第5話

 すぐ目の前まで、空中に浮くカプセルが迫った。私は、飛行甲板が見渡せるデッキに出ている。

 赤城には、轟音が鳴り響き、飛行甲板には風が吹き荒れている。カプセルは、上部に円盤のようなものが取り付けられており、それが当たらないようにするためか、艦橋から離れた艦前方の飛行甲板に着艦した。

 奇妙な機動音が段々と、低い音になる。すると、気付いたのだが上部に取り付けられていたのは円盤ではなく、何枚かの細い平麺のようなものだった。それが、完全に止まりきる前に人が出てくる。

 カプセルは既に、帝国海軍水兵が取り囲んでいる。出てきた人は……武装をしている?!全体的に黒い戦闘服を着ていて、鉄帽をかぶり、マスクかなにかで顔が隠れるようにしている。持っている武器は、狙撃銃程で“最新鋭”という言葉では言いくるめることが出来ない。とても、今水兵が持っている武器では対抗できない代物だろう。

 戦闘員だけかと思ったが、最後に帝国海軍と同じような白い制服に身を包んだ女も出てきた…女?!!戦場に女か?あり得ない。何処の馬鹿だ。女を戦わせるとは……

 水兵達も戸惑っている。こんなところで女と会うとは、夢にも思わなかったからだろう。

 だが、南雲司令長官はそれを気にすることが無いように接触をした。実際に気にしていないのかもしれない。先程の戦闘員は、女の後ろに並んだ。戦闘員は、三人のようだ。

 会話がこちらまで聞こえてきた。


「日本国海上自衛隊護衛艦隊第一航空護衛隊汎用護衛艦『しらぬい』副長、磯部いそべ芳美よしみ二等海佐。」


敬礼したように見える。


「大日本帝国海軍連合艦隊第一航空艦隊司令、南雲忠一。」


南雲司令長官が、帝国の威厳を見せつけながらおっしゃった。


「な、南雲…忠一……司令…?」


何やら、女、磯部芳美の言葉が詰まった。戦闘員らは、帝国軍人さながらに敬礼する。


「これが現実なら大変なことだ!急ぎ、『あかぎ』に連絡!にバレる前に、東京湾にいれた方が良いと!」

「了解!」


 急に、磯部芳美が取り乱し始めた。戦闘員が、カプセルに駆け寄る。


「あかぎからです!間もなく、そちらの艦隊と合流できる。説得を頼む。とのことです!」


カプセルに駆けていった戦闘員が、カプセルから顔を出して叫んだ。


「南雲司令長官。お願いです。真珠湾には行かずに、横須賀に戻ってくれませんか?お願いします!!」


 磯部芳美は、九十度になり得んばかりに礼をした。

 私はふと、海洋を見た。すると、既に駆逐艦には囲まれ、特異な形の航空母艦のような水上機母艦のような艦に睨まれていた。どうやら、目測を誤っていたらしい。駆逐艦の大きさに見えた艦艇は、実際は巡洋艦程はある。だが、艤装が砲一門だけだ。機銃も少ない。特型駆逐艦のような、超重駆逐艦なのだろうか。はたまた、支援艦なのだろうか。


「色々、話が聞きたい。分かった。横須賀に戻ろう。この調子じゃ、連合艦隊司令と通信は出来ないだろう。そうだよな?」


 南雲司令長官は、そう仰った。と、同時に、艦橋から走ってきた通信手に目をお向けになった。

 しばらくして、複縦陣を組んでいた航空母艦の前と左右に、艦種不明の特異な艦。航空母艦を囲んでいた護衛艦を、巡洋艦程の大きさを誇った艦が囲んだ。横須賀に接近するまでは、帝国海軍の赤城が指揮をって良いらしい。

 何故、接近したら指揮を移すのだ?横須賀くらい知っているのに。……あと、さらっと受け流していたが、山本長官との通信が不可能?!一体、何が…

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