Episode03 新たな戦いですか?(後)
佳奈達はそれぞれの戦闘配置につく。佳奈を中心として右やや後方に凛果、左後方から大きく間を空けた場所に愛華。
凛果は雷の魔法の使い手である。両手から迸る雷のエネルギーを生み出すと、片膝をついてそのまま地面に掌を下ろす。すると生成された雷フィールドがガラゴスのいる地面にまで伸びていき、雷撃がフィールド中を駆け巡った。
「先手必勝とはこの事ですわ! 雷のお味はいかがかしら?」
だがフィールド上のガラゴスにはさほど効いている様子はない。
それどころか雷自体を吸って体内に蓄電しているようにも見える。
グギギとカシミアハンカチを取り出して噛み締める凛果。
「これならどうだ!」
佳奈は火球を右手から生み出すと上空へと放出する。その球は加速をつけるといくつかに分裂をはじめ、続いて矢のような形に姿を変えるとガラゴスへ一斉に襲い掛かった。
そのすべてが直撃を果たすと本体からは激しく炎が上がる。
「やったか!?」
『ムダダァ! 喰ラエェ!』
ガラゴスの口からは雷と炎がとぐろを巻いた光線のようなものが、三人目掛けて一直線に発射された。それはまるで二人が先ほど撃ち込んだ魔法を取り入れているかのような色合いをしている。
「チッ、面倒臭いな」
「来ますわよ! お下がりなさい!」
佳奈と愛華が背後に来るように凛果は先頭に立つと、左人差し指で目の前に五芒星を描く。直後正面に肘を伸ばし両手を広げると何かを唱える。すると彼女の前には透明な壁のようなモノが姿を現した。
先の光線の直撃を受けるものの、凛果の発生させたそれが自身を含めた全員を防護する。その境界面には散り散りになった黄色と赤色の螺旋が見えた。
彼女はどうよと言わんばかりの得意顔を佳奈達に向けてみせる。
「愛華さん! そろそろではなくて?」
「お待たせ、ガラポンは『水に弱い』みたい! まず肩を破壊してコアを露出させて!」
「ああ、よくやった!」
愛華は
「あーらあら、動かないでくださいませ?」
『グオオオオオォ!』
凛果は雷の鎖を生み出すと、暴れだすガラゴスの手足へと巻きつけるように放つ。それ自体ではダメージは入ってはいないが、狙い通り動きを封じることに成功したようだ。
「まったく、大人しくしてろよ」
佳奈の周りには水の球がいくつも集まり浮遊している。続けて右手で拳銃を真似してみせ、その銃口を向けるかのような仕草を見せると「バン!」と小さく呟いた。
それが合図になったのだろうか、無数の水の銃弾はガラゴスの全身を次々と襲うとそれぞれが弾け、表皮を覆う硬い部品を溶かし剥がしていく。
右肩口には赤く丸い珠のようなものがキラリと顔を覗かせた。
「なるほど、あれがコアですわね。でも小さすぎて狙えますの?」
「佳奈ちゃんできそう? ……ああっ!」
そうやり取りをしている間にもガラゴスは雷の鎖を弾き飛ばしていた。
またもや自由の身となったガラゴスは佳奈に向かって行くと直接打撃を仕掛ける。対する彼女は槍のようなものを生成してそれに備えていた。
さすがに近接戦闘ともなると佳奈であっても分が悪いのだろう。ガキン、ガキンとガラゴスの一方的な攻撃がしばらくの間続いた。
『ドウシタ? 手モ足モ出ナイノカ!』
「うるせえよっ、と!」
突如佳奈は槍を天高く投げ飛ばすと、それは空に吸い込まれるかのように消えていく。
「佳奈ちゃん!? どうして武器を捨てるような真似を!」
「ちょうどいいハンデだろ? 来いよガラクタ!」
素手になった佳奈は攻撃を回避しようと腰を落として構えている。
その間にもガラゴスの力任せな攻撃は依然として続く。
しかしながら息が切れてきた佳奈の動きは、大分鈍ってきているように見えた。
「見てられない! 援護するよ!」
自らの攻撃で気を引こうと詠唱を開始した愛華は、次々に魔法を撃ち込む。
だがガラゴスの狙いは既に佳奈以外には向いていない。
それでもなお攻撃を続ける愛華ではあったが、ついに凛果からその手をとめられる。
「愛華さん落ち着いてくださいませ! 佳奈は何かを待っているのではなくて?」
「えっ?」
相変わらずの防戦一方ではあるが、佳奈の表情を見ると口元はわずかに笑っている。彼女は何かを仕掛けているに違いないと凛果は予測をしているのだ。
『コレデ終ワリダ!』
「佳奈ちゃん!」
しかしついに動きを捉えたガラゴスは佳奈を蹴り飛ばすと、間髪入れず飛び掛り全身で押し潰そうとしていた。
「頭上には気をつけな、デカブツ!」
だがその巨体は佳奈まで到達することはなかった。
遥か上空から一筋の光が降り立ち、ガラゴスのコアを寸分の違いもなく貫き通したのである。
「おい、最後に聞かせろ。お前は組織の者か?」
『ソウ、ダ……。ワレハ産み出サレタ恨ミノ、集合体……』
そう言い終わると光の螺旋がガラゴスの周囲を回りだす。
それは幾重にも連なると輝きを増していき、その体を完全に消滅させた。
「そういえばアイツら二人で大丈夫かな……」
こうしてこの戦いは一先ずの終わりを迎える。しかし新たな脅威の襲来はこれで終わりではない。
彼女達の戦いの記録はまだ始まったばかりである。
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