彩度高めの視野→黒とも呼ぶべき朱、の流れを見ていると、世界観のジェットコースターぶり、誰よりも作者さまが楽しんでおられるのだろうなあ、という感じがします。やばいね!
作中の白眉は、顎の下の自意識という表現でした。いやー、心身ともに肥えていることをそう表現なさるかー……! という。
読後、頭の中にぼとり、ぼとりと肉片がしたたるような、そんな感触の残る怪作です。みんなが寝静まった真夜中に読むのがおすすめですよ!(爽やかな笑顔)