《エイプリルフールと弟子》
「本日は重大発表がありますので、箇条書きにてまとめました」
・祝! 一巻&二巻重版決定!
・祝! コミカライズ化決定!
・祝! アニメ化決定!
「何ともめでたいことです! 温かい拍手をどうかお願いします!」
「いや……これ……」
「どこから触れりゃいいんだよ」
どこをどう触っても悲しみの大火傷が約束されている。
しかしツッコミを入れざるを得ないので、サヨナもユージンも一つずつ課題消化していくことにした。
「こんなデマ誰が信じるんですかね……」
「エイプリルフールは面白い嘘とかギリギリ信じてしまいそうな嘘を言う日だぜ?」
「面白くて信じてしまいそうな嘘ではありませんか!」
「見ただけで明らかにガセって分かるつまんねえ嘘だよ!!」
「先生はエイプリルフールを一年で一番自虐出来る日って勘違いしてません?」
そもそも普段から似たような自虐を繰り返しているので、信じる信じない以前の問題かもしれない――
「我々もエイプリルフールを楽しんでいる方々と同じように、何かこう……世間に迎合した企画をやりたかっただけなのに!」
「そういうのは売れてる作品とか人気ある作品とか、そもそも何か後ろ盾があるような作品がやるような企画なんですよ……」
「個人でやっても虚しいったらねえな」
じゃあもうエイプリルフールって企業戦略の一環であり、我々のような民間人が気軽に楽しんでいい日ではなくなってしまうのではないだろうか?
いや、企業戦略としてのあらゆるジョークを受け取って楽しむ分には構わないが、そもそも我々が嘘をついてもいい日にも関わらず、ちょっと何か言っても「ああ滑ったわこいつ」みたいな空気になるのはどういうことなのか?
それはつまり恵方巻とかバレンタインデーとか、そういう金が絡んだ強引に流行らせようとしているしょうもねえ文化と同じではないのか?
売れてねえクソ作品とクソ作家がエイプリルフールネタで盛り上がるのは許されるようなことではないのか?
「エイプリルフールって……クソなのでは……!?」
そうしてシコルスキは真理へと到達した。
更に、賢勇者は真理のその先へと至ろうとしている。
「エイプリルフールって……KADOKAWAの陰謀なのでは……!?」
やっぱり……!!(鋼の意志)
エイプリルフールの出自は全く分かっていないから……!!(Wikipedia調べ)
「危うくエイプリルフールだからといって無理矢理に短編を書いて世間へ合わせようとしてしまうところでした……。それがKADOKAWAの薄汚い陰謀だと気付かぬままに……」
「お前のその発言が一番エイプリルフールっぽいから何も言えねえわ」
「エイプリルフールからエイプリルを抜いただけな気が……」
価値観が540度ぐらい変わってしまったので、シコルスキは慌てて情報の訂正を行うことにした。
「たまにエイプリルフールネタと思わせて、実は一個だけガチネタでした~★ みたいなことがあると思いますが――」
「あらゆる年間行事にかこつけて喧嘩売れそうだなお前……」
「――本作に限ってはそんなことはありませんので悪しからず……!!」
「何でエイプリルフールネタなのに嘘であることを念押しする流れになるんですかね……」
つまるところ、既刊は全く重版なんてしない上に、大体二巻は大して売れていない、そしてコミカライズなど企画すら動いていない(打診すらされていない)、アニメ化など夢のまた夢過ぎて口に出すだけで胃酸が喉まで上がってきて逆流性食道炎になってしまう……ということである。
「つまり普段通りというわけですねえ」
「もうこの手の自虐に対して悲しいとかそういう感情を抱かないことが一番悲しいわ」
「飽き飽きするレベルですよね……」
「しかし最後はエイプリルフールらしいことを言ってお別れしましょう――」
「――我々はKADOKAWA及び電撃文庫編集部がだ~い好き♡♡♡」
「お……面白くて信じてしまいそうな嘘……!!」
「嘘はマズいだろ」
《おしり》
※皆さんは正直に生きましょうね
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