旧式(オンボロ)だって良いじゃない!~戦い方次第です~ 共和国戦役編

磯風とユキカゼ

第1話

2010年5月18日10:50

レイズ北東端 イルスタ駐屯地


 先日落ちた帝都から数千km離れた都市レイズの北東の端、イルスタ駐屯地にある何の変哲もない軍の射撃場。

 自分を除いて誰もいないそこにM74A1カービンの乾いた銃声が響く。セミオートで3発、セレクターを変えてフルオートを指切りで10発。全て標的の中心付近に命中する。

「流石だな、レイ。やっぱ首席卒業は違うな。」

「ルイスか、久しぶり。お前もここに来てたんだな。」

 旧友のルイス・マーシャルと再会した自分は銃を台に置く。

「んで、戦車一辺倒のお前が何で射撃場(ここ)に?」

「ああ、お前に辞令が来てるからあのババ・・・もとい少将が受け取れってさ。」

「了解。」

 銃にセーフティーを掛け、共用ガンロッカーにしまってから指揮官室に移動する。

「あ、そういや俺階級上がった。中佐だ。」

「マジか!万年少佐って言われてた、あのルイスが!?」

「万年少佐って言うな!ほらほら、ルイス中佐と呼べ!」

「了解、ルイス中佐殿。(棒)」

「ケンカ売ってんのか!?」

「冗談冗談。悪かったルイス。昇進おめでとう。」

 そんな話をしている間に指揮官室前に着いた。ノックすると

「入れ。」

 中から凛とした返答が来たので中に入る。

「失礼します。」

「来たか、レイ・エーギシュガルト中佐。」

 イリヤ・シュリビアール。

 現在、帝国陸軍はこの人がトップみたいなものだ。階級は少将。帝都侵攻では自分の隊と共に殿(しんがり)を勤め、一人の死傷者も出さずに撤退に成功した名将。完全無欠の女傑だ。

「自分は少佐ですが。」

「昇進だ。貴様も今日から中佐だ。いいな?」

「了解しました。」

「で、ここからが本題なのだが、」

 と一度言葉を切り、

「貴様に第3独立戦車中隊中隊長への着任を命じる。」

「・・・え、第3独立戦車中隊ってあの?」

「ああ。」

 第3独立戦車中隊。

 帝都脱出後、旧式の戦車をレストアと改造を施し、再度戦力化したのち一括で運用した方が効率がよいとのことで設立されたこの人(イリヤ少将)直属の

「かき集め戦車中隊の隊長ですか・・・了解しました。レイ・エーギシュガルト中佐、第3独立戦車中隊中隊長に着任します。」

「・・・驚いたな。貴様が素直に着任するとは。」

「嫌がるとでも思いましたか?おばさん。」

「おばさん言うな。お姉ちゃんだ。」

 そう。この人、イリヤ・シュリビアールは自分の叔母だ。何故かお姉ちゃんと呼ぶことを強要してくる。

「まぁ、そうだな・・・レイなら出来ると思ったから、かな。」

「それに、現在の軍のトップの命令には逆らえませんから。少将閣下?」

「そう、だったな。後でメンバーや車両と顔を会わせておけ。」

「今すぐにでも行きますよ。」

 ドアを開け、外に出る。ルイスが待っていた。

「待ってたのか?」

「ああ、まさか同じ隊だとはな。隊長?」

「お前に言われてもまっっっっっったく嬉しくない。お前が副隊長か?」

「ああ・・・そんなに嫌か。」

 信用できるやつが副隊長とは嬉しいことこの上ない・・・あまり信頼出来ないけど。

「いや別に?ちょっと見に行く。戦力の確認も含めてな。案内を頼む。」

「了解。」

 ルイスに案内されて車両が停められているベースに行く。

「そういや何両あるんだ?一応確認したい。」

「えーとだな、主力戦車7、重戦車1、中戦車1、軽戦車2、自走砲1と対空車両6だな。」

 うーん・・・。

「微妙だな。対戦車戦闘がまともにできるのは?」

「対空車両5を除けばできる。二次大戦期から大戦後の戦車でしかも重戦車はあの『虎』だ。」

「・・・嘘だろ?」

「マジだ。鹵獲品に大改造をしたのが虎の1両。後の17両の内9両は帝国(この国)が購入した退役車両を改造したやつで残りがM6ガーディアン3両と対空車両だ。」

 ほーう・・・。虎と守護者がいるなら少しは安心できる。

「随伴部隊は?」

「機械化歩兵1個小隊と迫撃砲兵1個中隊。」

「まさか」

「いやいや、機械化歩兵のほうはちゃんとした装備だ。機械はM113A3Bだし、歩兵の方も大半がM74かミニミだ。だが2人がブレンガンで、1人がG3、んで1人がKar98kだ。全員腕は確かだしKar以外は7.62mmNATOだから問題は無いと思ったんだが。」

「構わんさ。腕が立つんならな。」

「ならよかった。なんせ4人全員が狙撃手みたいなもんだからな。」

 ふーんって、え?今、こいつ、何て言った?

「ルイス、もう一回言ってくれ。」

「4人全員が狙撃手みたいなもんだからなって。」

「おいおい・・・軽機関銃で狙撃すんなよ・・・。」

 軽(ライト)とはいえ機関銃(マシンガン)。範囲攻撃火器で狙撃するとか・・・どんだけ目と腕が良いんだか。

「まあ、そんなこともあるさ。砲兵は120mm迫撃砲RTが4門。射程は短いが制圧火力としてはこれ以上のものはない。それと砲兵所属じゃないが、中戦車で105mm榴弾砲を積んだやつが1両ある。あとは、鹵獲品のBMW R75が1両。さっきのG3とKar98がこれに乗ってる。」

「砲の牽引は?」

「多目的車両のM12がRTを牽引する手筈になってる。んで、M12が砲牽引用で4両と連絡用でケッテンクラート1両。」

「この国の中にケッテンクラートがあったとは・・・。」

 とかなんとかしながら倉庫群とプレハブ2棟がある区画に辿り着いた。

「ここが第3戦車中隊の根拠地。第2ベースだ。」

「案内ありがとう。」

2両が倉庫の外を砂塵を巻き上げながら走っている。

「あれはウィルヴェルヴィンドと・・・なんだありゃ?」

「ティーガーⅠを改造したやつで鹵獲品。」

「めっちゃ改造されてんな。外見からじゃティーガーⅠだとは思えない・・・にしても、ナチ公もあんなものを置いていくくらいに余裕が無かったのかもな。」

「かもな。あ、お前が乗るのはティーガーⅠな。」

「え。」

「ちなみに俺はレオパルト1A4な。」

「はぁ!?!?」

 隊長車はガーディアンだろ普通。装甲・・・はティーガーの方が上だが、機動性とか火力とか通信能力とか。

「なんで。」

「なんでって・・・格好つかないだろ~。一応オンボロ戦車隊なんだしさ。」

「認めちゃダメだろ・・・。」

 オンボロ戦車隊とはまさに言い得て妙。

「ま、気楽に頼むぜ。隊長?ちなみに男女比1:3だから。」

「なにその格差!?」

 このように、レイズには暫しの平穏な空気が流れていた。しかしこれを叩き崩す強大な力が迫っていることを自分達は知らなかった。


同日14:00

レイズ中心部から南西50kmの上空8000m 帝国防空識別圏・制空権下


 RF-4Aウォッチャーが高速で駆けていく。彼ら―――チェイサー1は南西方向の偵察を命じられていた。

「こんな方向から敵さんはいらっしゃるかね?」

 前席パイロット―――「ヘルメス」はこの任務に少し疑問を抱いていた。レイズの南西側は草原と標高100m代の比較的低い山2つに挟まれた谷があった。到底ここからは攻められない。後席パイロット―――「ブルーバード」から返答が来る。

『さぁね。言われた通りにやるだけさ。』

「だな。」

『おっ?少し高度を落としてくれ。今、地上走査レーダーとカメラ、温度センサーに何か映った。』

「了解。」

 そして「ブルーバード」が見つめるコンソールに恐ろしい物が映る。

『なんじゃこりゃ!?』

「どうした?」

『敵だ・・・それも大軍!』

「マジか!?」『マジだ!!』

 即答だった。

「了解!写真撮りまくれ!」

『今やってる!・・・よし!撮り終わった!司令部に送信頼む!』

「応よ!チェイサー1より司令部!レイズより南西250kmのグリッドT(タンゴ)962で敵大集団を発見!赤色警報(レッドアラート)の発令を進言する!これは演習ではない!繰り返す!これは演習ではない!画像も送信する!」

 すぐに司令部から返信が来た。

『司令部了解。そのまま接触を続けられるか?』

「無理をしてでも続けてやらぁ!!」

『・・・了解。しかし、まずいと思ったら直ちに引き返せ。』

「了解!感謝する!オーヴァー!!」

『見つからない様に少し高度を上げよう。』

「OK相棒。」

 彼らが操るRF-4Aは偵察機で、素体のF-4ファントムⅡと違い機関砲は搭載しているものの、爆装が出来ない。もどかしさを感じつつ、「ヘルメス」は高度を上げた。


同15:00


 軍の指導部と皇女殿下が全員集合した会議室の中に(何故か)自分もいた。

「敵襲?」

「ああ。さっき空軍の南西に偵察に出た機から報告があった。」

「して、その数は?」

「概算で2万3000。」

「無理だ!」

「ここまでか・・・。」

「いやっ、断固として撃退すべきだ!」

「閣下、どうお考えですか?」

「・・・そうだな」

 少将はそこで言葉を切り、

「防衛に徹する。それも全力、全戦力で。」

「陸だけでですか?」

「いや、空軍にも援助要請を出す。何て言ってた?」

 いきなりこっちに話が飛んだ。ちなみにその事は既に話を通してある。

「連中、新鋭のF-16と骨董品の色々をごちゃ混ぜで飛ばせるからですかね。めっちゃ元気に言ってましたよ。制空権下だろうがなかろうが、全力で航空支援出してやるって。」

「それは結構。こっちの航空隊は?」

 陸軍は空軍とは別に百数機のヘリコプターと10機の簡易攻撃機を扱っている。航空隊統括官が答える。

「はっ。残存ヘリ152機と簡易攻撃機10機、全機出せます。」

「それも結構。戦車と火砲は?」

 またこちらに話が飛んだ。これも事前に聞いてある。

「第3独立戦車中隊を含む全戦車大隊の全車、いつでも行けるそうです。しかし、絶対的な数が足りません。こちらの戦車総数は200ちょっとです。火砲は通常大隊と特殊大隊の全部隊合計でFH-70榴弾砲30門、M59カノン砲4門、M1重榴弾砲2門、AS-90ブレイブハート自走榴弾砲24両、M270MLRS(マルス)27両、M1875A野戦砲6門、Pak36対戦車砲2門、Pak38対戦車砲3門、Pak40対戦車砲2門、M2対戦車砲48門、L-90高射機関砲9門、Flak37高射砲2門、Flak30高射機関砲4門、Flak38高射機関砲6門、Flak40 Zwilling1門、Flakvierling 38高射機関砲4門。120mm迫撃砲RTが第3独立戦車中隊の所属分を除いて20門ずつ、M40A無反動砲10門です。」

「結構。さて・・・、」

 少将は上座に向き直り、そこに座る皇女殿下に

「皇女殿下、命令さえあればいつでも迎撃出来ます。ご命令を。」

「・・・分かりました。」

 一度言葉を切り、

「全軍に命じます。国土を踏み荒らす夷敵を討ち果たしてください。」

「「「「「「「はっ!」」」」」」」

 その場にいた自分を含む全員が椅子から立ち上がり、敬礼をする。

「よし、作戦を詰めるぞ。」

 御前会議が作戦会議に変わり、皇女殿下は退出された。自分は一応イリヤ少将の副官のため、ここに残る。

 会議が終わったのは5時間後。既に日は落ち、夕食の時間はとうに過ぎ去っていたが補給科の同期3人がサンドイッチを作ってくれた。彼らは実戦部隊ではないが明日決行される迎撃作戦のオペレーション・カウンターナックルに後方支援として参加する。今夜中に移動する手筈になっている中、有り合わせで作ってくれたことには感極まる。

 長い1日が始まろうとしていた。

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