《おまけページ案と弟子 ~サヨナ日記~》④


「さて、いよいよ最後となった暴露型自慰コーナー、その名もサヨナ日記!」

「わたしが自慰行為をしているみたいな取られ方されるのでその言い方はやめてください」

「してないのですか!?」

「している前提で口を開かないでくださいよ!! 回答するわけないでしょう!!」


「キャラプロフでもあったように、サヨナくんの数少ない趣味の一つが日記を書くこととなっています。しかし本編では微塵もそのような描写はありませんでしたねえ」

「基本的に夜寝る前に書いてるんです。でも作中だとそういう寛いでいる場面は面白くないから無条件でカットされました」

「まるでとっとこ歩くハムスターの飼い主のようだ」

「夜日記書くキャラで最初に浮かんだのがそれ!?」


「本来の狙いでは本編の各エピソードにおける後日談的な位置付けだったのですがね」

「そのエピソードが終わった後の夜に書いているので……。それに、日記を書いた後はよく眠れる気がするんですよね!」

「ブログかツイッターで良いのでは? 寝転んで触ってたらそのうち寝れますよ」

「ファンタジー世界なのにベッドの中でスマホいじりながら寝落ちするヒロインとか嫌過ぎるんですけど……」

「スマホ姫子とか呼ばれそうですねえ」

「呼ばれませんよ!! 何ですかその……こう……一姫二太郎的なのは!?」

「緊急回避したらギリギリ掠った感じですが、まあこれ以上は何も言わないでおきましょうかね」

「わたしが負けた感がすごい……! 悪いの先生なのに……!!」


「ではサヨナくんが夜中にシコる前書いたらしい日記をつまびらかにしていきましょうか」

「だからシコってねーよ!!!!!!!!!!!!」


(シコはお前だろうが)


「これは天の声……まさかユージンくん!?


 説明しよう! サヨナくんだけだとツッコミの幅が狭いので、書いている内にどんどんユージンくんを身体が求めてしまうのだ! なんて罪な男! 陰毛!」

「全部自分で言ってますけど、最後の唐突な謎の罵倒が本人に知れたらまた顔を潰れたパンみたいにされますよ……」





『サヨナ日記① 弟子入り一ヶ月目』


チャース・ノーヴァ国から命からがら脱出しました。死ぬかと思いました。

何で日記の書き出しがこんな悲惨なんだろう……。

先生は《救水》に男女差があることを知り、何とも言えない表情をしていました。

作っている過程で普通に気付くと思っていたのですが、本当に気付いていなかったみたいです。

…………。

先生は頭がいいけど、バカなんだと思います。

ばーかばーか!

……むなしい。

いつか面と向かって先生を罵倒出来るよう、努力を重ねていこう……。

ああ、あのアイスマンについては特に言うことはないです。もう忘れました。




「これは――便所の落書きですかね?」

「匿名掲示板的な扱い!? し、仕方ないじゃないですか! 日記で多少先生をバカにしても!!」

「弟子になって一ヶ月で既に僕へ面従後言……これは許されない。今後日記を書いたら僕に見せて下さい」

「ええーっ! 嫌ですよそんなの! プライバシーの侵害!!」

「ちょっと全文朗読する程度ですので」

「ガッツリいってますからそれ!! ハイパー化した本山らのさんの生放送!?」

「一度出たからと言って二度もネタにするのはダメですよ、サヨナくん」


(ハイパー化にツッコミ入れろや)


「これはユージンくん……まさか声!?」

「練度が低いと時折こういう低レベルな掛け合いが発生するのを何とかしていきたいですよね」





『サヨナ日記② 弟子入り』


自分が何をやったのか、どんなことを思い感じたのか、それらを忘れないために、ユージンさんにお願いして日記帳を仕入れてもらいました。

これからはなるべく毎日コツコツと、寝る前にでも日記を書いていこうと思います。

先生は変人で変態で偏屈……とまではいかないけれど、とにかく変です。

ただ、その実力は本物で、きっと賢勇者であることも間違いないのでしょう。

一方で神は二物を与えずという言葉があるように、恐らく神は先生に類稀な才能を与えた代わりに、常識とかマナーとかを奪っていったんだと予想します。

これから先、まず間違いなくわたしは苦労するし嫌な思いもするだろうけど、それでも頑張っていこうと思います。

見守っていてね、おねえさま。



「君はこう……日記に僕の悪口を書かないと眠れないのですかね?」

「ち、違いますってば! 言うほど悪口じゃなくないですかこれ!?」

「まあ今回はいいでしょう。しかし、地味に日記帳をユージンくんから買っていたり、『おねえさま』の話が出ていたりと、この日記だけで世界観の広がりが見えますねえ。なんて無駄なことを」

「感心したのかと思ったら最後に全否定しないで欲しいんですが……」


「……でも先生は絶対に普通の人じゃないですからね? そういう意味ではこれは悪口じゃなくて、頑然たる事実を記述しただけです!」

「いやいや、僕はちょっと他の人より裸になることに抵抗がなく、女体が好きで、大体何でもこなせる顔と頭の良い天才なだけですよ? 普通です、普通」

「何かやっちゃいました系主人公路線に舵切りした……!!」





『サヨナ日記③ ペットとは』


マスコットキャラクター的なペットが増えました。

こう書くと、何だか手に収まるサイズのふわふわもこもこしたキュートな生き物でも飼ったように見えますが、実際は出る度に8行消費するとんでもない何かの世話係になっただけです。

なので、今回は飼育日記となります。

まずアレ……名前が無いのでアレと呼びますが、アレの餌は何でもいいそうです。

今日は昨日のシチューの残りをバケツに入れて持っていきました。どうやって食べているのか気になったので、ジッと見ていたら「見ないで係」とか表示されていました。

仕方ないので目線をそらしたら、いつの間にかシチューはなくなっていました。

口にあたる部分はどこなんだろう……。

その後はブラッシングとして、デッキブラシでゴシゴシとこすりました。「快楽係」とか出ていた気がします。非常に分かりやすいです。

身体にあたる部分はどこなんだろう……。

去り際にチラッと見ると、「乙係」と出ていました。この前までは「お疲れ様係」でした。

……ちょっと仲良くなったみたいです。

段々アレが可愛く見えてきた自分が怖いので、飼育日記は今回限りにします。



「本編ではまるで描写されませんけど、ちゃんと世話はしています!」

「情操教育として生き物を飼うことは非常に効果がありますからねえ。アレをサヨナくんに世話をさせることによって、君が優しい心を培っていくのは何よりです」

「いやわたしデフォで結構優しいですよね?」

「『話が進むにつれてどんどん性格がブスになっていく』とは誰の弁でしたっけ?」

「誰も言ってないですよそんな無礼なこと!!」

「二話の君と六話の君はもう同一のキャラには見えませんから」

「それは純粋に有象あいつの技量の問題では……?」


「でも意外とアレが可愛いのは本当なんですよ。こう、知能がある分よく懐いてくるというか、マスコットキャラクターとして見たらアレですが、ペットとして見たら存外優秀なのではないかと思います」

「ではグッズ化する際はどういう形式にしましょうかね?」

「いきなり即物的な話はちょっと……。無難にキーホルダーでいいんじゃないですか?」

「抱き枕カバー、ぬいぐるみ、木刀辺りが個人的には」

「木刀!?」

「電撃文庫の住所が彫られた、修学旅行生向けに飯田橋駅前で売る感じの木刀です」

「ろくな思い出が作れそうにない……!!」





『サヨナ日記④ 先生が死んでいた』


朝起きたら先生が死んでいました。

いや……わざとキャッチーな書き出しを狙ったわけではありません。本当なんです。

詳しく言うと、祭りの優勝賞品である本の隣で、裸の先生が倒れていました。

先生の死に顔は、満足そうで誇らしげでこの世に悔いは無さそうでした。

とはいえ驚いたわたしは、あの喋る本にどうすればいいかを聞きに行きました。

そしたらあの本曰く「何とかなるじゃろ」とのことでした。

何だそりゃと思い、しかしお腹が空いたので「先生ごはん」と呟くと、先生はいつの間にか復活していて、朝食の準備をしていました。

何とかなってました。

オチとかはありません。


…………先生って人間じゃないのかな…………。



「死にました」

「事後報告することによって存在矛盾が……何で生きてるんですか」

「あらゆる異界のドスケベ本を読むまでは――死んでも死にきれねえのでね」

「最初はギャグだったのに途中からバトル漫画にシフトしそうなセリフ……」


「ところでサヨナくんはどの快楽天が好きですか?」

「さっきからヒロインに投げてはならない質問だらけなんですけど!? 『どの』って何ですか!?」

「実は快楽天にも色々と種類がありまして。ロックマンエグゼがそれまでのプレイスタイルによって中盤スタイルチェンジをするように、快楽天も読者の欲望ニーズによってその形を変えているのです」

「どういう生き方すれば快楽天とロックマンエグゼを同時に並べ立てるような思考になるんだろう……」





『サヨナ日記⑤ 狂気』


何あの頭のイカれたおっさんは!!??


ああああああああああ!!!


(以降文字が乱れている為判読不可)




もう寝ます



「ガチでわたしあの人嫌いです」

「ダメですよ、ヒロインであるからにはどんな人とも仲良くしないと」

「いやアレと仲良くしたら絶対わたしは『なかよし』されるだけでしょう!?」

「『ちゃお』されるかもしれませんし、『りぼん』される可能性も捨て切れないので、想像の中に『花とゆめ』が広がっていく」

「マーガレット!!」※怒声の一種


(こいつら怖いもんねえのか……?)



「あらゆるエンタメが氾濫しているこの現代社会において、キャラクターの類似性というのは避けられない問題の一つです」

「急にどうしたんですか? また風刺ネタですか?」

「その多くのキャラクターが存在する中で、会長は恐らく唯一無二にして絶対の存在――言うなれば本作の顔のようなものです」

「顔じゃなくて恥部そのものですよあいつは!!」

「今後、ライトノベル業界において会長のようなキャラクターがスタンダード化していくことを、カクヨ村の端から切に願っておきましょう」

「あれがスタンダード化したら業界の終わりですけど……」





『サヨナ日記⑥ 親子の仲』


また新たな知り合いが増えました。アーデルモーデルさんっていう人間のクズです。

先生のお友達は大抵の場合が変な人です。先生が変人だから当然だと思います。

まあ、アーデルモーデルさんは変な人ぶっているだけな気もしましたが。

でも、そんな変な人でも人の子であり、なんと美人なお母様がいらっしゃいました。

お母様はアーデルモーデルさんのことを溺愛しているようです。

どんな息子であれ、やっぱり親からすれば可愛く見えるのでしょうか。

アーデルモーデルさんがああなったのは、ある意味お母様のせいなのかもしれません。

決して濁ることのない、親と子の切っても切れないもの……。

そういうものが自分にもあると、ふと思い出しました。

先生の側にいると、つい何もかもを忘れて、先生に甘えたくなります。

今日わたしが行ったのは、王都レオステップです。

次に行くことがあれば、その時は……。




「この日記を会長に読ませてあげたいところです」

「シリってもいいじゃないですか! 最終話前なんですから!!」

「サヨナくんの根っこにあるシリった部分から滲み出るシリ汁が、おまけページであるはずの日記に悪影響を与え、結果としてギャグ小説としては間違った状態に陥っていると言わざるを得ませんねえ」

「わたしが変な体液を分泌してる感じがするのでやめてください」

「でも日記を書いたらどんどんヌルヌルしてくるじゃないですか」

「しませんよ!! 変な脂汗出てるんじゃないですか!? 書きながら罪の告発でもしてるのでは!?」


「せめてアーデルモーデルくんを人格崩壊するまでディスるような日記ならば良かったものの……。何のため、誰のためにエロビ撮影したと思っているのか」

「単にあのキノコの欲望のためでしょう!? わたしを思ってのことではないですよ!?」

「君にはもっと、電撃文庫ヒロインという看板を掲げながらもそういうビデオに出演してしまったという二面性を意識して欲しい」

「結果的にそうなっただけで、別に出たくて出たわけでもないですから!! っていうか結局あの撮影は全部お蔵入りになってるからセーフですよセーフ!!」

「今は別にセーフやアウトの話はしていませんがね? 何を勘違いしているのやら」

「……ッ! ユージンさんッッッ!!」


(俺を壁にしようとするな)





『サヨナ日記⑦ 旅立ち』


先生の弟子になって、もう随分と長い時間が経っていました。

思い返すだけでも色々な出来事や事件があって、そしてそれらを経験した結果、わたしはとても強くなれた気がします。

まあ同じぐらい腹が立ったというのもありますが……これも想い出なのでしょう。

単なる亡国の姫でしかなかったわたしが、賢勇者の弟子という立場になって、そこから得たもの。

きっとそれは、かけがえのないものです。

……わたしは、先生のもとを離れて、おねえさまを探しに行くことにしました。

なのでこの日記を書くのは、これが最後となります。

わたしの決断を、先生はいつも通りののんびりした顔で、頷いて肯定してくれました。

自分で選んだことなので、先生が「行くな」とは言わないのは分かっていましたけど。

これからわたしがどうなるのかは、全く分かりません。

本当におねえさまがどこかで元気にしているのかすら、定かではないからです。

でも、全く分からないということは、あらゆる可能性があるということだとも思います。



追記として……この日記を先生が読んでいると信じて、改めてここに記しておきます。

わたしは、先生の弟子になれて、幸せでした。




「ああ……なんて健気で可愛いわたし……。フォーエバー……」

「これはもう、このライトノベなんとかがすごなんとか201なんとかのヒロイン選挙で見事選外にランクアウトしてしまいますねえ」

「伏せる努力すらしてない!! っていうか選外にランクアウトって何ですか!? それは存在しないも同然ですよね!?」

「君が思い上がったことを言うと、僕は全身全霊を懸けて叩き潰さないといけないのでね」

「……好きな子にいじわるする的な?」

「昆虫の足をもぐ的な」

「残酷キッズ……!!」


「この日記を読んだら、わたしが先生のことを敬愛していることが伝わるはずなんですが……そういうのは一切感じない、虫のような男なんですか?」

「虫扱いし返す辺りに君の底意地の悪さが見える」

「徹底的にわたしをこき下ろす覚悟を感じる」

「……まあ、改めて言うことではありませんからね。君のことを疎ましく思っているのなら、そもそも樹海に放り出してますし。本作全体を通して現れている、我々の師弟愛は疑うべくもありません」

「先生……」


「どうせ2巻も出ないですし、本編ラストも日記のラストも適当にええ話で終わらせとけ精神の産物ですから」


「台無し!!! いやまあそうなんですけど!!」

「今後我々の活躍の場は、この場末のカクヨ村の端っこになります。本編ではNGを出された君への悪辣な罵倒も、ここでは誰の検閲も入らないのでガンガン行っていくつもりなので、今後ともよろしくお願いします★」

「隔離病棟……!? よろしくしたくない……」





「というわけでダラダラと続けたおまけページ案でしたが、以上を持ちまして全ての演目が終了となりました。お楽しみ頂けたでしょうか?」

「どれもこれも、まともな思考で考えればボツも当然といった感じでしたね」

「やはり編集という存在は出版において必要である、ということがよく分かって頂けたかと思います。それを読者の方々へ伝える為の短編でした」

「今考えた嘘なのに、よくもまあ堂々と……」


「さて、次回更新は完全に未定ですが、ボツネタ集でもやろうかなと思っています。ただでさえ際どい製本版、しかしそれ以前はもっとキワキワであった――という一端を、バレたら怒られる程度にご紹介予定!」

「書き手がマゾだと怒られることに抵抗がなくなるからブレーキ壊れていくんですね」

「文筆業界の歪みです」

「個人の性癖を業界全体のせいにしないでください」



《おわり》

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