三戸ってどこ? 1-3

悟と善兵衛は、三戸城に日が暮れる前に到着した。

「へぇ〜、本当の時代劇みたいだ」

周りの家は、時代劇で見た風景そのままだ。

ただ時代劇の家よりも汚れやボロが目立つ。

それは本当に人が住んでいる証拠だろう。

道行く人々は、不審な目を悟に向けている。

無理もない。

悟の格好は、Tシャツと短パンという、夏休みの少年そのままの格好だからだ。

「さてと宿をとるか」

善兵衛は軽い足取りで歩いて行く。

悟も運動神経には自信がある方だったが、ここまでの道のりでクタクタになっていた。

この時代の人々は、現代人よりも体力があるのかなと思った。


善兵衛がとった宿は、小さいが清潔だった。

「サウナだ!!」

「なんだそりゃ?蒸し風呂だろ」

悟は風呂といえば、湯船に浸かるのが当たり前と思っていたが、この時代は違うようだ。

「悟。毛穴に気合いを入れろ!

そうすれば悪いものは全部汗で出ていく」

「気合いってどうするのさ?」

「こうだ!ウウゥーー!!」

善兵衛は唸り声を上げた。

2人で唸りながら、汗を流した。

たっぷり汗を流した後、手拭いでゴシゴシと体を拭いていると、本当に体内の疲れが飛んでいった気がした。

晩ご飯は、雑穀ご飯とみそ汁と白菜の漬物だった。

ずっと歩き続けて腹ペコの悟は、ご飯を3杯もおかわりした。

「いいぞ!食え、食え。男なら、たくさん食え!」

善兵衛は笑いながら、悟が食べる様子を見ていた。

善兵衛を見ていると、悟はお父さんのことを思い出した。

悟のお父さんは、善兵衛のように大雑把ではなく、穏やかでいつもお母さんを立てている。

全然似ていないのに、お父さんの面影を感じた。

「どうした?食い過ぎて腹痛か?」

善兵衛が慌てているのを見て、悟は自分が泣いているのに気付いた。

「なんでもない。本当に美味いなあって思って」

「そうか。未来の食い物は、そんな美味くないのか?」

「そうじゃないけど、お母さんの料理はとても好きだけど、なんか上手く言えないや」

「そうか。そうか」

善兵衛は少し乱暴に悟の頭をかき回す。

力強さの中にも、善兵衛の優しさを感じた。

「1人で知らない時代、知らない場所に来りゃ、誰だって怖くなる。当たり前だ。

お前は強い子だ。

それでも、無理はするな。

男は大人になれば泣かないというが、あれはな嘘だ。

泣いている姿を見せないだけだ。

子どものお前が我慢することはない」

そう言って手拭いを渡した。

悟は涙を拭って鼻をかんだ。

そしてニヤッと笑った。

「そうだ!笑え!俺くらいの商人になれば、笑いも売れるようになる。お前も俺も見習って、人に笑いを売りまくれ!」

笑顔の悟から手拭いを受け取ると、鼻水だらけで善兵衛の手がベタベタになった。

それを見て、悟が声をあげて笑った。

「とんでもないものを拾っちまったな。明日は挨拶に行くから、朝早いぞ。落ち着いたら、さっさと寝ろ!」

敷かれた布団は薄かったが、悟はすぐに眠りについた。

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