④登場怪獣『メカゴジラシティ』
対ゴジラ兵器として開発されたメカゴジラ。その機体はキャッチコピーなどにおいて『人類最後の希望』と評されていた。
人智を超えたゴジラを倒せるだろう決戦兵器……確かに希望ともてはやされてもおかしくはない。実際に『プロジェクト・メカゴジラ』という前日譚小説では、多くの兵士が「メカゴジラが起動すればゴジラを倒せる。地球が救われる」と何度も言っていた。
そのメカゴジラが二万年の歳月を経て、巨大要塞都市『メカゴジラシティ』へと生まれ変わった。きっと今度こそゴジラを打ち勝つ希望になってくれる……そうハルオ達は信じて疑わなかった。
《二万年と二千年前から愛してるぅ》
しかしそんな時、事件が発生する。ハルオの部下が適当にブラブラした所、妙な事をしているビルサルドを発見。何をしているのかと覗いてみると、
何と「あなたと、合体したい♡♡」とメカゴジラシティに取り込まれるビルサルドの姿が!
理解しがたい斬新なプレイに、部下は見ちゃいけない物を見たような狂乱状態に。すぐにハルオに報告すると彼も動転。逆にビルサルドのガルグとベルベは冷静な態度を取っていた。どうやら織り込み済みのようである。
もちろんハルオは、何でそんな倒錯プレイをする必要があると問い詰めた。すると彼らはメカゴジラシティと一体化してゴジラ勝利の確立を上げようとしているらしく、その為には人の姿を捨てても構わないとしている。
前ページにおいてメカゴジラを『機械仕掛けの神』と評したが、このビルサルドの行為はいわば神の一部になるような物だ。神と一体化して共に生きるなんてのは、創作ではよくある話である(例えば『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画とか。意味合いがちょっと違うが)
またビルサルドは「ゴジラは人では絶対に倒せない。だからこそ人を捨てて同じ存在になればいい」「自分達こそがゴジラ(怪獣)となるべき」とも語った。
彼らはメカゴジラシティを使って怪獣化し、ゴジラを倒そうとしているのだ。この場合『怪獣化』は抽象的な意味合いであるが、簡単に言えばゴジラと同じような存在になろうという訳だ。
それで「自分達こそがゴジラとなるべき」という発言から、『メカゴジラ』という名前は「ゴジラを模したからそう名付けられた」のではない。「ゴジラと同質の存在にしてくれる
つまりこれはビルサルドなりのゲン担ぎ、しかも一体化(怪獣化)を前提にしている事に他ならない。これは対ゴジラ決戦兵器というイメージを抱いていた『プロジェクト・メカゴジラ』の兵士達……そして我々視聴者とは決定的な違いがある。
筆者はこれらの状況から、何故怪獣の姿ではなくシティとして登場させたのか何となく分かったような気がした。怪獣の姿としてのメカゴジラは多彩な兵器を持ち、しかもかっこいい(かっこいい)。
そのまま映画の中で活躍させると、ヴァルチャーのような感覚を抱くはず。そう、「かっこいい!」とか「ロマン!」とか「クール!」とか、ロボットアニメの主役機に抱く印象とかだ。
対してメカゴジラシティは要塞都市の姿。当然だがかっこよくない。しかし上記の一体化とビルサルドの発言とかで言い知れない不気味さが感じられる。さらにシティの姿が無機質で感情が分からないのでなおさらである。
この要塞都市という姿をする事で、「理解出来ない」「不気味」といったおぞましい印象が生まれるのだ。もしメカゴジラの姿でかっこよく活躍させたら、ビルサルドの件とは妙な違和感が生まれてしまうのかもしれない(決して怪獣としてのメカゴジラを貶している訳ではないので悪しからず)
この「不気味」という感情はハルオ達も抱いていた事だろう。期待をしていたメカゴジラシティとビルサルドを拒絶するかのように批判を掛ける。
それに『怪獣惑星』で説明したように、彼は良くも悪くも人間の尊厳を重視している。シティと一体化なんて以ての外だったかもしれない。
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