《ぼくのかんがえたさいきょうのにかんと弟子》

「祝! 賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求、第二巻制作決定!」

「やりましたね先生!」

「良かったな」

「では今回の趣旨ですが、僕とサヨナくんとユージンくんの三人で、本作一巻において無残にも散っていった没ネタを回顧していきます」

「切り替えが早すぎる!! 今回予定してたそれやらないですよね!?」

「嘘でもいいから多少は喜べよ!!」

「二巻を出す気苦労の方が多いのでね……」


「いやでも、存在が打ち切りラノベだったこの打ち切りラノベが、まさか二巻打ち切りラノベに進化するだなんて誰も予想していなかったじゃないですか! 打ち切りラノベのくせに! わたし最初にこのラノベのタイトル見た瞬間「ああこれは打ち切りラノベだな」って思いましたもん! 愛弟子サヨナって部分以外が特に打ち切りラノベ!!」

「その単語を連呼するなクソ弟子!! つーか愛弟子サヨナの部分も死臭がすげえわ!!」


「本当は諸手を挙げて続刊したかったのですがね。重版さえかかれば遠慮なく続刊になったものを……」

「打ち切りって単語は連呼出来ても、重版って単語を口にするだけでわたしはもう涙が……」

「暗いんだよお前ら……。もう素直に喜ぼうぜ? 二巻だぞ二巻! 十倍だぞ十倍!(意味不明)」

「どうせ二巻で打ち切りになるなら、上下巻構成にした方が格好付く気がします!」

「良い案ですねえサヨナくん! では今から全力でKADOKAWAに本作一巻のマズい部分を通報し、出回った市販分を自主回収させた上で、改めてタイトルを上巻に変えて再出版しましょう!」

「そこまで盟主KADOKAWAに迷惑かけたらこの本の存在ごと消されるわ!!」


「そもそもどうやったら三巻以上出るんですか? ライトノベルって」

「無論、盟主KADOKAWAに捧げる袖の下次第ですよ」※賢勇者個人の見解です

「やっぱり汚いお金が動くんですね……」

「『やっぱり』って何だ『やっぱり』って!! 汚えのはお前らの思考だよ!!」

「因みに本当の解答は売上ですので」

「なら袖の下説の方がまだワンチャンあるじゃないですか!」

「クソッ……! 一理あると思ったから何も言えねえ……!!」


「とはいえ、読者の皆様の応援で二巻の制作が決まったのも事実! というわけで、生まれた瞬間から本作を忌み子として葬っておきながら、多少の心境の変化により気紛れで一巻分延命させたダークネクロマンサー電撃文庫編集部に向かって、一日一回中指を立てて敬礼しましょう! あざっした!」

「その指立てたらあらゆる敬意が悪意にコンバートされるわ!!」

「お礼の言葉もフェザー級ですよ……。軽すぎる……」

「あぁーっしぁ!」

「顎使って喋れ」



「えー、それでは今回の本当の趣旨である『どうすれば二巻が面白くなるのかを我々で真剣に討論する会』を始めたいと思います。じゃあサヨナくん! 君の考える二巻のコンセプトは?」

「ずばり『異世界転生』ですね」

「やめろその単語を出すのは!!」

「ほほう、異世界転生ですか。それはやはり……」

「はい。まずはわたしが二巻の冒頭から知らない異世界に飛ばされるんです。そこでわたしはとある冒険者グループに拾われて、パーティーの一員になるんですけど……」

「速攻でヤリ捨てされる、と」

「されませんよ!!」

「いや今の流行を追うならサヨ嬢は即ヤリ捨てされた方がいい」

「まるでタピオカのようなヒロインですねえ」

「社会風刺を交えないでください!! もうこの話題はおしまい!! はい次!!」


「ではユージンくん、君のコンセプトは?」

「やっぱ路線変更っつったら『バトル』しかねえだろ。俺ら全員にステータスとスキルを設定して、とりあえず何かドラゴンとかベヒーモスあたりと戦おうぜ」

「路線変更するのは確定なんですか!?」

「最初に路線変更路線を打ち出したのは君ですよ」

「つっても俺らは元々終盤のシタン先生並に強いから、二巻のラストに神を殺す方向でいく」

「同じ巻なのにもうエベレスト級のインフレが……!!」

「その後仮に三巻が出たらどうするつもりで?」

「んなもん唐突にトーナメント開催するに決まってんだろ」

「急速にジャンプ漫画の道筋を辿り始めた!!」

「結局三巻打ち切りにしかならなさそうですねえ」


「うるせえな! そう言うてめえは何か良い案あるんだろうな!?」

「わたし達があっと驚くようなものを出さないと許しませんよ!」

「僕が考える二巻のコンセプト――それは『読者への感謝を忘れないこと』です」

「あっ」

「おうパチ屋の広告みたいなこと言うのやめろや」

「一瞬良いと思いましたけど、冷静に作風を鑑みると半紙より薄っぺらいコンセプトですよ!」

「バレましたか^^;」

「殺すぞ……!!」

「殺意だけでゴリ押しのツッコミ出来るのはユージンさんの強みですよね本当に……」



「次のお題に移りましょう。『二巻でやりたい話』! ではユージンくんから!」

「大体何やっても俺は被害を食うから何もやりたくねえわ」

「話にならない話!?」

「そんなヒネ始めた中学生ライクな意見は却下です。ちゃんと考えて下さい。もう良い大人でしょう? アーデルモーデルくんじゃないんですから」

「説教カマすな俺に!」

「予期せぬところでアーデルモーデルさんがディスられてる……」

「……まあ俺は行商人だからな。ってなると、『俺らで金儲けする話』とか面白そうじゃないか?」

「君の行商人設定は本作で一、二を争うレベルで触れられない超絶死に設定ですよ」

「一巻のユージンさんって端的に言うと『先生に全裸で召喚されがちなクッソ強い化物』でしかないですもんね。どの辺りが商人なんだか……」

「隠し召喚獣か何かか俺は?」

「とはいえ貴重な意見として、プロット風にまとめておきましょう」


①お金儲けの話 シコルスキ、サヨナ、ユージンがメイン

 オチは大体ユージンを裸に剥いた後シコルスキが殴られればなんとかなる


「こんなクソみたいなプロットで本作ってるんですかあの有象ゴミは!?」

「ToLOVEる的なお色気オチやめろや!! 男だしよ!!」

「大丈夫ですよサヨナくん」

「何がですか……」

「元々本作は全文プロットとか作らずに勢いで書かれているので」

「だからバグの温床みたいな出来になるんですよ!!」

「二度とプロを名乗らせんなよあの有象カスに!!」


「次はサヨナくんの番ですよ。どういう話が良いですか?」

「結構悩んだんですけど……やっぱり『淡いラブストーリー』ですかね。当然、主役になるのは先生ではなくわたしで、内容としてはとある依頼人と禁断の恋に落ちる弟子に対し、嫉妬心を隠せない(後略)」

「雑音ッ!」

「容赦ねえなお前……」

「最後まで言わせてくださいよ!! Word5p分ぐらいのあらすじを語るつもりなのに!!」

「お前それ文庫本換算なら10pだからな?」

「クソな意見ですが、一応プロット風にまとめましょうか」


②獣姦 サヨナ 馬

 馬とサヨナがヒヒーンする話


「話を聞いてないどころか全てを改竄された!?」

「袖の下を百回通しても電撃文庫じゃやれねーよこんな話!!」

「では犬でも可です」

「相手役の話じゃないんですけど!? ていうか仮にも正ヒロインたるわたしに対して、よくもまあこんな無礼なものを押し付けましたね! 次回は法廷でお待ちしておりますよ!!」

「何か意地でもラブコメ展開はしない鋼の意志だけは伝わったわ……」


「最後は僕ですね。僕は君達と違って、真面目に二巻でやるべきエピソードを考えました」

「ホントですか……?」

「もうお前を殴る予備動作に入ってるぜ? 俺はよ」

「ズバリ! 『電撃文庫の沿革を一緒に学んでいく話』です!」

「学研まんが!?」

「靴まで舐める覚悟か!?」

「それをプロット風にまとめるとこうなります」


③高級料亭 編集部 斡旋 大回転

 ええ娘仕入れておきましたで電撃文庫編集部はん! よろしゅう頼んますわぁ~


「沿革でも何でもねえだろこれは!! 裏接待的なアレだろ!!」

「袖の下ならぬ股の下です」

「もう先生やめてください!! カクヨ村まで追い出されたら遂に我々の居場所が無くなる!!」

「時折ここを編集に覗かれてるって分かってんのかお前は!?」

「だからこそじゃないですか。まだ牙は抜けてねェぞという遠回しなアピールです」

「歯科検診気分!?」

「そういうスタンスだから電撃文庫公式連載に呼ばれねえんだよ」



「というわけで、様々な意見が出ましたが、最後に二巻に向けての意気込みをそれぞれ語っていきましょうか。やる気に満ち満ちているアピールは大事ですからねえ」

「アピールするしない以前に、商業でラノベ出すならやる気出すのは当然なのでは……」

「意気込みって言われてもな……。まずいつ出るんだよ二巻は」

「次のハレー彗星が来る頃です」

「2061年じゃねえか!!」※予測ではそうらしいです

「年齢的に間違いなくそれが有象アイツの遺作になってますよ!!」

「そもそも一冊出すのに40年以上掛かるとか遅筆ってレベルじゃねえわ!! パソコンの前へ座った瞬間に時止められてんのか!?」


「文句の多い二人だ……。じゃあもう意気込みとかぶっちゃけどうでもいいので、そろそろ纏めに入りましょうか」

「なら何でわざわざ聞いたんですかね……今必死で意気込み考えてたんですけど」

「意気込んだところで売上には関係ないからだろ」

「意気込んだところで売上には関係ないからです」

「な?」

「息ピッタリですね……意気だけに」


「シリーズの続刊というのは一巻の売上から目算して、大体どのくらい売れるのかが事前に数字が予測されるそうです。それでいうと本作は確実に三巻が出ないので(爆笑)、次こそ本当に真の最終巻となります」

「本当に爆笑なんですか? 爆泣とかじゃないんですか?」

「そもそもここまで徹頭徹尾後ろ向きな宣伝回をするなよ……」


「世の中には毎日暗いニュースが多いですし、誰もがただ生きていくだけで心を痛めていくでしょう。更に、ライトノベルという娯楽も、恐らくはどんどん終焉に向かっていると思われます。しかし! それでも本作はその終焉を迎える前に、世に出ることが出来ました」

「最後だけちゃんとした語り口に……」

「吉本新喜劇の終盤か?」


「はっきり言って、ギャグ小説というものは割に合いません。作る方は精神を病むぐらいに疲弊し、売る方は大して売れないので色々ペイ出来ず大損! だから今の時代は大人しく異世界転生するか、もしくはラブコメしておけという話なのです!」

「いやちゃんとしてないですねこれは とりあえず生ビール感覚で喧嘩を売ってますね」

「言っとくけどもう二度とその二つのジャンルで新作書かせてもらえねえからな?」


「それでも! 読む方が少しでも笑顔になれるのならば、それこそが本作の存在意義だと思っています。たとえ満開の花畑にならなくとも、荒れ野に一輪でも花が咲いたなら――暗い世の中に疲れた読者へ笑顔を届けられたのなら! 有象の作家生命が心肺停止しようが、土屋と阿南の首が明後日の方向へ飛ぼうが、ネット上でKADOKAWAアンチが大量に増えようが、最終的に電撃文庫の評判が地に落ちようが、そんなことは些末なことだとは思いませんか?」

「思わねえよ!!!! 特に後者二つ!!」

「それを些末と思うのは元々ラノベに無関心な人だけでは!?」


「正直一巻で大体のネタはやり尽くしましたが――まだまだギャグ小説というものには可能性が眠っているのも事実です。ただ岩盤が硬すぎて誰も積極的に掘らないだけなのです。本作二巻はその岩盤を再び突き破って、アマゾンレビューにて『二巻も普通に面白かった!』or『一巻とほとんどやってることが同じでつまらなかった 金返せ』という感想を頂けるよう、そして真の最終巻の名に恥じないよう、現在も鋭意製作中です!」

「両方のレビューを表示しなくていいですから!! 何でいちいちマイナスの思考を!?」

「未来にされるであろう低評価レビューに今から牽制球を投げんな!!!」


「果たしてサヨナくんはわくわく冒険ランドするのか? まともな女性キャラは増えるのか? 一巻のキャラクターは誰が続投するのか? 現時点で明かせる情報は残念ながら何もありませんが、きっと一巻を読んだ方が満足出来るような内容になるはずです! 乞うご期待!」

「……何で何も情報が明かせないんです? ちょっとぐらいならいいのでは?」



「いやまだ何も書いてないので」



「じゃあもうこんなSS未満の駄文を必死に書いてる場合じゃないですよ!!!!」

「散々煽るようなことばっか言って何だそのオチは!!?」

「言う分にはタダですし、期待を煽るのもタダなのでね」

「死ねやもう!!!!!!!!!!!!」



《おしまい》








作者注:ちょっとは書いてます




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