第15話
「まや、被弾したと思われる!」
遂に被害が出た。
あかぎは旗艦だ。早急に被害状況を集計、上に報告する必要がある。
だが、そんなことは許すまい、と暗示しているかのように報告が入った。
「敵航空機!急上昇!!爆撃が…来る!」
報告した隊員の声が裏返った。その隊員は、発狂し床に頭をつけた。頭を手で覆い、完全に軍人だということを忘れている。
だが、この隊員は勘違いをしている。
「この
あれは雷撃機だ。南雲司令長官が代弁してくださった。
すると…
〈艦橋、CDC。魚雷音聴知。魚雷、数不明。右舷より真っ直ぐ近付く。恐らく無誘導。〉
やはり。
伝声管と
〈……艦橋、CDC。早期の応答を求む。……艦橋?…先の爆発音は我が被弾したのか?!〉
隊員が応答しようとしない。下士官はおろか、艦長や最上海将までも動かない。帝国ホテルで雑談した時の、「戦ったことは無い」というのは本当だったのか?
"戦争"というものを初めて目で見て、体で感じ、完全に思考が停止している。指揮官がやられたら、下はどうすれば良いのか?
流石に見かねた私は、久しく足を動かした。先程連絡の際に隊員が使っていた黒い物体を手に取った。レバーのような部位があったので、押してみる。
どうやら、起動レバーとみて間違いないらしい。
〈艦橋?!艦橋?!生存者は?!〉
相手からの反応もあった。
少し緊張してしまったが、構わず話した。
「CDC…とやら。私は、大日本帝国海軍、鈴木だ。全員、存命はしているが、心
〈大日本…?〉
私は、何か伝えることがあるか否かを問うために、長谷川艦長に顔を向けた。
「あかぎの指揮権を頂きたいかな。この方たちじゃ、役に立つか…」
長谷川艦長に合わせて、私もあかぎ参謀各位に目を向ける。艦橋に
また、CDCと話すため艦首に向き直った。
自然と眼下に羅針盤が入った。
先程までの進行方向とは、二百度程度も違っていた。魚雷も、もう既にこちらに到達している
南雲司令長官の血も滲む指揮や、それに合わせる操舵士の労働の結果もあって私たちは生きていられる。そもそも、赤城とは段違いの速力と機動力を持つ大型艦を、いとも簡単に操るどころかコツさえつかんでいるように見える南雲司令長官には、本当に頭が上がらない。
「指揮権を…あかぎの主導権を貰いたい。」
〈は…え?〉
「此処の参謀は今、役に立たない。勿論、戦闘が終われば返還する。」
〈えっと…と、とりあえず、二分程前に艦橋に向かった者が一人おりますので、その人にマイクを渡してください。〉
すると、丁度艦橋に鉄板が叩かれる音が聞こえてきた。CDCから隊員が到着したようだ。
「え…う、そ、だろ…」
右舷の窓から見える艦、まやが炎上し明らかに右舷に傾いているを見た隊員は絶句している。
その隊員の頬に一筋の
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