Episode11 魔法少女ですけど、なんで私達ボランティアなんですか?
ケーキ屋での一件以来、
そこで、三人となった魔法少女達は徒党を組んで対抗することになった。当然佳奈などは始めこそは嫌々ではあった。これまでの戦いでは一人ですべて上手くいっていた為である。
だが悪の組織の新兵器、パワードスーツを着込んだ戦闘員にはいくら佳奈の魔法であっても一撃では落としきれない場面が確実に増えている。
よし、正直面倒くさいし二人に手伝わせよう。
こうした展開には平成最後の怪物もさすがに流れに身を委ねる他なかった。
「ねえ、佳奈ちゃん」
「なんだよ」
「何で的確に目を潰そうとするの!?ちょっと相談があってね」
「断る」
スッ……
パシィ……
愛華から差し出されたのはバーガーの無料券。
「わかった、早く言え」
超反応で奪い取るようにして受け取る佳奈。それはまるでペットへの餌付けシーンを想起させるものであった。その様子に愛華はニヤリと笑みを浮かべる。
「なんかね、最近あの組織の男の人が頻繁に来てるじゃない? 何かじっと見られてるっていうか。視線をすごく感じるんだよね」
「ああアイツか。お前何かしたんじゃないのか? おっさん呼ばわりしたとか。あの手の奴は絶対根に持つからな……」
言うと腕組みをしてうんうんと大きく二回頷く佳奈。
「え。してないよ! というか話したことすらないからね」
「ふーん? じゃあ気のせいだろ」
「そっかー、そうだよね! やっぱり佳奈ちゃんに聞いてもらってよかった!」
「そうだろ? 私にひれ伏し感謝するんだぞ」
「うん! 毎日五回、佳奈ちゃんのお家の方角に向かって礼拝するね!」
「イスラムか!」
「あらあら、何のお話をしていますの?」
長い髪をなびかせて凛果がそこに割って入ってくる。
「つまらないことだよ」
「ちょっと、私とのことは遊びだったと言うのね!」
「それ以外の何があるんだよ」
「なによそれ。キー! 拙者悔しい!」
「謎の新キャラ誕生やめろ」
「本当に他愛のない話だったようですわね」
そう言うと凛果の近くにあった椅子を男子クラスメイトが運び、凛果はそのまま優雅に腰掛ける。
「凛果、なんだよ今の。お前も知らない間に新たな主従関係でも生まれたのか?」
「知りませんわよ。あの方が勝手に『何かある時は駆けつけます』だの何だの一方的に」
「でも執事みたいだったよね、今の!」
「間に合っていますわ」
今日も学校内は何事もなく時は過ぎ、授業終わりのチャイムが高らかに鳴り響く。この空間に生徒たちの安堵の溜息が漏れる。
「そろそろ帰るか」
「そうですわね」
「帰ろ帰ろ! あ、凛果ちゃんはお迎えが来るんだっけ?」
「いいえ。今日はお二人と一緒に歩いて帰りますわ」
「なんだ、急にどうした?」
「特にこれといった理由はありませんわ。ただなんとなく?」
「じゃあ、せっかくだし寄り道しようよ!ね!」
その言葉に凛果がピクリと反応を示し、両目をキラッキラとさせながら二人の目の前に躍り出る。
「寄り道!いいですわね! 参りましょう参りましょう!」
「急にテンション上がったな……」
「一度寄り道というものをしてみたかったのですわ。さあ、さあ!」
「わかったから落ち着けよ」
そこへ通りかかるクラスメイトAが手を振る。
「あ、カナちゃーん! またねー!」
『あっ! うん、また明日ね☆』
「佳奈ちゃん、私にもそのキャラで何か言ってよ!」
『ふふふ、気安く話しかけないでね? この、メス豚風情が♪』
「ああっ! 大変ですわ、愛華さんからおびただしい量の出血が!」
「ほっとけ。じゃあ適当にぶらぶらしよう」
愛華を置いて二人の影は小さくなっていく。しばらくして我に返った彼女は、自分が一人になっていることに気づいた。
「放置プレイとか最高かよ! まってええぇえ!」
執念とも言える高速ダッシュをすれ違う生徒達に見せつけ、二人を追いかける愛華。
その後、複数の陸上部員から熱烈に勧誘を受けたのは言うまでもない。
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