第13話 衝撃な場面が目の前に・・・
ルカは私の耳元に小さな声で囁いた。
「だめだよ、声を出しちゃ」
そして私の肩をしっかりと抱きしめ、悪戯っぽい目でカーテンの向こうを覗き込んだ。
男の白く長くそそり立ったモノは、その先だけを赤くして光っている。それがとても神々しく、きれいに見えるのは周りの陰毛をすべて剃ってあるからだと気がついた。
「ほら」
私の肩を抱くルカの手に、力が籠った。
男はマー君の足を割り、その間に自分の体を横たえた。
マー君は目をしっかりと閉じ、小さなうめき声を上げた。
この時やっと男のそれまで固かった表情が緩んだ。形の良い唇から笑みがこぼれる。
彼はマー君の両足を取り、水平に広げて高くもち上げた。
女の子のように、あられもない姿態にされた彼の上で、男はゆっくりと腰を動かし、あの長い一物を彼に差し込んだ。
私は思わず息をのんだ。
マー君は小さく叫んだ。
その表情は、私のいる場所からも見ることができた。
そこには苦悩を超えて、歓喜が浮かんでいた ・・・。
「ああ、やめて」
私はつぶやいた。
マー君のあんな顔、私は見たことない。あんな恍惚とした表情を、私に見せてくれたことはないのだ。
ロベルトの固く引き締まった尻がマー君の大きく開いた足の上で、ぐにぐにと動いている。
二人は同時に、うめき声を上げ始めた。うめくことによって、お互いの気分がさらに盛り上がるのだろう、
ロベルトは色白な顔を真っ赤に紅潮させている。
その横顔の造形の美しさに、私ははっきり負けを意識した。
真美、何してんのよ! 怒りなさいよ! あなたの恋人が他の人とHしているのよ!
頭の隅で自分の声がする。その一方で、私はなぜか二人の行為に見とれてしまい、身動きできない。
「おお、こりゃすごいな、こんなのが間近に見られるなんて」
ルカが私の耳元で囁くと、私の腰をしっかり抱き寄せ、太ももに手をかけた。
「ちょっと、やめてよ」
その手を払いのけようとしたとき、二人の男の息遣いが激しくなった。
細身のマー君を組み敷き激しく体を揺さぶる乳白色のマッチョ。それは猛獣が獲物を食いつぶしていく様子に似ていた。
もう見ていられない。
「私、もうだめ」
そう小さくつぶやくと、ロベルトは動きを止めた。
その横顔がふと、こちらを向いたように見えた。
私はルカの腕から逃れ、出口へと走った。
急な階段を無我夢中で降りる私を、ルカが後から追って来た。
屋敷の庭を抜けて、裏口から門の外へ出てやっと、一息つけた。
門の向こうは高い木に囲まれて、あの屋敷は屋根しか見えない。
あそこが、マー君の本当の愛の巣なんだ。
私、いったい何をしにローマに来たんだろう?
彼はまだ私のことが好きだと、なんで思い込んでいたんだろう。
いや、元々この恋は私の独り相撲だったんじゃないだろうか。
マー君は私のことを気の毒に思って、話を合わせてくれていただけなのかも・・・。
門の外は、静かな住宅街だった。陽だまりの中を、速度を落とした車がゆっくりと走り去る。
後ろからベスパを引きずりながらルカが追いかけて来た。
「おい、待ってくれよ。ごめん、ごめん」
私は背を向けて歩き出した。
「ショックを受けたかい」
「まあね」
「俺は君が騙されたままでいてほしくなかったんだよ」
「別に騙されたわけじゃないけど」
道端には花屋が店を広げ、色とりどりの花束が売られている。
こんな気持ちでさえなかったら、私の心はどれほど和むだろう。
「でも君はあの男が好きなんだろ」
私は答えずにうつむいて歩いた。
今はただ、独りよがりな感情に任せてこんなところまで来てしまった自分が、ばかみたいで悲しかった。
(続く)
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