★★★ Excellent!!! グロテスクさを想起させる結末さえも美しく。 鳥辺野九 「力の1号、技の2号」って言葉がありますが、この文章は力も技も持ち合わせています。 よく馴染みのある世界観なはずなのに、牙を剥くように見え隠れする異質さが文章の力で大人しく鳴りを潜める。おどろおどろしいはずの異形すら文章の技で玉のように飾り付ける。 読み応えがある、そんな言葉がぴったりの短編小説です。面白いと評するよりも、巧いと手を叩きたくなりました。 レビューいいね! 3 2020年2月6日 10:21
★★★ Excellent!!! それは、秘めやかな逢瀬。 南雲 皋 独特の世界観を、群を抜いた筆力が丁寧に描写する。 そこに煌めく光の表現。 そして妖しくも美しい、指。 初めから、魅入られていたのだろうか。 全身に刺青を彫られ、外に出られぬ身体になっても生き長らえる娘の話を聴き、そうはなりたくないと言ったゆき子は、自分の最期をどう思うのだろう。 人の、醜さ。 手の、美しさ。 けれど美しいモノが、正しいモノとは限らない。 レビューいいね! 4 2020年2月3日 14:13
★★★ Excellent!!! 耽美なる《手》と指の契り……あなたは魅入られずにいられますか 夢見里 龍 男女は手と指をもって契りをかわす。 故にひとびとは、子どもの頃から爪に魔除けのまじないを施して、性徴のしるしがもたらされると手袋をつけ、決してひとまえに素手を曝すことをしない。手は男女のことの象徴だった。 親に反抗した仕置きとして閉じこめられた物置のなかで、ゆき子は《それ》を見つける。壁から突きだした手。女とも男ともつかない、しいていうならばその手は、そのどちらの美しさも兼ね備えていた。玻璃の細工のような指に好意を懐いたゆき子……あるいは魅入られてしまったのか、彼女は次第にその手との距離を縮めていく。 時は経ち、望まぬ婚礼をひかえた娘は、遂にひとならざる手と一線を越える。 読みはじめてすぐ、凄まじく精緻な筆遣いの描写に固唾を飲みました。頁を進めるごとに肌が熱を帯びたり背筋が凍ったり……言葉のひとつひとつが、じっとりとした湿りけをともなって、肌に張りついてくるのです。幾多の小説を読んでまいりましたが、これほどまでに温度と湿度を感じさせる文章と巡りあったのははじめての経験で……いやはや、畏服する他にありません。凄まじいです。 あの《手》がなんだったのかは、最後まで語られません。 語られないからこそおそろしくもあり、娘と手のあいだには欲望があったのか、愛があったのか、それともなにもなかったのかと想像が膨らみます。 読み終えた後にも喉につかえが残るような……それでいて艶めかしいふんいきに耽溺し、うっとりとさせられるような……ああ、わたしも《あの手》に魅入られてしまったのかもしれません…… レビューいいね! 5 2020年2月3日 02:09
★★★ Excellent!!! さらっと描かれた、ここではない世界のマジック・リアリズム。 一田和樹 おもしろかったです。とても雰囲気があり、昏く淫靡な世界にはまりました。 しっとり不思議なマジック・リアリズムでした。 素敵な物語をありがとうございました。 レビューいいね! 3 2020年2月1日 11:46
★★★ Excellent!!! メタファに殴り飛ばされました @kuronekoya なまじっかな無修正の動画よりも、はるかに官能的 言葉によるメタファには、本物以上の力がある レビューいいね! 3 2020年1月31日 20:44
★★★ Excellent!!! 残るのは気味の悪さと肌を撫でるような手の感触、骨の質感。 きつねのなにか いやー悦が入っていてきめ細やかで末恐ろしい物語です。 最初の方はわりかし綺麗で艶めく色彩で語られていくのですが、後半になるほど気味が悪く澱みが読んでいる脳内や顔周辺をまとわりつくような感触に襲われます。 感触、そう、その感触が読了後も残りますね。ドロッとしているのでそんな簡単には身体から消えてくれない。 1万文字いかない短編ですが、隙間時間で読まない方が良いかなって思いました。ちゃんと時間とって苦しい読了感を味わいながら消化していきましょう。 しかし、ゆき子は幸せだったのでしょうか…… レビューいいね! 4 2020年1月30日 18:51
★★★ Excellent!!! 夏野式エログロサスペンス ヘツポツ斎 文章のきめ細やかさはそのままで、それが強烈な手へのフェティシズムとともに不気味さを醸し出す。 それにしても、近三作のこの淡さ→彩度高めの視野→黒とも呼ぶべき朱、の流れを見ていると、世界観のジェットコースターぶり、誰よりも作者さまが楽しんでおられるのだろうなあ、という感じがします。やばいね! 作中の白眉は、顎の下の自意識という表現でした。いやー、心身ともに肥えていることをそう表現なさるかー……! という。 読後、頭の中にぼとり、ぼとりと肉片がしたたるような、そんな感触の残る怪作です。みんなが寝静まった真夜中に読むのがおすすめですよ!(爽やかな笑顔) レビューいいね! 3 2020年1月30日 11:13